かがみ さんの感想・評価
4.0
物語 : 4.0
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
世界の果てと世界の片隅
セカイ系を象徴する不朽の名作の一つである。もともとはエヴァ後半で前景化した「自意識の問い」に焦点を当てた一人語りの激しい作品を指していた「セカイ系」という言葉はゼロ年代中盤以降、文芸批評の分野において「主人公とヒロインを中心とした小さな関係性(想像界)の問題が、具体的な中間項(象徴界)を挟むことなく、『世界の危機』『この世の終わり』など、抽象的大問題(現実界)に直結する作品群」という構造的な定義へ変容した。激しい自意識語り、少女と世界の直結、世界観設定の排除。こうした点で言えば、本作はセカイ系という概念に極めて忠実な作品と言える。そもそも「最終兵器(現実界)と「彼女(想像界)」を並置させたそのタイトルからしてすでにセカイ系の本質を正面から名指している。もっとも「セカイ系」という言葉が一般化したのは2002年以降であり、本作が連載されていたのはそれ以前の2000年から2001年の間であることから、本作はセカイ系を代表する作品というより、むしろセカイ系という概念を産み出した作品の一つと呼ぶ方が正確なのかもしれない。それゆえに本作はセカイ系一般には収まりきれないある種の「過剰さ」をも抱え込んだ作品でもある。「戦争」という非日常が二人の日常を侵食していき、徐々にちせが人格崩壊を起こしていく中で、二人は最後の最期のぎりぎりまで日常の側に留まりに「戦争」という非日常に抗おうとしていた。そういった意味で同作は「世界の果て」を仮構する想像力に依拠しつつも、その一方でいわば「世界の片隅」で格闘する想像力をも胚胎させていたといえる。