「劇場版ツルネ ーはじまりの一射ー(アニメ映画)」

総合得点
計測不能
感想・評価
12
棚に入れた
45
ランキング
4217
★★★★☆ 3.9 (12)
物語
3.6
作画
4.3
声優
3.8
音楽
3.9
キャラ
3.8

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ネタバレ

101匹足利尊氏 さんの感想・評価

★★★★★ 4.1
物語 : 4.0 作画 : 4.5 声優 : 4.0 音楽 : 4.0 キャラ : 4.0 状態:観終わった

競技者であり、求道者であり

KAエスマ文庫『ツルネー風舞高校弓道部ー』の同名連続TVアニメ化作品1期(全13話)を再構成+新規カットで映画化した再起動(リブート)作。(原作、TVアニメ版共に未見)

【物語 4.0点】
弓道から離れていたが今は戻って「早気(はやけ)」の射癖と戦っている湊。
小学校の頃から湊を慕い、一緒に弓道をすると誓い、湊を弓道に引き戻した幼馴染で部長の静弥。
湊に少年時代「早気」に苦しんだ自分も重ね合わせながら指導に当たるコーチ・雅貴(マサさん)。

三人の関係性に焦点を絞って再構成。
作品内時間も8話の県予選終了後~県大会決勝までをピックアップするので、
劇場版総集編とも少し違う。

予備知識ほぼゼロの私はサブタイトルから新規で入っても大丈夫だろうと挑みましたが、
いきなり途中から始まる感じになって、これって続編なの??と勘違いして狼狽えましたw

的は絞れているので、無茶な詰め込みダイジェストで作品が破綻することはない。

弓道は的に当てればそれで良い競技なのか。心身を磨く道として極めていくものなのか。
醍醐味となる心情描写も折り込みながら、県大会決着までまとめ上げたテンポは良好。
とはいえ、掘り出した心理は、じっくりと噛み締めたい文芸的な風味なので、
受け止めた後の“間”がもうちょっと欲しかったのも事実。
また、これだけ深い心情を掘り起こせるなら、物語はもっと盛り上がれるのでは?
との贅沢な欲求も残りました。

この辺りに関しては、エンドロール後に流れた来年初頭放送予定の2期を思わせるキービジュアル等。
競技者か?求道者か?との主題についても、勝てば良いんでしょ?と言わんばかりの新キャラとして外部化が示唆され、深化の期待が高まります。

それよりも劇場版で美味しい所だけ摘み食いした私はまず1期視聴を何とかしないとw
NHKさん2期前の1期再放送頼みますw


【作画 4.5点】
アニメーション制作・京都アニメーション

私が劇場に引きずり出されたのは、
以前NHKで京アニの作画が如何に凄いかを語る中で取り上げられた、
マサさんの「一万射」のカットが脳裏に焼き付いていたから。
弦や、はだけた筋肉のしなりまで描いた、あんな凄い情景見せられたら、
少年の運命も、私の行動も変わります。

本劇場版では、その「一万射」のほか、
回転しながらホップする矢の動き。射に挑むまでの一連の所作。
弓道周りの作画には特に力が入っていて惹き付けられます。
射型が美しければ当たるというものでもないが、当たる射型は美しい。
この奥深さを作画レベルで実感できるのは大きいです。

総じて作画だけも劇場鑑賞する価値あり(←このコメ今年何本目だよw)


【キャラ 4.0点】
特に女子向けの作品でもないとは思うのですが、
目尻の下を赤らめる男子高校生などは美少年アニメ枠の属性。

特に湊のことになると正気を失う静弥などは可愛いな~って感じで
男の自分も顔が熱くなってきますw
そんな静弥が、コーチのマサさんを嫌いですと突っかかる。
表向きは弓道のことなのですが、構図は彼氏を奪われるとムキになるBL案件に思えてなりませんw


サブも含めて男子弓道部員はピュアすぎる少年ばかり。
ただ繊細な少年たちという弱メンタルの強調。
それらを脅かす重たすぎる過去。
といったキャラ設定は、突き詰めれば自分で弓を射るだけで、ライバルが直接関与できないシンプルな“競技”でスポ根をやる上では、波乱要因として機能していたかと。


一方、少年たちを指導するマサさんは葛藤を重ねた大人で、
弓道技術の面でも、人間関係の面でも、観察眼良好。
{netabare}同じカゴに入れられたカブトムシみたいに角突っつきあって
との評論には私も吹き出しましたw
が、マサさんも最後はカブトムシ共に背中を押される。
そんなあなたもカブトムシw{/netabare}


結局、そんな弱い男子どもに発破をかける女子弓道部員3人が一番大人でしょうか。


【声優 4.0点】
アフレコは京アニ劇場版伝統の?新録。

湊役の上村 祐翔さん&静弥役の市川 蒼さんが親密な掛け合いを繰り広げる横から、
キツい口調でつっかかってくる海斗役の石川 界人さん。
メンタルよわよわなどと煽ってくるライバル校の菅原兄弟役の小林 裕介さん&天崎 滉平さん。
言葉は乱暴でもやっぱり可愛い男子高校生w

それだけに少年時代のマサさんを叱責した祖父役のベテラン・佐藤 正治さんの、
一人の人生を左右する厳しさ恐ろしさを再現した演技が際立ちます。


可愛い少年ボイスがひしめく中で、藤原 愁役の小野 賢章さんはクールガイなボイスを提供。
その声で自分もまた湊に囚われた男の一人だったと、静弥にこぼすカットが、
私が一番BLを感じた瞬間w


【音楽 4.0点】
劇伴担当をTVアニメ版の富貴 晴美氏→横山 克氏に変更するという大胆な一手。
真骨頂のピアノとストリングスで盛り上げる心情曲が、
尺が詰まる中でも感情を表現する瞬発力で魅せる。

2期はどちらが音楽担当されるのでしょうか?
劇場鑑賞後どれだけBGM違うのか?と1期サントラも聴きました。
私は横山 克氏が好きなのですが、2期で“間”が取れるなら、
富貴 晴美氏でじっくりと心情を温めるのが良いなと敢えて捻くれた希望を出しときますw


作画に匹敵する位、弓道シーンの臨場感に寄与していたのが音響。
矢が風を切る音、的をカーンと射止める音。
劇場立体音響に対応した音を耳にして、
劇場鑑賞は大正解だったと心の中で「よーし!」と叫んでしまいました。

投稿 : 2022/08/23
閲覧 : 460
サンキュー:

16

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