てとてと さんの感想・評価
4.3
物語 : 4.5
作画 : 3.5
声優 : 4.5
音楽 : 4.5
キャラ : 4.5
状態:観終わった
異能力者たちの島で無能力者の暗殺少女が話術と頭脳戦で能力者たちを始末していくサスペンス
※作品データベース様より転載
【良い点】
異能デスゲーム系としての意外性や捻りの効き具合が抜群。
また設定や状況のハッタリが、一見雑に見えて完璧に計算されていた。
絵も話も一見B級に見えて、いつ破綻するか危うい綱渡りしつつも、ラストまで持ち味を維持し続けた稀有なバランス感覚。
単に無能力者少女が能力者たちを陥れるだけでは早々に限界が来そうなもの、本作は終始化けの皮が剥がれそうで剥がれず完走。
一見ガバガバに思える雑な展開すらも、実は色々と伏線になっていたり?と侮れない。
終始緊迫感が途切れず、ワンパターンと思いきや常に想定を外してくる。
個別の能力者を陥れる、探偵役の疑念を紙一重で躱していく、そして優しい少女とのユウジョウ…
最初から最後まで非常に面白かった。
また、原作の時系列弄る余計なマネをせず、そのまま放映したのも英断。
終わり方は消化不良ではあるが、ヒロインのドラマとしてターニングポイントまで描けており、
本当の物語はこれからエンドでも許容範囲というか、本作に限ればアニオリで纏めなくてむしろ良かった。
状況設定やハッタリの利かせ方が極めて巧妙。
とことん非現実的な異能でハッタリかまし、狭いコミュニティーで短期間に殺人繰り返すのに綱渡りながら全然バレない。
普通ならば早々に破綻しそうだが、破綻しない。実はしてるけれど、作中人物と視聴者に破綻してないと誤認させる巧みさが光る。
「人類の敵」や「能力者の驕り、固定観念」を提示、普通ならば破綻する状況を極自然に破綻させなかった。
キャラクターが「無能」である事が本作の肝であり、無能である事に巧みに説得力を持たせていた。
タイトルの「無能」とは、ダブルミーニングなのだろう。
ナナの無能力だけでなく、クラスメートの無知や無思慮、ナナのウカツさや心の迷いなどなど、全てが無能である事で
危うい綱渡りを成立させていた。よって、普通の作品ではキャラが無能な事は欠陥となるが、本作は抜群の長所なのが凄い。
本作はまさに「フィクションの嘘」が素晴らしく上手かった。
虚々実々の駆け引きがエキサイティングな一方で、割とウカツなナナしゃん可愛い。
裏表が凄まじいどちらの顔も可愛い、ウカツさを泥縄で誤魔化そうと必死な様は、シリアスな喜劇めいた可笑しみも楽しめた。
物語のハイライト、心優しいミチルちゃんとのユウジョウで非情なナナしゃんの心境が変化していく交流ドラマが素晴らしい。
その前の死霊使いの歪んではいるが切ないドラマも良かった上で、視聴者に優しすぎるミチルちゃんも怪しい!?
と視聴者とナナしゃんに疑念持たせた上での(ここで視聴者とキャラの思考共感させてるのも上手い)、直球でお涙頂戴に持っていく。
ミチルちゃんの純粋な優しさと悲劇的結末は圧巻!2020年TVアニメで1番泣けた感動の名場面だった。ほんと久々に涙腺崩壊した…
(劇場含めればヴァイオレットエヴァーガーデンも)
この尊いユウジョウ劇を見せられては高評価以外あり得ない。
キャラデザは令和アニメにしては古く垢抜けないが、十分可愛いので問題なし。
大久保瑠美氏、中原麻衣氏の熱演も光った。
強烈な存在感故か、後続のニコ動アニメでは暫く大久保氏演じるキャラに「ナナしゃん」コメが…
キャラクターに命吹き込めていた。
主題歌もテーマに則っていて非常に良い。
特にEDはクライマックスのお涙頂戴をあざとく演出した。
【悪い点】
殆ど見いだせず。
一見雑に見える諸要素も計算ずくに思えるので、意外な程欠点が少ない。
強いて挙げれば、細かい点で雑さはある。誤魔化されるけれど。
物語途上で終了、おそらく続編が見込めない。
【総合評価】9点
B級の皮を被った傑作。
2020秋最優秀作品、2020年度で見ても4位(自分的ランキングで)
評価は最高にしたいけれど、未完成作品に最高は付けないマイルールで「とても良い」
実質最高。
余談、藤原啓治氏の最後の遺作。
もし続編があればナナが倒すべき重要な敵ポジション。