てとてと さんの感想・評価
4.2
物語 : 4.0
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.5
キャラ : 4.5
状態:観終わった
ロードムービー系ロボットアニメの傑作
異星生命体に征服された地球で、バイクに変形するロボットで戦ったりのロードムービー。全25話。
※作品データベース様より転載
【良い点】
マクロスのバルキリーみたいに変形する、バイク型装甲服モスピーダなどメカニックが独特な魅力あり。
マクロスに対しては主な舞台が地上でよりキャラに密着した強化服めいている点、なによりバイク形態で差別化出来ている。
戦闘服からバイクに変形するギミックがかっこいい。
戦力としては戦闘機型のレギオスの方が強いしレギオスもかっこいいけれど、モスピーダのバイク形態も自然な見せ場作れている。
OPが非常にカッコイイ、EDの余韻も。
BGMや挿入歌が非常に良い。
既に制圧された後の地球のポストアポカリプスな舞台設定と、ロードムービー感が良い。
荒廃した北米の街々を巡る、ジャズ調な楽曲も相まって良い雰囲気。
敵本拠地を目指す目的意識が分かりやすく、また戦闘機の飛行控えて地上を旅する理屈付け(敵に察知されるから)も上手い。
前半は真面目な軍人スティックと地球の孤児レイとの意識の違いや確執から、次第に仲間が集まり、良いチームになっていく。
現地住人がインビット(敵性異星人)を恐れて主人公たちに非協力的なエピソードが多い(キャシャーンよりはマシだけど)
前半の諸エピソードもインビットの存在感や在り方、地球人の荒廃、そして最終的なテーマである戦いの否定へと通じる。
前半は特に、敗残兵と流れ者らアウトローによるロードムービー感が面白い。
前半は圧政と自由がテーマか?と思わせて、通してみれば愛と平和の物語に仕上がる。
序盤に多い厭戦的なエピソードは伏線になっている。
明るく軽妙なキャラの掛け合いもあり、ライトな感じで見やすい。シリアスとコミカルの配分が絶妙。
会話劇のセンスが良く、ピンチでも軽口叩き合って仲良く切り抜けていく、娯楽映画めいた良さ。
特に戦力としては全く役に立たないミントの存在は掛け替えがなかった。可愛い。
旅の仲間全員が魅力的に掘り下げられている。
レイ、スティック、フーケ、イエローは四人とも互角の主人公だった。
堅物のスティックが地球の仲間と旅をし、恋をして、戦いと憎しみを超えた男に成長。
80年代的不良少女フーケは良い女、男女両面の魅力を持つイエローの人間力の高さも光る。
ミントも清涼剤として外せない仲間だし可愛い、謎の美少女アイシャも着々とヒロイン度増してくる。
ジムはやや地味ながら一番成長した男。
全編通したテーマも非常に良い。全編通して愛と和解(そして反戦)を描いている。
ジャズ調の楽曲も非常に良く、挿入歌をバックにバトルする場面などマクロスにヒケを取らない。
荒廃したアメリカという舞台、ジャズやロック、厭戦、反戦…そんな感じの気風(ベトナム反戦?)を取り込んだ作品だった。
後半以降複数軸のラブロマンスが進行、これが戦い合う二つの種族を繋いでいく。ベタだけど普遍の王道。
歌をバックに愛が地球を救う物語にちゃんとなっていた。
イエロー中心に音楽と文化の活力も希望の形として描かれていた。この路線でもマクロスにヒケを取らない。
マクロスとは違う形で歌と文化と愛を描いたロボットアニメ。
地球を侵食する異種生命体とのコンタクトと和解という、エウレカセブンを先取りした路線。(ミックスナッツ氏の受け売り)
インビットが邪悪な敵ではない事は序盤から既に匂わせ、ラブロマンスも経て結論を出す。
インビットが地球を去るラストは、人類が破壊を好む故なので実はビターエンドだけど、主要キャラの愛と希望で後味が良い。
個別エピソードが軒並み良く、特に秀逸な良回も多数。
11話卑劣な守銭奴と思われた男が実は…真実の愛の為に散る。ゲストキャラは若かりし井上和彦氏。
18話老兵たちのドラマも良い。出世した息子が上官として突撃命令、散っていく。
20話ミントの過去掘り下げとお誕生会はハートフル、ミントの可愛さと仲間としての大切さが印象付けられる。
21話フーケのラブロマンス、渋いガンマンと哀しき結末。レニーめっちゃかっこいい、この時点で速水奨氏の渋さは完璧だった。
23話冷徹な女軍人カメラマンのプロ意識と確執からの切ないラスト、偵察写真に写るスティックとアイシャの笑顔が彼女の真意を物語る。
1話で散るゲストに物凄く魅力的なキャラが多かった。
【悪い点】
ロードムービーと個別回の群像劇は素晴らしい一方、全編通した流れが地味。
少人数で敵基地目指す、小規模な遭遇戦の繰り返しなどやや単調。
インビットの秘密の提示も12話で少しベールを脱ぐが以降進展が無く、終盤ようやく明かされる。
インビットに対して少しずつ興味を引くような構成になっていなかった。
全25話綺麗に纏まってはいるが、終盤やや詰め込み気味。
軍の総攻撃が24話と既にラスト近かったり、地球破壊ミサイル?発射と迎撃が唐突だったり。
ラブロマンスもスロースターター。アイシャが成長し持ち味発揮してくるまでが遅く、中盤辺りは空気気味だったり、
レイなのかスティックなのかイエローなのか誰のヒロインなのか迷走。スティックに確定するのが19話と遅く既に終盤。
イエローとソルジィも一目ぼれは良いが過程がやや物足りないし、
ソルジィとアイシャのインビット同士の交流や、ガットラーの思想が判明するのも既に終盤で遅い。
インビット側のドラマが手薄だったのは惜しい。
ここら辺は1年くらいの長期予定が打ち切りで25話に短縮された弊害か?
もし4クールせめて3クール予定ならば前半のペースで問題ないし、23話以降で中盤盛り上がってくるところ。
折角盛り上がってきたところで纏めに入ってしまい勿体無かった。
戦闘シーンも前半の方がクオリティー高く、中盤以降はミサイルの打ち合いでやや単調。
格闘武器が無かったり、見せ場がやや地味な感も。
【総合評価】8~9点
粗はあるけれど名作。丁寧に視聴すれば多くのメッセージを感じ取れる。
2クール打ち切りは惜しまれるものの、テーマ上納得のいく完成度はある。
評価は最高は付けられないが「とても良い」以上。