てとてと さんの感想・評価
3.5
物語 : 3.0
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 3.5
キャラ : 3.0
状態:観終わった
昭和のノスタルジーと夏の喪失感。名作な風格だが、微妙に分かり辛いのが一般受けしなかった要因?
30年前にダムに沈んだ村にタイムスリップした小6少年のひと夏の思い出な105分の劇場アニメ。
ひぐらしの鳴く頃には昭和58年、本作は昭和52年である。
【良い点】
古き良き昭和(昭和52年、1977年)の田舎の原風景を、手描きの柔らかいタッチで描いた。
作画は全部手書きで、深夜アニメとは異質な趣あり。楽曲も良い。
昭和後期にしては古過ぎる気はするが(戦後復興~高度成長期ぽい)、フレンドリーな友達や、大らかな大人たち、ヤンチャに村や野山駆け回ったり、カブトムシ取り放題とか、昭和(に憧れる男の子)の理想郷な感じ。
怖いじいさん(本当は良い人)から友達に手を引かれて村を逃げ回るシーンとか、こんな子供時代過ごせたら楽しいだろうなと。
プロットが練られていて、かつ美しい。
タイムスリップして出会った女の子とひと夏の交流(幼いのでラブコメは無し)から、中盤以降判明する女の子の秘密と切ない展開…からの感動の結末。
田舎の夏休みの雰囲気が良く、細かい説明は無くても、記憶忘れるかも?お別れかも?な喪失感は伝わった。
ホタルも儚さ切なさを情緒的に演出した。終盤は(よくわからんが)雰囲気で感動した。
声優陣は子供時代が自然体で良い感じ。大人版ヒロインの能登かわいいよ能登。
【悪い点】
尺の割にストーリが複雑でわかりづらい。
いや、丁寧に見れば理解は出来るんだけど、脚本追うのに精いっぱいで感動まで頭が回らない感じ。
終盤ハッピーエンドも後味は良いんだけど、唐突でご都合感も否めず。
主人公の心情がわかりづらい。
主人公が何考えて何感じてるのか説明不足なまま淡々と状況に流されていくため地味。
モノローグや独白が皆無で主人公に語らせない作劇、無粋さ排してじっくり見せる手法かも知れないが、普通のアニメに慣れている視聴者には取っ付き難かった。
上記二点併せて、プロットだけ良い割に、終始淡々としていて退屈に感じた。
主人公やヒロインに積極的に感情移入できないため、終盤やラストのカタルシスも微妙。
ヒロインは幼女なのでラブコメ的な楽しみ方が出来ないのも地味な一因。
ノスタルジーに関しても描写がステレオタイプな気も。
どう見ても昭和50年代とは思えない。
描写されるなんちゃって昭和52年に共感できるか否か?ちょっと間口が狭い気がする。
主人公が少6とまだ幼い設定なのも微妙、ノスタルジー重視なら主人公は大人にしてタイムスリップ時に子供にした方がよかった。
【総合評価】5点
一流スタッフたちの意欲作で、ちゃんと堪能出来た視聴者からの評価が高い一方、
娯楽性が欠如しており、興行的に振るわなかったのも納得。正直退屈なアニメ映画。
良作か駄作かといえば良作ではある。
評価は「良い」けれど、普通か迷うくらい微妙。