栞織 さんの感想・評価
4.8
物語 : 5.0
作画 : 5.0
声優 : 4.5
音楽 : 5.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
自然の前に人は無力 そして家出
公開当時は見なかったです。このほどやっと見終えました。公開当時は噂でラストが終末未来みたいに言われていたのですが、実際見たところ地質学的に江戸時代のはじめに戻ったみたいな話で、長い地球年代ではそういうこともありえるのではないかというお話で、特に終末論的な作品ではなかったと思います。こういう天体観測史上でのifのとらえ方は前作の「君の名は」の流星墜落と同じで、新海監督の追っているテーマのひとつではないかと思います。しかし最初は雑誌ムーの晴れ女ルポみたいなところから始まっていて、都市伝説みたいなところから振っているのは面白いと思いました。
そういう都市伝説と民間伝承の人柱の話が重ねられていて、そこはうまいと思いましたが、家出少年少女たちの話の方が、今ひとつリアル感が少なくて、そういう風にうまく身を隠して暮らせるだろうかみたいにまず思いました。そこが少し減点というか、惜しいなと思ったところです。また地方住みの人たちの東京へのあこがれや反発があまりうまく表現されていなくて、ほとんど東京住みの地元の人と変わらない描写が続いたのが見ていてちょっと残念に思いました。そのあたりは、「雲の向こう 約束の場所」の方がうまく出ていたような気がします。しかし主人公たちを気性がまっすぐな若者として描きたかったという意図ならば、そのような描写はなかった方がよかったのかもと思ったりもしました。ただうまく言えないのですが、そのあたりが平板に思えた理由ではないかと思います。つまり言うならば、主人公たちの生身感が少なく思えた理由ではないかと思いました。
しかしシナリオはよく練られていたと思います。最後までどうなるかわからない話でしたので、ラストまで飽きずに見ることができました。廃ビルのロケーションをCGで作りこんだりしている部分は、さすがと思いましたです。他にも自然な感じでCGをうまく使っている場面が多かったです。雨の描写は特にリアル感がありました。
ただ声優さんでおじさんキャラの方の声が聴きとりにくかったです。そこも減点させていただきました。ぼそぼそしゃべりすぎだったかなあと思います。キャラ作りしすぎだったのではないでしょうか。
しかし今年の夏も暑いので、同じ異常気象でも8月に雪が降るなんてロマンチックに思えてしまいました。東京では今の温暖化現象では、水没よりも砂漠化がありえそうに思いました。それも九州などの地方の方の、今頻発している水害被害の思いが結実した作品だったのかもしれません。東京も一度水没してみろというか、その地方の警戒警報中に政治家たちが宴会を開いていたという話なども、この作品を作る上での理由のひとつだったのかもしれません。