てとてと さんの感想・評価
4.0
物語 : 4.5
作画 : 4.0
声優 : 4.5
音楽 : 3.5
キャラ : 3.5
状態:観終わった
ルッキズムへの風刺が壮絶な85分の映画。韓国のサスペンスホラーで超怖い&考えさせられた
【良い点】
2020年代(より前かもだけど)の切実なテーマの一つであるルッキズムへの痛烈なアンチテーゼ。
「笑ゥせぇるすまん」的な、人間の欲望や業の闇を浮き彫りにするタイプのサスペンスホラーとして非常に鋭い作品。
ルッキズム(可愛い方が人生得)の残酷な現実と、美に執着した末の恐怖と悲劇が凄まじい。
韓国だけの話ではなく、人類の普遍的な真理と宿業が題材であり、グローバルに共感しうる内容。
高い普遍性とサスペンスホラーのエンタメ性を両立しており、後世にも色褪せない可能性感じる。
ルッキズムの狂気と悲劇を誤魔化さず描き切った上で、視聴者に考えさせる示唆に富んでいる。
バットエンドの物語は、反面教師であり、視聴者へのメッセージは明解。
両親の愛にヒロインは最期まで気付くことが出来なかったが、第三者視点の視聴者には非常に分かり易い。
終盤、ヒロインは幼少期のバレエで拍手してくれた観客もいたが、気付くことはできなかった。
終盤諏訪部ボイスの黒幕が「君は間違った道を進まないでほしい」空々しく言っていた通りなのが皮肉。
唯一の拠り所が瞳の美しさという結局ルッキズムな辺りも痛烈。
それではダメで、容姿以外の価値を見出さねばならぬというお話…なんだけど、それは極めて困難な社会それでいいのかと。
また、ルッキズム地獄からの脱却には女性を捨てねばならぬ黒幕の結論も、強烈な風刺。
是非はともかく、非常に示唆に富んでいるアニメだった。
救済のヒントが散りばめられているのにバットエンドなのが厳しい物語だけど、印象に残る。
日本作品だったら美談にして救済もありがちだけど、そうしなかった事が本作に限れば良かった。
バットエンドでありながら、(まあそうなるしかないよな)的な納得感の方が強いためか、意外と不快感が残らない。
あとヒロインの親不孝と両親の無償の愛は、儒教的な持ち味を感じる。
人物描写や心理描写が生々しいが真に迫っており説得力が凄い。
ヒロインのイェジ(整形後ソレ)の境遇や心情は(そりゃそうなるよな)と女性でない自分でもぐぅの音も出ない程納得。
整形水という美の悪魔的薬品に取り憑かれ狂っていく心情も、是非もなしと思わされる。
説得力が半端ないためか、ストーリーへの没入感や、異常事態なのに違和感に気付かせない作劇が素晴らしかった。
ホラーとしても申し分なく怖い。
整形水で人体ドロドロに溶けるビジュアル面も、いつ破綻するか終始ハラハラドキドキなサスペンス両面で怖い。
山場が何度もあり、二転三転予測不能の怖さ。冷静に見ると予想は出来るかもたけど、視聴中は予定調和が気にならない。
予定調和と想定外のバランスが絶妙で、非常に面白かった。
CG作画も違和感無く作風に合っている。
見た目で美醜はっきり分かる説得力も高い。
美人キャラは明確に美人、モブと一線画す。主役もモブも絵的に大差ない多くのアニメは見習ってほしい。
また、アニメだから丁度良く見られる作品?実写だと生々しすぎるし、同じ女優が不細工から美人になりづらいだろうし?
アニメという表現媒体を活かした作品。
日本語版の沢城みゆき氏の好演も迫真。
我儘美人の罵倒ボイス多数なのでオイシイ。
【悪い点】
特になし。
強いて言えば、話の内容自体は好みじゃない位。
ヒロインかわいそう、何らかの救済はあって欲しかったと思うのは自分が甘い視聴者だからか。
【総合評価】8点
ホラーは不慣れだけど非常に面白かった。
高水準にテーマ性とエンタメ性の高いアニメは見ていて楽しい。
評価は「とても良い」
アニメ視聴に於いてルッキズム(女の子の可愛さ萌え度)超重視する自分としては、色々考えさせられるが、別に反省するつもりも無かったり。
少なくともアニメに於いてはキャラの見た目可愛い方が面白いのは確か。
本作でもイェジよりソレになってからの方が絵的に楽しいし。
まあそこは娯楽作品と割り切って。そこはタテマエと本音で…