「薔薇王の葬列(TVアニメ動画)」

総合得点
62.1
感想・評価
74
棚に入れた
220
ランキング
5063
★★★★☆ 3.1 (74)
物語
3.1
作画
2.8
声優
3.3
音楽
3.1
キャラ
3.1

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ネタバレ

てとてと さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0
物語 : 4.5 作画 : 3.0 声優 : 4.5 音楽 : 4.0 キャラ : 4.0 状態:観終わった

シェイクスピアの史劇、を題材にしたBL愛憎劇。アニメ的には癖が強いが、引き込まれてしまえば味わい深い良作

薔薇戦争(1455年~1485年に発生した、ヨーク家とランカスター家の王位争い?)を舞台に、主人公リチャード三世(ヨーク朝最後の王)の半生を愛憎渦巻く悲劇や燃え盛る情熱で描いた。
リチャードは両性具有(本人と周囲的には男だけど、女性の特徴持ち)や、父からの過剰な期待と母から悪魔の子呼ばわりな境遇からアイディンティティー求めて?愛や憎しみや王冠を求める…

【良い点】
シェイクスピアの史劇、薔薇戦争という渋い題材。
世界史では年表ちょこっと程度だけど、イギリスの歴史的戦乱で掘り下げると非常に興味深い。
「ベルサイユのばら」(フランス革命)とか、こういう題材だけで既に面白そう。

シェイクスピア史劇の雰囲気の演出重視しており、良くも悪くも普通のアニメとは異質。
シェイクスピア劇めいた芝居がかったセリフ回しやドラマチックなシーン多々、モブは顔無しなのも作画節約だけでなく劇みたいな風情感じるので良し。
暗く静止画多く、アニメというより演劇の場面毎に絵にしている感じ。
ここら辺癖が強いが、慣れてくると心地良くドラマに引き込まれる。
戦記要素や政治劇をバッサリ切り捨てる作劇も良し悪しではあるが、本筋はリチャード中心の愛のドラマなのでこれで良かったか。

歴史物だけどリチャードや取り巻く愛憎劇に集中しており、イギリス史に詳しくなくても十分楽しめる。
複雑に見えるが、要点はリチャードとの関係と、誰を王にしたいかの二点に絞られるため、愛憎劇に集中できる構図。
主人公リチャードはヨーク家の王子で、敵対するランカスター家に父討たれて復讐誓い、途中出会った男の子とBL友情育むが実は彼は敵の王子でロミジュリ状態云々…と、リチャード中心の背景やキャラ関係は分かり易い。
父の愛情と母の憎しみそして両性具有の体と心の狭間で苦しみ、出会う男たちと禁断の愛に身を焦がし、立場上相容れなかったり、宮廷闘争で相棒になったり、運命の悪戯で敵対しちゃったり、王権を巡る暗闘に翻弄される男たちの愛のドラマに目が離せない。

各キャラの心情や葛藤を丁寧に掘り下げている。各々が個人の感情と背負っている立場の挟間で揺れ動く、群像劇としても見応え抜群だった。
忠臣ケイツビーなど魅力的で華のあるキャラ豊富。
基本BLだがリチャードの妃となるアンなど数少ない女性キャラが非常に可愛い。
声優陣が豪華かつはまり役多く、キャラの魅力に貢献。

前半からの丁寧な掘り下げが効いてきて、後半回が進むほどに面白味が増していく。
特に終盤は父となったリチャードが愛息子エドワード(ショタ可愛い)への愛と血筋の秘密でドロドロするのが(リチャードには気の毒だけど)めっちゃ面白かった。
王権を巡る思惑が複雑に絡むので(イギリス史に詳しくなければ)先が読めず、誰が味方で誰が敵か常に緊張感孕む。

リチャードの両性具有設定もBLぽくやりたい放題な免罪符にしつつ、理性と情熱の挟間で揺れ易いキャラクター付けとして絶妙。
本質は女性故に逆に男らしく王らしく強がった結果、宮廷闘争や運命の悪戯で裏目に出て余計愛に苦しむ展開が非常にドラマチックだった。
策謀家で男性的な野心溢れるバッキンガム公爵の方が、土壇場でリチャードへの愛を優先し散る、終盤の逆転の構図もグッと来る。
愛か王冠か?の二択でどちらを選ぶ?という単純な愛のドラマに収束していくのがポイントだった。
幾多の愛憎劇の果てに、自分を憎んだ母の想いを汲んだり、妻と息子を得て心境が変わったり、初期から着々と成長した主人公だった。

終盤~ラストも非常に良い。
どう転んでも悲劇確定と思われた矢先まさかの救済エンド、やはり悲劇よりも救いがあった方が嬉しい。

【悪い点】
歴史物としては説明不足でダイジェスト感。
特に序盤は分かりづらくてイマイチ。
ここは回が進む程に面白味分かってくるので、ややスロースターターな作品。

キャラたちも背景が分かってくるまでに時間が掛かる。
通してみれば魅力的だが魅力が分かるのが後半以降なキャラ多数。
ここも含めて総じてスロースターターで長い目で見れる人向き。

良い点と裏腹、アニメーションとしては独特すぎる。
モブの個性を排除するのは良いんだけど、合戦や殺陣など動かすべきシーンが紙芝居状態なのは残念。
絵すら放棄してセリフや文字で長々解説するシーンもあり、アニメとしては微妙。
暗い色調も雰囲気は良いけれど、動的なシーンで画面が見づらい。
作画は本作独特な雰囲気出せているものの、キャラと声優の演技頼りで絵的には微妙。
…作画評価は悩む所。酷評されても仕方がないが、独特な魅力も捨てがたいし?(3点)

【総合評価】7~8点
とっつき難いけれどハマれれば抜群の魅力がある。隠れた良作と言われそう。
素晴らしいドラマ性があるが、アニメーションとしての評価には迷うところ。
掛け値無しで名作と絶賛するには紙一重で惜しかった。
評価はギリ「とても良い」

投稿 : 2022/07/28
閲覧 : 264
サンキュー:

4

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