てとてと さんの感想・評価
3.2
物語 : 2.5
作画 : 3.5
声優 : 3.5
音楽 : 3.5
キャラ : 3.0
状態:観終わった
反科学文明?自然回帰主義?の超意識高い思想啓蒙アニメ?テーマは良いが面白さは微妙
河森正治監督のオリジナルアニメ全13話。
環境破壊?が具現化したっぽい?(最終話で実は違うと判明)ラージャなる敵?とヒロインがバトルする。
【良い点】
一切の自重無しに環境問題や自然破壊への警鐘を主張した稀有な作風。
娯楽性一切度外視、徹底的に主張し問題提起してくる。
是非はともかく、異色の力作アニメなのは確か。一見の価値はある。
テーマ自体は間違ってはおらず、自然や食物と人間の関わり方など、納得できる話もある。
極めて説教臭い作風ではあるが、ヒロインの同級生の時夫(彼の方がヒロインかも)が一般的現代っ子代表した視点提供したり、科学文明の正の側面もフォローがある。
地球少女?になったジュナが悩み苦しみながらも、時夫の支えや超能力少女シンディとの交流で成長していくのも悪くない。
偏った思想の大人から説教される話よりも、それ以外で話が動く後半~終盤の方が面白い。
10話時夫と時夫父のディスコミュニケーションからの父子の和解は良かった。
本作の二大テーマのうち、環境問題よりも、ディスコミュニケーション関連の方がまだ良かった。
胎児の頃から他者の心が読める故に心閉ざしているシンディが、当初ジュナに毒吐くのが次第に分かり合ったり。
キャラはボーイフレンドの時夫君が素直で善良な男の子で好印象。
現代っ子らしい素直な本音と、ジュナを最後まで支えたさりげない優しさ。
地味なキャラながら本作唯一の癒しだった。
作画はキャラデザはともかく、ラージャとのバトルや地球の意思?をスピリチュアルに表現した演出は幻想的で見応えあり。
当時かなりのハイクオリティーなCG作画。
菅野よう子ミュージックなど楽曲も良い。
【悪い点】
あまりにも直截的に、思想や価値観を前面に出しすぎている。
それをラージャとのバトルや人類と日本救う云々の大筋ストーリーの中で展開するならば良いが、本筋に関係ない大人たちに直接語らせるというか、お説教する作劇が退屈。
例えば「風の谷のナウシカ」とか「もののけ姫」とかのジブリも自然回帰的なテーマは濃いが、ちゃんと物語の中にテーマを込めている。
劇場アニメ「メアリと魔女の花」とか露骨に反科学主義・反原発と思われるがちゃんと物語にはなっている、地球少女は物語になっていない。
対し本作はストーリーそっちのけで主義主張直接語っちゃっている、これではダメ。
主義や思想の是非は置いといて、視聴者が見たいのはアニメのストーリーやキャラドラマであって、思想そのものではない。
テーマ自体は間違ってはいないとは思うけれど、ここまで偏向していると取っ付き難さ半端無い。
ハンバーガーや農薬まみれの食品への嫌悪とか、まあそうかも知れないが、過ぎたるは及ばざるが如し。
本筋のドラマがつまらないというか、要領を得ない。
ラージャとは何か?に関しては最初と最後で分かるが、最初と最後だけ見ればいいとも言える。
ラージャやSEED(シード)たちの人類守るための活動云々が説明不足のまま、ジュナが延々自然回帰主義な大人から説教されたり、ストーリーが退屈。
クリスやシンディとの交流掘り下げの中で諸問題を語らせるべき。
またバトルで敵倒しちゃいけないのでフラストレーション溜まる。
延々と意識高い説教と影響受けたジュナがノイローゼ気味に追い詰められるため、終始重苦しく辟易。
時夫がいなければ視聴に耐えられなかった。
自然回帰主義とディスコミュニケーション、ふたつのテーマ混ぜてきて雑然としがち。
どちらかというと後者は悪くなかった気がするが残り話数が少ない。
環境問題にせよ社会問題にせよ、とっ散らかっている。もう少し絞ってほしかった。
雑然と問題提起しているだけ。それがドラマやストーリーに繋がっていない。
キャラデザが可愛くない。
実写映像に頼る演出も微妙。アニメーションで表現すべき。(作画減点)
菅野よう子ミュージックもクオリティーは高いかもしれないが、あまり印象に残らず。
【総合評価】3~2点
評価が真っ二つに割れる、意識高い系アニメ。
テーマ自体は良いんだけど、話はつまらん。
1クールもいならい、劇場アニメでよかったような。
ただ、凡百の駄作として埋もれはしないであろう存在感を放っている、稀有な力作なのも確か。
好みか否かに関わらず、アニメ好きならば一度は視聴しておく価値あり。
正直好きじゃないけれど、評価は「普通」(こういうタイプは普通判定でお茶濁す)
【余談】範馬勇次郎のセリフ
「防腐剤…着色料…保存料…様々な化学物質 身体によかろうハズもない。
しかし、だからとて健康にいいものだけを採る。これも健全とは言い難い。
毒も喰らう 栄養も喰らう。両方を共に美味いと感じ血肉に変える度量こそが食には肝要だ」
地球少女アルジュナを見て、真っ先に勇次郎パパのこのセリフが脳裏をよぎった…
このアニメも健全とは言い難い。