てとてと さんの感想・評価
4.0
物語 : 4.0
作画 : 4.0
声優 : 4.5
音楽 : 3.5
キャラ : 4.0
状態:観終わった
旧ソ連(ぽい国)の宇宙開発とラブコメ。シリアスとライトな甘さの配分が適度で心良く見られる
ソ連ぽい架空国家で宇宙飛行士目指す被差別民族の少女と教官の少年のラブロマンス。
大御所の林原めぐみ氏が超久々の正統派ツンデレヒロインを演じた。
【良い点】
冷戦期の宇宙開発競争という珍しい題材と、旧共産圏ならではの抑圧された舞台背景。
これを一途に夢を追う少年少女のラブロマンスに丁寧に繋げていく。
少年が教官で少女と二人三脚で訓練する過程で自然と親密になっていく。
訓練メニュー自体が興味深いのと、イリナちゃんの瑞々しいリアクションの可愛さで、訓練シーン続きでも飽きさせない。
少しずつ課題をクリアーし、互いを知っていく。
抑圧された国家の統制下で、少しずつ芽生える恋心が非常に良かった。
ソ連(ぽい国)の夜の大空や、湖畔での語らいなど、ロマンチックな良場面多々。
普通のラブコメでは中々見られない珍しいシチュエーションでの綺麗な良シーン多し。
ソ連の宇宙開発史を下敷きに様々なエピソードや訓練模様を描き、宇宙飛行士訓練生物として興味深い。
2007年の「ロケットガール」も良作だけど、宇宙飛行士訓練アニメとしてはロケットガールより格段に良い。
イリナは実験動物扱いながら極度に非人道的訓練はさせられないので割と安心。
史実のエピソードを基にしたエピソードも興味深い上に、主人公とヒロインの絆を痛快に見せてくれる。
旧ソ連的抑圧が終始圧し掛かる一方で、基本的にライトなラブコメを貫いているのが魅力。
リアルソ連と比して非常に甘く優しい作風。主人公レフ以外にも主要キャラは被差別民なイリナに好意的だったり、国粋主義的キャラも途中で態度軟化したり、過度に共産国家のえげつない側面は見せない。
共産圏の怖い面をスパイスにしつつ、あくまでレフとイリナのラブロマンスを瑞々しく美しく描き切った。
後半~ラストもかなり甘い御都合主義は否めないが、清々しいハッピーエンド。
意地悪く見ると底は浅いかもしれないが、これはライトノベル、あまり不快にならず見ていける点で良かった。
イデオロギーは主題ではないが、レフの価値観やイリナとのラブロマンスを通して、言下に統制国家より自由の方がいいんだ!的なメッセージあり。
自由主義謳歌している視聴者的には当然共感出来る。
イリナちゃん可愛い。
境遇故に心閉ざしているツンデレ、レフとの訓練で親密になる程に可愛い本音を見せてくれる。
吸血鬼は味が分からない設定を、炭酸飲料なら美味しいからとレフとの思い出に繋げるエピソードも良かった。
なんといっても林原めぐみボイスの破壊力が素晴らしかった。
まさか令和に林原ヒロインに会えるとは。
作画はキャラデザも宇宙飛行訓練シーンや宇宙飛行描写も申し分ない。
特にイリナちゃんの喜怒哀楽の感情描写はかなり可愛い。
【悪い点】
良い点と裏腹、共産主義独裁国家の負の描写が相当に甘い。
ライトで見やすい反面、愛し合うふたりへの試練や波乱要因としては弱かった。
イリナの処遇に関するハラハラ感はあったが、かなり優しい方向性なので安心して見られてしまった。
レフとイリナ以外のキャラが弱い。
イリナに偏見なく接するアーニャちゃん良キャラではあったけれど、地味。
その他キャラはなんというか、優等生すぎる印象。
山場がイリナが初飛行成功させた中盤辺り、以降ややトーンダウン。
終盤の政治劇は好感持てる結末ではあるが御都合感が否めず。
そのためか、全編通してだとやや地味な作品な印象。
【総合評価】7点
ソ連ロマンとライトで綺麗なラブロマンスで見やすい良作。
深みや踏み込みが物足りなかった面はあれど、そのライトさが持ち味だった。
評価はとても良いには一歩惜しい「良い」
【余談】
めっちゃ厳しく共産独裁国家の邪悪さ恐ろしさ描いたアニメだと「シュヴァルツェスマーケン」
こちらは東ドイツ、超シリアスで楽しくないけれど良作。
良作だけど面白くはないので、月とライカと吸血姫みたいにフィクションの甘さも大事だなと。