「ジョゼと虎と魚たち(アニメ映画)」

総合得点
78.2
感想・評価
193
棚に入れた
795
ランキング
571
★★★★☆ 4.0 (193)
物語
4.0
作画
4.2
声優
3.9
音楽
3.8
キャラ
3.9

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ネタバレ

てとてと さんの感想・評価

★★★★★ 4.2
物語 : 4.5 作画 : 4.5 声優 : 3.5 音楽 : 4.0 キャラ : 4.5 状態:観終わった

原作の文学性?哲学性?を削り、素直で分かり易い青春ラブストーリーに仕上げた良作

海洋学者になりたい夢に向かって頑張る22歳の青年と、ずっと車椅子生活で容姿と性格が幼いが実は2歳年上な女性のラブストーリー。
99分の劇場版で、原作の短編恋愛小説とはストーリーやキャラ設定がかなり異なる。

【良い点】
素直で好感が持てるラブストーリーとして王道で手堅く完成度が高い。
原作よりも格段にピュアで親しみ易く分かり易い。
原作は素晴らしい文学性があるかもだけど、100分弱のアニメにするには分かりづらいと思われ。
雪道で車椅子暴走展開はベタながら王道的ラブコメの盛り上がりあって好き。
…シチュエーションは異なるがtrue tearsを彷彿。
(ヒロインめんどくさいし。主人公が全部ちゃんとするから的に吹っ切れてるし)

恒夫は海洋学者、ジョゼは絵という才能と夢を設定、夢を追いかける若者の青春ドラマが眩しい。
障がい故に祖母の過保護で閉じ籠っていたジョゼが、真っ直ぐに夢を追う恒夫と出逢い、自立していく。
ワガママなジョゼが恒夫を振り回しながら微笑ましいラブコメの中で、ジョゼが外の世界を知り、恋を知り、絵という自分の才能、やりたい夢を知っていく。
前半恒夫がジョゼを広い海に連れ出し、中盤事故で夢を諦めかけた恒夫を、今度はジョゼが救う流れが美しい。
絵本朗読が名場面でテーマが分かり易い。
作品タイトルの意味を再解釈?ジョゼは魚で、本当は広い海を泳ぐ自由と力がある。
きっかけをくれた恒夫に恋していくのは実に自然。
ジョゼの自立の物語を素直なラブコメに絡めて活写、EDでのエピローグも希望に満ちていて完璧。

障がい者の自立や距離感といったテーマも無いわけではなかろうが、過度に説教臭くない点も良い。
自立の物語に障がいは関係ない。説教臭い障がい者のドラマにせず、素直なラブコメの中でさりげなく描いた。
障がいは初期設定に過ぎず、きっかけと出会いで未来は変わっていく。
本作は別に障がい者のドラマにあらず。もっと普遍性のある良い意味で普通の物語だった。

ジョゼが大変可愛い。
幼く見えるが実は主人公より年上という設定もエモい。関西弁も萌え。
境遇故の面倒くさい性格(幼く情緒不安定、高飛車など)は何となくとらドラ!の逢坂大河と似ている。(奇しくも両作品タイトルに虎)
両ヒロインとも初見では性格悪い悪印象かもだが、通して見るとそうならざるを得なかったバックボーンあり、それを包容力高い主人公が解き解していく構図も相通じる。
喜怒哀楽の感情が瑞々しく、外の世界を知らなかった故の初々しいリアクションや感情の行き場に戸惑い赤面するシーンが多い辺りも萌える。
ヒロインが可愛い、萌えるというのは自分的に重視ポイント。
これは娯楽映画。どんな高尚な作品でも女の子が可愛いに越したことはないので。

登場人物に悪人がおらず(祖父はちょっときつかったけど孫を思っての善意だろうし、後輩ちゃんは修羅場るけど良い子だし)不快感も殆ど無い。
祖母は初見では孫を籠の鳥にする闇深いキャラかと警戒したが、「外は怖いだけやないで」と自立していくジョゼを見て朗らかに笑うシーンで、素直に孫を愛してたんだなと分かる。
恒夫を轢いた女性が誠実な対応したシーンも地味だが大事、視聴者に不快感を出さない配慮が行き届いている。
また原作の虎、性犯罪者を削除したのも英断。
こいつ出したら一気に不快になるし、映画自体の評価ダダ下がりだったと思う。
虎要素はジョゼの絵本朗読で補完しているのも上手い。

原作から追加された後輩ちゃんや友人など良キャラ揃い。
後輩ちゃんは王道な負けヒロインではあるがとても良い子で可愛い。
ラブコメにメリハリがあったし、ジョゼが葛藤の末成長し恒夫への恋を自覚するのに後輩ちゃんの存在は大きい。

作画は派手さはないが申し分なく綺麗。
特にジョゼのキャラデザ、感情描写が非常に可愛いのがポイント高い。
激しい感情の起伏を可愛らしく描けている。
繰り返すが、女の子がキャラ的にも絵的にも可愛いのは大事。特にラブコメにおいては。

声優陣は主演は本職ではないがジョゼのキャラには合っていて申し分ない。
主題歌も主題が素直で好感が持てた。

【悪い点】
このヒロインめんどくさい。
自分は上記理由でむしろ萌えまくるけれど。好みが割れるのは仕方あるまい。
(勝手な推測だけど)逢坂大河が嫌いな人はジョゼちゃんもダメなのでは?

序盤、ジョゼの車椅子を坂に追い落とした何者かの悪意。
優しい物語を通しているがこれだけは気になる。

作劇上仕方がないが、後輩ちゃんが終始負けヒロインでかわいそう。

【総合評価】9点
素晴らしき青春ラブコメ映画。100分弱で素直に楽しめる良作。
原作派は物足りないかもしれないが、娯楽アニメとしては大正解だと思う。
それでいて普遍性の高い恋と若者の夢や自立も申し分なく、非の打ちどころがあまり無い。
評価は最高とまではいかないが「とても良い」

投稿 : 2022/07/21
閲覧 : 213
サンキュー:

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