てとてと さんの感想・評価
4.2
物語 : 4.5
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
魔女を主人公にした本格派ファンタジー、かなりの良作
「魔法使い黎明期」の前日談なので、こちらを先に視聴したほうが良さげ。
※作品データベース様より転載
【良い点】
ハイファンタジーとして丁寧に世界観や主要キャラ間の心情を紡ぎつつ、全12話で極めて完成度の高いストーリー。無駄な回が1話も無い。
序盤からの伏線が後々活きるシーン多々。2話の人探しの魔法が9話の伏線だったり、3話の変態服屋にゼロの靴下あげたのがまさかの回収されるなど。
前半のホルデムの剣筋がお行儀良いのも後に元貴族だったなど、地味だけど丁寧な作品作りで感心する。
この世界における獣堕ちや魔女や魔法の存在感や立ち位置などを自然に丁寧に描写、終始分かり易い。
ロードムービーながら、2度の強制転移による急展開あり飽きさせない。
作画も地味ながら綺麗、中世的な街並みや旅路、2話の村の木材加工などの生活描写が良い。ゼロやアルバスも可愛い。
食事シーンを大切に描いている。スープにナイフで岩塩擦り落とすなど非常に凝っている。(棺姫のチャイカと共通する良さ)
食事はヒロインのゼロにとって未知なる喜びの象徴(OP主題歌の歌詞で非常に分かり易い)、傭兵との食事を通して素直にテーマが伝わる。
魔法や戦闘の外連味も中々。
見た目美少女だが人ならざる魔女ゼロと、見た目獣だが純朴な傭兵のコンビ、掛け合いの雰囲気が非常に良い。狼と香辛料を少し彷彿。
ここにアルバスやホルデムも加わり、傭兵とホルデムの小粋な掛け合いなどセンスがある。
主軸はゼロと傭兵の絆、種族の確執ありつつ揺れ動くふたりの距離感がとても良かった。10話のゼロの涙が尊い。
中盤以降の13番に揺さぶられての危機で目が離せず。
魔法という強過ぎる力をめぐる、誰も悪人がいないファンタジー。
種族対立、特に魔女狩り題材のアニメは結構多いけれど、その中でも非常に綺麗に纏めている。
他者への不信や恐怖が誤解や争いの連鎖を生む、それでも善意で解決して見せたのは見事。
御都合主義ではあるが、これは創作、ファンタジーだし。
リアリティーに拘って醜くなるより、折角の魔法ファンタジーなんだから、綺麗な物語に越したことはないと思う。
魔法を現実の科学技術による悪しき影響になぞらえる視点で示唆に富んでいるが、あくまでもライト。
別に鋭く風刺するわけではなく、ファンタジーの一つとして楽しめる範疇。
題材自体は他の作品でも割とあるけれど、リアルの問題をライトなファンタジーに綺麗に落とし込んでいる点で、本作は抜きん出ている。
ラストも全てめでたしめでたしではなく問題は山積、けれど明るく旅に出ような締めで後味良し。
花守ゆみり、小山剛志両氏の演技も非常に良い。
【悪い点】
自分は悪いとは思わないが、あまりに完成度が高過ぎて地味に感じる面も。スケールは小さい。
1話1話丁寧に紡ぎ、2度の転移などはあれど、意外性やドラマチックさはあまりない。
とはいえ終始ハラハラ感は持続しているので十分ではある。
変態服屋がラスト報われてないかも…?
作品タイトルで超人気作リゼロこと「Re:ゼロから始める異世界生活」と混同する。
本作が悪いわけでは決してないが、タイトルで損をしている感は否めない…。
(連載開始はリゼロが1年早いが大賞受賞はこちらが1年早い、リゼロが超ヒットするとはこの時点では予測不能だし仕方がない?)
【総合評価】8~9点
地味な良作。外連味は欠けるかもしれないが、ここまで完成度の高い1クールのハイファンタジーは稀有。
欠点らしい欠点は実質無い(挙げた悪い点は殆ど難癖だし)、現実に対するファンタジーの描き方としては理想的な内容だった。
これ程の良質な内容で物足りないからと評価下げてたら、相当数のアニメが佳作未満になってしまう。
評価は「とても良い」