てとてと さんの感想・評価
3.3
物語 : 2.5
作画 : 4.0
声優 : 3.0
音楽 : 4.0
キャラ : 3.0
状態:観終わった
メタバース?を題材にした、細田守映画。テーマは良いがあまり面白くない
細田監督の6作目。120分ちょい。
仮想現実を舞台に歌が好きだった少女が本当の自分取り戻したりなお話。
※作品データベース様より一部修正投稿
【良い点】
2020年代のトレンドである「メタバース」を描いた意欲作。
「デジモンアドベンチャー」や「サマーウォーズ」を手掛けた細田守監督の持ち味を、2020年代に合わせてきている。
SNSなどのネット上で繋がり過ぎる負の側面を強調、今日的なテーマ性あり、示唆に富んでいる。
面白いかは別として、2020年代の時代性を鋭く突いている点は評価。
匿名性の暴力や悪意、リアルでも仮想空間でも怯えて自由に生きづらい世界を、美麗な映像も交えてファンタスティックに表現した。
「U」の世界は美しいが、仮想空間の雑踏は魑魅魍魎蠢いている。
そんなセカイで、幼い頃母を亡くしたトラウマで本当の自分を出せずにいるヒロインが、仮想世界で荒れている竜との出逢いで成長する。
見ず知らずの子供救い命落とした母の気高さと対比させて、本物の善意とは?と分かり易く問いかけていた。
美女と野獣めいた構図がメルヘンチック。歌を主軸に据えており楽曲面で魅せる。
青春ラブコメ要素もあり。
人との繋がりが大事というサマーウォーズ以来の展開もちゃんとある。
合唱部のおばちゃん達の強キャラ感は細田監督らしくて良かった。
【悪い点】
終始陰気でギスギスしている。楽しくない。
仮想現実、匿名コミュニケーションの負の側面に傾倒し過ぎている。
中盤の同級生からの炎上事件とか、とにかくネットのコミュニティーをネガティブに描くのに終始している。
仮想現実風刺は意地悪く見ると今更感、正義厨ジャスティスとか分かり易い害悪だけど、決着が中途半端。
終盤の毒親との対決も消化不良でモヤモヤ感。
仮想現実を痛烈に風刺する一方で、仮想現実ならではのポジティブな展望を示せなかった。
仮想現実だから奇跡起こせたように見えるが、薄っぺらい。
世界観や設定の細かいところでツッコミ所が多い。
竜よりもジャスティスの横暴がまかり通っていたり、全世界50億のユーザーがいる割に話のスケールが小さかったり。
クライマックスでヒロインが匿名性捨てて歌で訴えたシーン。
楽曲とノリで誤魔化してくれてはいたが、仮想現実の全否定とも取れてしまう。この結論は釈然としないというか、些か時代遅れ。
現代人が自分らしくある為には匿名性はNG?いやいや、そうじゃないだろ…
言いたい事は分かる、多分間違ってもいない。
ただ、旧態依然の価値観で昨今のコミュニケーションの現実を否定するだけではダメだと思う。
竜の正体が、モブの一人だった作劇構造もイマイチ。盛り上がる王道を外しラブコメとしては軸がブレてしまった。
仮にもう一度視聴する場合、竜とのロマンスな視点では見れないし、幼馴染も微妙だし。
まあ、もし幼馴染君だったらベタ過ぎたかも知れないが。
幼馴染にも共感できない。
キャラデザが可愛くないのもマイナス。
ベルとか、ディズニーぽいキャラデザはニガテなので。
どちらかというとリアルの方が可愛いくらいだけど、作品中の評価と逆なので、それはそれで違和感。
背景作画も仮想世界は良いが、現実世界が写実的過ぎてアニメとしては風情に欠ける。
綺麗な写実的背景が良いアニメとは限らない。
(作画評価4.5→4)
【総合評価】2~3点
今日的なSNSのディスコミュニケーションを痛烈に風刺した意欲作ではあるが、あんまり面白くない。
評価は普通か迷う、ちょっと厳しいが「悪い」
デジモンやサマーウォーズの頃は、まだ夢もキボーもあった。仮想現実やインターネットにポジティブな展望があった。
それから10年20年経った現在、監督の(監督だけでなく自分らも)夢や幻想が消えてしまったというか、消えざるを得なかったというか。
たぶん細田監督は悪くない、時代が悪いんだよ…
【余談】
仮想現実(拡張現実)を題材にしたアニメ映画としては2017年の「ソードアート・オンライン-オーディナル・スケール-」
の方が断然良い。
SAOって軽薄な中二病作品の代表格的な見られ方されがちだけど、仮想現実との向き合い方というテーマに関しては
ちゃんと真摯に向き合った末にポジティブな展望を示せている。SF作品として幅広い支持得ているのには理由がある。