「TIGER&BUNNY [タイガーアンドバニー](TVアニメ動画)」

総合得点
87.4
感想・評価
3366
棚に入れた
17318
ランキング
158
★★★★☆ 4.0 (3366)
物語
4.0
作画
3.9
声優
3.9
音楽
3.8
キャラ
4.1

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ネタバレ

ナルユキ さんの感想・評価

★★★★★ 4.4
物語 : 3.5 作画 : 4.0 声優 : 5.0 音楽 : 5.0 キャラ : 4.5 状態:観終わった

語りきれない!おっさんを愛でるヒーローアニメ

「国産アニメーションが初めて公開されてから、今年で100周年を迎える節目に、この間作られたおよそ1万タイトルのアニメから、視聴者投票で選ばれた100作品を発表する番組『発表!あなたが選ぶアニメベスト100』が3日、NHK・BSプレミアムで3時間にわたり生放送された。60万以上の投票があり、総合1位は『TIGER & BUNNY』(2011年)が輝いた。」(ORICON NEWS, 2017/05/03)
──この話題を聞いた当時は「俺抜きで勝手にアニメベスト100決めて公共の電波に流してんじゃねぇ!!」と憤慨したし、“坊主憎けりゃ袈裟まで憎い”ということで1位となったこの作品にも観ない内から少なからず反感を抱いていたものだ(笑) 同じ思いをしたアニオタも大勢いたことだろう。
ただ、やっぱりオタクという人種は程度の差はあれどディープで変わった感性を持っていて、だからこそ理由なく王道を「つまらない」ものにしたがる傾向にあるようだ。
観た感想を端的に書けば、この作品は確かに王道ヒーローアクションであり、然れど風変わりなキャラクターも多数用意された面白い作品である。今日までの人気や一般界隈での評価は至極、妥当であると感じた。

【ココがすごい:実在企業とタイアップした日本版Marvel(1)】
最大の特徴は各ヒーローの体に実在する「スポンサーロゴ」が入っているところだろう。主人公の新スーツには胸部にデカデカと『SoftBank』の文字がプリントされており、完全に某大手通信事業者の回し者となっている。他のヒーローにも玩具メーカーの『BANDAI』、焼肉チェーンの『牛角』にペプシコーラの『ペプシ』、『Calbee』に『DMM』などといった有名な会社のロゴをその身に背負って日夜、TV中継を意識しながら街の平和を守っている。こう聞くと滑稽に映りそうなヒーローたちの姿だが、ちゃんと広告を入れるためのスペース(余白)を考えてデザインされたヒーローたちのスーツは各種ロゴに不思議とマッチしている。むしろ無い方がダサいと感じてしまうくらいだ。
このように実在する企業の名前(商標)を劇中で表示させることでコマーシャル(CM)と同等以上の注目(Attention)を得る手法を「プロダクト・プレイスメント」と言う。他のアニメやドラマ作品でもしばしば使われているものだが、背景やゲスト程度ではなく活躍するキャラクターと常に共にあるというケースは本作のみである。
企業側にとっては今まで以上の認知度を、本作側にとっては企業ロゴを拝借してキャラの印象を深める双方Win-Winなタイアップを図ることに成功しており、我々視聴者もロックバイソンに親しみを込めて『牛角さん』と呼ぶなど小ネタやあだ名付けに事欠かない。普段、番組に挟まれる通常のCMではあり得ない企業に対しての「好感」が持てる、誰も損をしない手法で本作は成り立っているのである。

【ココがすごい:実在企業とタイアップした日本版Marvel(2)】
「単にヒーローの身体に広告入れただけでしょ?」とそう思う人もいるかもしれない。まあ確かにヒーロースーツの余白を埋めてくれるならロゴは何でも良さげなところは感じた。主人公も本作ではソフトバンクだが、次作では『FamilyMart』にすげ替えられている。
しかし重要な点は、ヒーローが企業ロゴを背負っている=ヒーローにはスポンサーがついているという世界観だ。この日本版Marvelには独りで莫大な資産を持ち最新スーツに身を纏う鋼鉄のヒーローも、独りで様々な発明品を作って蜘蛛の能力と組み合わせる天才ヒーローも存在しない。この作品におけるヒーローは『NEXT』と呼ばれる特殊能力を持っているが、それ1つでは自立できないほどに非力かつ人間らしい「個人」として描かれている。
「お前がヒーローをやっていけてるのは誰のおかげだ?」
「スポンサー様です!!」
ヒーローは時として、正義を実行するために物を壊してしまうことがある。その時に発生する「賠償金」がきっちり請求されるのも本作ならではだ。そういった不測の事態や、ヒーロー活動をサポートするガジェット(装備品)、乗り物、人材、高性能スーツなどにかかる諸々の費用を負担してくれるのが各ヒーローが所属する「会社」であり、その各会社に出資してくれるのがスポンサー。なのでヒーローは会社の意向には基本、逆らえない。
同じく逆らえないのがTV局。この作品の舞台・シュテルンビルトでは『HERO TV』という生放送番組でヒーローが事件を解決する様を放送している。実況アナウンサー役にはバラエティ番組などでも活躍する太田慎一郎氏が起用されており、雰囲気はまさに『世界衝撃映像100連発』にチャンネルを回したかのようである。ここで活躍するヒーローの背負う広告が長くTVに映るということで、企業は人気の高いヒーローとその所属会社のスポンサーとして名乗りを上げるし、ヒーローも社の意向に沿った活躍を行う。そういう「ヒーロー事業」の図式が出来上がっているのだ。
面白いのが『折紙サイクロン』という忍者風ヒーローである。このヒーロー、後々理由も解るのだが犯人逮捕よりも「TVに広告を映すこと」を信条としており、他のヒーローが活躍する傍ら、画角の端っこに注目するといつもいて見得を切ったりポーズを取ったりしている。最早ヒーローとは何なのかその定義すら崩れかけており何とも不思議、然れど現実にスーパーヒーローがいたらこんな社会になるのかなと思わせる、妙な現実感もある世界観なのだ。

【コイツがカッコいい?:正義の壊し屋・ワイルドタイガー! ワイルドに吠えるぜ!】
そんなビジネス感漂うヒーロー界だからこそ、正義のためなら器物損壊もお構い無しという古めかしいヒーローは逆に市民やメディアからのウケが悪い。
本作の主人公であるワイルドタイガー=鏑木・T・虎徹は身体能力を100倍にして戦う王道中の王道ともいえるスーパーヒーローだ。国内ヒーロー物では『僕のヒーローアカデミア』や『ワンパンマン』の先輩とも呼べる。しかし寄る年波には勝てず────とよく書かれているが、観た感じでは生来の「要領の悪さ」がたたって本作のビジネス型ヒーロー活動に順応できておらず、犯人を追い詰める姿勢や成果を評価されるよりも能力で建物を壊したことを非難されるという不憫な役回りでいる。HERO TVでは当初7人いるヒーローのランキング付けを行っているが、彼はその中のブービー──劇中の人気では最下位より劣っている──というぞんざいな扱いも受けており、生放送でもタイガーの出番はCM入りの絶好の機会。そして失態を1つ犯せばそれだけで今夜の嘲笑の的にされることも少なくない。
彼の正義とその魅力を解ってあげられるのは画面の前にいる私たちだけ……そんな庇護欲をかき立てられるような哀愁漂う「おっさん」を主人公に立てているのが独特である。
そんな主人公の前に『バーナビー・ブルックスJr.』という新ヒーローが現れ手柄をかっさらってしまう。彼はなんと虎徹と同じ能力を持っていた。かつイケメンであり、何よりも若い。
第1話にしてもうワイルドタイガーはお役御免かと思われたその後、虎徹とバーナビーは社の意向によりコンビを組んでのヒーロー活動を強いられてしまう。

【そしてココが面白い:同じ能力で組まされた凸凹コンビ(1)】
同じ能力で主人公がベテラン、相棒がルーキーならば主人公が自分の経験を伝えて新人の成長を促し、その折で後輩が先輩をどんどんと慕っていく────そんな仲睦まじい相棒物になるのが普通だと思われる。
しかし虎徹はそこまで頼りがいのある先輩ではないし、バーナビーも最初から自分のやり方──HERO TVのセオリー──を定めているエリートであり、間の抜けた先輩の手解きなど必要としない。虎徹のステレオタイプなヒーロー観とバーナビーのランキング重視の戦略思考は対極にあると言ってもいい。そんな2人を「社の意向」だけで無理やりくっつけるのだからこのコンビ、まあ口喧嘩や嫌味の応酬が絶えないのである。しかも異様にレベルが低い(笑)
【ケース1】
虎「人前で仮面外したりすんな。ヒーローってのはな、正体を明かさないからヒーローなんであって──」
兎「古いなぁ……時代遅れなんですよ、“おじさん”」
【ケース2】
兎「僕の人生の3分をあなたが無駄にしたこと、一生忘れません」
虎「……お前、友達いないだろ」
【ケース3】
{netabare}虎「まったく…じゃあ“バニーちゃん”はご自由にどーぞ!」
兎「ちょっと待って下さい!聞き違いでなければ、今僕のことバニーちゃんって──」
虎「ぴょこぴょこ跳ねてお耳のながーい、可愛いウサギちゃんみたいだな(笑)」
兎「僕はバニーじゃない!バーナビーです!!」
虎「『ボクはバニーじゃない、バーナビーですぅ』(両手でウサ耳を表現しながら)」
兎「そんな言い方はしていない!」
虎「『そんないーかたはしていな~い』(〃)」{/netabare}
【ケース4】
{netabare}兎「てゆーか、いきなり足引っ張らないで下さい」
虎「いやいや、お前だって車ボコボコにしてんだろ!賠償金はお前持ちだかんな!」
兎「(あなたを助けるために潰してしまったんだから)虎徹さんが払って下さい!」
虎「はぁっ!?俺は『助けてくれ』なんて頼んでねーぞ?」
兎「なっ……なんて人だ!」{/netabare}
いかがだろうか。とくに3番目のムキになって怒る24歳児、その神経を逆撫でするように小学生のようなやり口で煽り続ける1児の父親……人によっては謎の中毒性のある会話劇だろう(笑)

【そしてココが面白い:同じ能力で組まされた凸凹コンビ(2)】
そんな感じでストーリー自体は王道を地で行くものの、その道を世代も性格も真反対な凸凹コンビを中心に、蛇行するかの如くボリューミーに進めていく。
情に熱く、ガサツで実力が空転しがちなベテランヒーロー・虎徹と、若く実力もあるがプライドが高く、繊細な一面も見せるバーナビーが反発しながらも意外なところで息を合わせて事件を解決。このテンプレートを基盤としつつ、特別な力を持つヒーローたちの「人間模様」とその折合いをつける様をしっかりと描写していた。
{netabare}とくに印象的なのはブルーローズ=カリーナ・ライルの話と折紙サイクロン=イワン・カレリンの話の2つだ。
強力な氷の能力でヒーローランキングの上位に君臨するスーパーアイドル女王様・ブルーローズ────というのは社の意向によるキャラ付け。本来は好戦的な性格ではなく、夢の歌手になる条件として提示されたヒーロー活動を続けるべきか、辞めるべきかと揺れるカリーナの姿はどこにでもいる少女である。
一方、折紙がずっと見切れ職人をやっているのはヒーローらしい活躍をスポンサーから期待されていないからだ。戦闘向きな能力を持たない彼には貼り付けられたスポンサーロゴを少しでも長く映してもらうだけに念頭が置かれている。虎徹よりも酷い扱いを彼が粛々と受け入れていたのは、嘗て共にヒーローになることを誓った友人への負い目があったからだった────。{/netabare}
特別な力を持ち、犯罪者を倒し、市民を守るヒーローたちの活躍が描写される一方で、そんな彼らの本来のキャラクター性も愛くるしく描写する。王道のストーリーの中にしっかりとしたキャラクター描写があるからこそ、ありきたりとは感じず素直に面白いと評せる。
2クールの折り返し──1クール分──で1度ストーリーをきちんと〆るところも個人的には気に入った。

【でもココがひどい:雑な追い込み】
しかし2クール目のストーリーがやや酷い。事前に「後半以降は好みが分かれる」とは聞いていたが、その通りだと思った。
前半のストーリーはいい意味でも悪い意味でも王道でアメコミ風の軽いノリがあった。主人公たる虎徹の活躍が大きな理由だろう。
彼が他のヒーローの悩みや葛藤に干渉するのをバーナビーが渋々と付き合う。そんな1・2話完結式で進めつつ、バーナビーの両親を殺した犯人を少しずつ突き止めていくという内容は見やすくて痛快だ。10話からの大型テロリストとの対決も区切りをつけるクライマックスとして申し分なく、主人公らの能力では描きがちな「ゴリ押し」を避けた意外なシナリオも魅せており、13話目までの1クールアニメとしてだけ観れば起承転結もスッキリとした素晴らしいストーリーだと言えるだろう。
{netabare}ところが14話以降は主人公である虎徹を追い込むことに取り憑かれたかのようなシリアスの連続であり、前半との温度差に風邪を引いてしまいそうになるのである。
シリアス自体は嫌いではない。しかしやたら突っ込みどころが多いのが気になってしまう。
例えば虎徹の能力が弱まっているのを周りが全く気づかず(とくに相棒として近くにおり10ヶ月間、活動を共にして虎徹のことが解った気でいるバーナビーの)勘が鈍いように思えてしまったり、虎徹を追い込むために黒幕が周辺人物に記憶操作を使うのはいいのだが、報道まで捲き込むなら若干、根回しが足りないように感じてしまったりする。
彼の性格上、仕方ないのだが、能力減退によりヒーローを辞める決意をしたのに、その旨を中々周りに打ち明けず余計な不和を生み出す虎徹自身にも、苛立ちに似たもどかしさを感じてしまった。「要領が悪い」のは重々承知だったんだけど、大人キャラですからね。報連相はしっかりやれるところ見せてくれないと流石にカッコ悪すぎる。{/netabare}

【ココもひどい:もっと!熱い脚本書けよおおおおおおおお!!】
{netabare}1番残念だったのが、虎徹が再び『クソスーツ』こと旧スーツに身を包み、記憶を操られたヒーローたちに相対する展開だ。あそこはもう少し熱い脚本を書いてほしかった。
旧スーツが新スーツに勝っている部分は、それでワイルドタイガーが長年活躍していた“実績”の筈である。ならば旧スーツで戦えば、嘗てワイルドタイガーに助けられた人を呼び水に多くの民衆がワイルドタイガーが本物であることを確信する⇒殺人犯にしている報道に反発し、虎徹を助けるという展開を描いても良かったのではないだろうか?
「これまでのお礼として民衆がヒーローを助ける」という部分は正直に書くと『スパイダーマン2』のある展開のパクリである。けれどもこのアニメが前半では王道ヒーローアクションを描いてきたからこそ赦されるオマージュ展開ではないだろうか?
少なくとも田舎に住んでいる虎徹の愛娘・楓がコピー能力に目覚め、シュテルンビルトに来訪し、黒幕と接触して記憶操作能力をコピーしてまとめて元に戻す、なんてご都合を描くよりずっと良い。現状のシナリオでは虎徹が旧スーツを着た意味がないのである。
そして他の6人のヒーローたち。たった1体のロボットにやられてまとめて人質になってしまうのは流石に扱いが雑すぎるだろう。
最終的には熱い展開で2クール目も締め括られたが、雰囲気を熱くするために強引に運んだ話も多く、単作として観た場合は未解決で投げた要素も多い。ストーリー構成的にも、それまで1・2話完結式の中で本筋のストーリーを進める展開が多かったのに、終盤はシリアスな展開が続きテンポが悪くなってしまっている。{/netabare}

【キャラクター評価】
鏑木・T・虎徹(かぶらぎ・ティー・こてつ)
この作品の人気を支える大黒柱で間違いない。コンセプト上はバーナビーと合わせてのW主人公であり、劇中でもより若く優秀な彼を引き立てる「当て馬」として組まされながらも、その運命に反発し我がヒーロー道を(相棒を引っ張ってでも)往く姿はカッコよく、そしてつまずけば可愛らしいとも思ってしまう、そんな三枚目な主人公だ。
『幼稚な大人キャラで苦手』と評する人がいたが、確かにそういう部分もある。彼はおっさんになった現在でもMr.レジェンドというヒーローに助けられた幼少の想い出があり、物語の折り返し地点までは彼に大きな憧れを抱いている。ヒーローへの憧れを持つキャラはどれほどのことがあろうともくたびれることがなく、キラキラと輝いている。それがおっさんだというギャップがたまらない。
{netabare}そんなヒーローの要といえる特殊能力が減退する展開は流石に重い。「大人」として身の振り方を考え、田舎に置いた愛娘のことを想いヒーローを辞める決意をする。文句を多く書いてしまった2クール目だが、おっさんの哀愁漂う彼の不思議な魅力は哀愁漂うストーリーになったからこそ中盤から増していった。{/netabare}
{netabare}そして最終話の最後。虎徹は再びシュテルンビルドを駆ける。2部リーグという賊軍で復帰し、そして自ら、能力が減退しもう1分しか保たないことをアピールする『ワイルドタイガー・ワンミニット』として。
「いやー、家でゴロゴロしてたら楓に『カッコ悪い』って言われちまってよ……それに思ったんだ。自分の限界なんて決めるもんじゃねえって」
「この先、いつか力が無くなってみんなに馬鹿にされたとしても、いくら恥かいたとしても、死ぬまでヒーロー辞めねえ、しがみついてやる! いいだろ?1人くらいそんなカッコ悪いヒーローがいたって」
この台詞を言わせるための2クールだったんだなぁとしみじみ思う。{/netabare}

【総評】
歴代レビュー最大文字数を間違いなく大幅更新してしまったが、要はそのくらいのめり込み、誰かが嘗ての私のように、この作品を何か誤解していたり偏見を持っていたりしたらそれを正したいとも思った作品だ。
流石に「17年当時のアニメ最高傑作です」というような紹介をしてしまうと角が立つが、総合的には正に「日本版Marvel」と言わしめる王道の面白さがあり観る人を選ばない。
前半はストレートにヒーローとしての活躍やキャラクターを描写し、〆できっちりと敵を気持ちよく倒すという高い完成度を保っていた。後半はその小気味良いストーリーのテンポが落ちて煮え切らない展開も描かれるもののW主人公の内、名実共に寄る年波に勝てなくなるおっさんヒーローの悲哀に重点を置いたストーリー展開は、私のように粗を探すようなことをしなければ十分、感情移入して楽しめる。最終話も胸の熱くなるオチがついていた。
作画も10年代初頭にしては想像以上の出来映えだ。フルフェイスの新しいヒーロースーツで身を覆う虎徹とバーナビーには3DCGが確かに使われているものの違和感が少ない。細かい身振り手振りで2人の感情が顔が見えなくともよくわかり、癖の強いキャラクター同士による会話劇の妙をさらに引き立てている。アクションシーンも直線的な動きが多いことに目を瞑れば中々に豪快。欠点も話数を重ねるにつれて尻上がりに改善されていき、そういう意味では脚本と反比例していると言えなくもない(笑)
声優さんたちの演技も素晴らしかった。オカマのツダケン、ボクッ娘の伊瀬茉莉也、紅一点(?)の寿美菜子と粒揃い。そして何よりも主人公を演じた平田広明さんの若作りなおじさん演技が痛烈に刺さっていた。『ONE PIECE』のサンジ、『パイレーツ・オブ・カリビアン』のジャック・スパロウの吹き替えまで演ずるポピュラーでセクシーな男声は本作の人気──とりわけ女性人気──に大きく貢献したことだろう。
非凡たるアニソン系ロックバンド『UNISON SQUARE GARDEN』による前期OP『オリオンをなぞる』は本作序盤の軽快さを象徴しつつ、高いキーで歌い上げることで雄大さも表した良曲。オタクカラオケの常連になるのも頷ける。比べて後期OP『ミッシングリンク』はシリアス展開を暗示するかのような低いキーで歌われるものの、サビやAメロできちんと盛り上がる。
あらゆる観点から見ても隙が少なくキャッチーな良作だ。確かに「男×男なんて視聴対象外」とそっぽを向かれるような第一印象がネックではあるが、ヒーローの活躍を常に生放送し、ヒーローを広告塔にして事業を成り立たせるという斬新な世界観で生きるヒーローたちは老若男女の色とりどり。男なら先ずはブルーローズのお尻から追いかけて観ればいかがだろうか。するとその内あら不思議、いつの間にやら主人公のおっさんの方を愛でてしまっている、そんな作品である(笑)

投稿 : 2023/04/28
閲覧 : 213
サンキュー:

4

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