栞織 さんの感想・評価
4.1
物語 : 4.0
作画 : 4.5
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
ニュータイプ論の出てこないリメイク作品の佳編
映画館で見なかったので、悪いと思いますが視聴させていただきました。テレビシリーズでのククルスドアンの回は、見たと思いますがほとんど記憶にないです。旧テレビシリーズは断片的にしか覚えておらず、ムック本も現在手元にはありません。その上での感想です。
作画は好き嫌いが分かれると思いますが、非常に美しいと思いました。安彦監督が自ら修正されていると思われるので、どの場面でも乱れることはないです。ザクやガンダムが現在のメカニック調に仕上げてあり、しかしブライトが大きな無線電話を使っていたりと、オールドファンへのサービスも怠りない感じでした。
ただ要所要所に子供向けっぽい描写があるのが気になりました。他の方が指摘されていましたが、ドアンたちが作っている畑に対して、夕食の食事が妙に豪華というのは、見に来る子供たちががっかりしないようにという配慮からだと思います。しかし現実的ではなかったと思いました。けれども最近ガンダムに目覚めた子供たちには、良い作品だったと思います。反戦的な要素もありましたし、生活に根差したあらすじもわかりやすかったです。要するにこれは本当に、ガンダムエイジぐらいからファンになった子供たちが喜ぶ作品だったのではと思いました。そのため確かにオールドファン向けの描写もありますが、最近の重厚な大人向けのガンダムを期待している向きには、やや見当はずれに映った作品ではないかと思います。
そのあたり安彦監督の人間に向けるまなざしの優しさや持ち味のギャグの乗りについていけない人には、賛否が分かれると思います。ただ一言言わせてもらえば、アムロがドアンが隠したガンダムを発見するくだりは、テレビシリーズに準拠というよりは、昔の洋画によくあるパターンのドラマで、洋物に詳しい人なら先がわかるみたいなドラマでした。そのあたりは決して子供向けとは言えない作品で、監督やスタッフたちの努力の賜物だと思います。またホワイトベース内や連邦とジオンのやりとりも、やや古くはありますが、これもまた昔の洋画っぽく演出されておりました。
とにかく昔のシリーズ、それも忘れ去られたような回をわざわざ取り上げて劇場向け作品に仕上げたというあたりは、本当に評価されていいと思います。アムロをはじめとするキャラクターたちも、逝去された方も多い中で旧シリーズ調にまとめあげた声優さんたちの力も大きかったと思います。決して大作ではありませんが、旧テレビ版を見ていた方は見た方がいいと思う作品です。