「天才王子の赤字国家再生術(TVアニメ動画)」

総合得点
68.7
感想・評価
289
棚に入れた
916
ランキング
2016
★★★★☆ 3.4 (289)
物語
3.2
作画
3.3
声優
3.5
音楽
3.3
キャラ
3.5

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ネタバレ

蒼い✨️ さんの感想・評価

★★★★☆ 3.5
物語 : 3.5 作画 : 3.5 声優 : 3.5 音楽 : 3.5 キャラ : 3.5 状態:観終わった

要約すると、ニニムが可愛い。

【概要】

アニメーション制作:横浜アニメーションラボ
2022年1月11日 - 3月29日に放映された全12話のTVアニメ。
原作は、SBクリエイティブのGA文庫から刊行されているライトノベル。
原作イラストは、ファルまろが担当。
webサイト『マンガUP!』にて、
漫画家の、えむだの作画によるコミカライズ版が連載中。
アニメ版の監督は、玉川真人。

【あらすじ】

中世ヨーロッパっぽいヴーノ大陸は中央に巨人の背骨と呼ばれる山脈で分断されている。
大陸西部は17?の国が乱立していて大陸東部は覇権国家のアースワルド帝国が統一。
大国である超帝国は大陸全てを支配するために、
軍の往来可能な大陸北部の街道を抑えて橋頭堡にしておきたい。
その街道を所有しているのが大陸最北の貧しい弱小国であるナトラ王国。
そのナトラの次代の賢君として臣下や領民から敬愛されている名高い若き王太子が、
この物語の主役のウェイン・サレマ・アルバレスト。

このウェイン、病床の父王に代わって摂政として国政を仕切っていて、
仕事はいたって有能だが、本心では責任や義務が大っ嫌いであり、
国を捨てて逃げたがっていた。唯一、補佐官のニニムにだけは愚痴をこぼしては、
彼女から折檻される有様だった。帝国が大陸制圧に進めば、
どのみちナトラは帝国に屈するしかなく、帝国に併合されるのを前提に、
売国の下工作をしていたウェインだったが、想定外の事態が訪れた。

皇帝崩御により、再開されるはずだった大陸統一事業は立ち消え。
後継者を決めずに病死したことから、3人の皇子たちによる帝国の後継者争い。
そして、ナトラに駐留する帝国軍は本国に帰還することになった。
そのことで帝国軍が撤退したナトラを与し易しと、西隣のマーデン王国が攻めてきた。
軍事にも優れているウェインはマーデン軍を手玉にとり大勝利。

士気が上がりっぱなしのナトラ軍であるが、
それを横目にウェインは正直、めんどくさいと思っていた。
だが、理想の王太子を演じてるウェインは内心困り果てながらも、
家臣たちに本心が言えずに、状況に流されていくのだった。

【感想】

三国志演義や、田中芳樹の小説らが好きな人なら興味を引きそうな設定の作品。

海路で大兵力を動員するにも大規模な船団が無いので、
ナトラの陸路を通過する必要があるっぽいのですが、『銀河英雄伝説』の、
帝国と同盟の間をイゼルローン回廊とフェザーン回廊以外は航行不可能なのとは違って、
大陸外周の海路や、進軍には隘路で使えないけど商隊が通れる他の陸路があるっぽい?
寒冷地で農業振興が出来ない。寒い季節には港が使えないので交易で栄えることが出来ない。
逆に不凍港で栄えてる国が大陸西部にあって、交易船はそっちに行ってしまう。
と色々理由つけてフェザーンになりそこねた貧しい国なのがナトラの設定。

そんな辺境の弱小国。信長の野望で例えれば蝦夷から勢力を拡大していく。
主人公は十代の若さで売国して、さっさと楽隠居して楽しく余生を過ごしたいのに、
周りが許してくれない。なまじっか主人公が有能で運も絡んでしまって、
軍事や政治で想定外の大戦果を重ねてしまい、見た目もイケメンのために、
周りからの崇拝を集めてしまい、担ぎ上げられた神輿から降りることが出来ない。
そんな主人公ウェイン王子の嘆きのコメディは、後方勤務を希望しつつも、
最前線の戦場をたらいまわしにされている幼女戦記のターニャと若干被っています。

タイトルに“天才”なんてついていますが、弱小国が存続するには、
表裏比興の者と呼ばれた真田昌幸のように、地味な交渉で上手に立ち回る必要があり、
偉い人に取り入ったり、機智と弁舌を以て自国に有利な条件を相手国に呑ませていく。
この作品でも交渉事がメインであり、時には甘い餌で誘き出したり脅したりして、
交渉相手からの言質を取る。ウェインがハッタリと駆け引きで相手をペテンに掛けて、
外交的勝利を収めるのを楽しむ。そういう類の作品に見えました。

戦争でも交渉でも人の心理を読んで詰将棋のように勝利に導くのがウェインでありますが、
相手が想定以上にバカすぎたり偶発的なアクシデントでウェインの目論見が破綻したり、
運に状況が左右されることが多くで、「全て計算通り!」ではなく「どこが天才なんだ?」
と思えたりしますが、古来英雄とは実力だけじゃなくて“天運”に護られていて、
最後の最後で運に見放されて敗死した今川義元の例など見るに、そこをご都合主義ととるか、
そんなものだな!と割り切ってみるかで作品の印象が変わりますね。

人種や文化や宗教などで価値観の相違がある世界。
売国したいといいつつも、実はウェインには裏の目的があって、
ウェインとニニムの関係や身分差などを見てみるに、
多分、それに端を発した社会の既存の価値観への挑戦かなと思ってみたりします。

動機はなんであれ、キリスト教国の神聖ローマ皇帝でありながらも、
イスラム文化を愛したりでローマ教皇から2回の破門を受けた、
「王座上の最初の近代人」フリードリヒ2世みたく、
常識にとらわれない人物像を意識してウェインを形作っているのかなと思ったりで、
ラノベ的な粗や軽さがありながらも、学問的な要素を取り込んである作品だと思いました。

また、アニメーションとしてみるには、会話のシーンだらけで作画が楽をしてるなって感じ。
合戦のシーンは駒をつかった簡略図で戦況を説明しまくっていますし、
切り合いのシーンではアクションではなく、シュパパパパパと白い剣閃を、
敵の集団に重ねて直後にバタッと倒れるみたいに、動きが良くありませんね。

ヒロインで服装がエッチな副官のニニムとか妹姫のフラーニャとか、
女性キャラを中心にキャラデザ自体は良いとは思っています。

無能キャラを出すのにも、某領主の息子が一目でわかるバカキャラという例外もありますが、
帝国の第一皇子など目鼻立ちは整ってるものの人格の歪みから来る表情で愚者を表現したりで、
人間の中身をさじ加減で可視化している。
キャラデザはいいけど作画は、もう少し頑張りましょうというところですが、
丸投げした海外スタジオの能力もあるのでしょうか?
このアニメを作った座組では、これが精一杯なんだろなと思うと、
一部のアニメ会社は作画に優れているものの、その他の殆どの会社が苦戦している、
慢性人手不足のアニメ業界の現実をこの作品でも見てしまった感じです。

アニメでは原作の序盤をカットして第2話からスタートしたような作りであったり、
老将などの個別のエピソードをカットしてキャラや展開を単純化したりで、
原作や漫画などとのこまかい違いは色々あります。原作通りにやったほうが良いと思うのですが、
尺の都合やそっちのほうがスッキリわかりやすいなどの構成理由があったりするのでしょうね。

これもまた、原作とアニメのメディアごとの誤差の範疇なのでしょうけど、
視聴者が書籍で予め読んでいるのが前提な作りな部分があったりで、
シナリオに若干丁寧さに欠ける部分があるかなと思ったりでして、
悪くはないのですが、いま一歩だったり、もうちょっと頑張ってと思うところ頻出で、
惜しい!というのが、このアニメに対する総合的な評価でした。


これにて、感想を終わります。
読んで下さいまして、ありがとうございました。

投稿 : 2022/07/11
閲覧 : 200
サンキュー:

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