薄雪草 さんの感想・評価
4.3
物語 : 4.0
作画 : 4.0
声優 : 4.5
音楽 : 4.5
キャラ : 4.5
状態:観終わった
FAMILY × SPY = △□☆◇!?
対立する二国間の主導権争いと、時勢の緊張と不安を足もとに置き、目的を達成するためにウインウイン&ウインしあう三つ巴。
そんなフォージャー家の日常的非日常を、ほのぼのと醸し出すお話です。
ロイドとヨルの本業は、ほんのエッセンスばかりにとどめたうえで、「良い家族」を副業?にして、四苦八苦する姿が "FAMILYの実相" として描かれます。
アーニャの幸せは、「良い家族」を "つなぐ役割" を果たすこと。
幼児にはいささか重過ぎる?心がまえと、なにかと読みすぎる?異能力が、お話に空回りとすれ違いを引き起こし、おもしろ可笑しくナビゲートしていきます。
OPの演出にあった、ラッパがけたたましく鳴り、車がカッ飛ぶシーン。
まるで、じたばた、あたふたする3人の一心同体ぶりを、シンボリックに魅せているようで、案外と毎回、心地よかったです。
実は、設定が飛び過ぎていて「ファミリーイマージュへのフリークに過ぎるんじゃない?」というのが最初にありました。
あまりにも滑稽で、ナンセンスギャグで、アミューズメントに過ぎているという受け止めだったんです。
でも、どの回もキャラの魅力と楽しさにあふれているし、不思議と勇気だって貰えます。
たぶん、お話の実力は、まだまだこんなもんじゃないって信じたいです。
それに、原作が売れに売れているのも、現代気質に共鳴するエッセンスがきっとあるはず。
クスクスする可笑しさや、ドキドキする高揚感の裏側にあるものは何かしら?
それは、FAMILY×SPY=○○○○. みたいな "構文" で表せられるかもって思います。
~ ~ ~
孤児のアーニャは、ガーリー×マインドリーディング。
暗殺者のヨルは、コケティッシュ×フェアネス。
スパイのロイドは、ストイシズム×ダンディマナー。
そんな彼らが、砂上の楼閣に家族を演じることが、違和感なのか、それとも肯定感なのか、私にも受け止め方がいろいろあって定まりません。
なんだかんだとコミュニケーションを図ろうとする3人に、たっぷり共感できることもあるし、あんまり健気で痛くも感じます。
でも、私は、もっとラディカルな部分を考えてみたいと思います。
スパイとファミリーとを掛け合わせたら、いったい何が飛び出してくるのかと。
どんな家族だって、はじめのうちは、仮初めの契約で結びついています。
お互いの秘密はわざわざ持ち出さなくてもいいし、真実を打ち明けなくっても構わないのです。
その意味において、3人はすでに家族の入り口に立っているわけで、それは同時に、それぞれが "SPYでもある" ということでしょう。
SPYであり、FAMILYでもある3人のための "何か証のようなもの" があったらいいなと思いました。
~ ~ ~
コードネームは組織からあてがわれたものだろうし、もしかしたら、当の本人は本当の名前は捨ててしまったのかもしれません。
アーニャの姓も、いくつも遷り変わっているし、もしかしたら、彼女の名前だって、ハンナを下敷きにした愛称に過ぎないのかもしれません。
名前の出自さえ、赤の他人。
名前を呼び合うのも、架空の縁。
ならば、心が読めるアーニャは二人をどう呼んでいたでしょう?
{netabare} ロイドは「ちち」。
ヨルを「はは」。 {/netabare}
淡白にも思えるその呼び方ですが、アーニャにとっては、「良い家族」の絆を切り結ぼうとして身につけた、何より大切なルーチンなのでは?と思います。
つまり、"失望と希望とが混じりあう、とっておきのカード" 。
その呼び名に込められたアーニャの揺れる思いを、しっかりと受け止めなければいけないように感じます。
~ ~ ~
「SPY」を辞書に引くと "インテリジェントオフィサー" とか、"エージェント" という意味があって、ロイド・フォージャーは前者に、フランキー・フランクリンは後者に近い立場のようです。
実は、もう一つ、重要な語義があるんです。
SPYは「espy」という言葉と同じで、「 to look at carefully = よく見る、遠くにあるものを探し出す」という意味があるんだそうです。
"家族のイメージをしっかりと見る。"
"家族の価値をそれぞれに探しあう。"
そんな意味合いが、本作の通底にあるのかもしれません。
それなら、SPY×FAMILY = LOVE.
あるいは、FAMILY ESPY LOVE.
となれば、SPYこそ、FAMILYに似つかわしいスタンスなのかも、ですね。
そうそう。2期も楽しみです!