てとてと さんの感想・評価
4.3
物語 : 4.0
作画 : 4.5
声優 : 4.5
音楽 : 4.5
キャラ : 4.0
状態:観終わった
軍事や政治劇と和風伝奇を絡めたリアルロボットアニメ。完璧とは言えないが抜群の魅力あり
※作品データベース様より転載
【良い点】
正面から戦えば戦車に負けちゃうが市街戦や限定的な閉所戦闘では活躍する等、リアルロボットアニメの極致。空は飛べない。
古代日本の歴史伝奇の因縁と、ボーイミーツガール、テーマは現代(1998年?)の日本人のあり方問う政治劇。
和テイストな美しいOPとEDや、能や狂言?などの伝統芸能を、現代政治軍事ドラマに融合させた、独特な雰囲気。
OPの能舞台で世界観に惹かれるし、EDでミハルが弓を引き絞り放つシーンも非常に美しく印象的。
和歌形式の予告も非常にポエット!雰囲気にグイグイ引き込まれる。
作画は1998年なのを考慮すると最高峰。2クールアニメなのにOVA並みクオリティー。
呪術的なロボット・骨嵬(クガイ)のオカルトっぽさと、硬派に拘り抜いたミリタリー描写が合わさりロボットアニメとして見応え抜群。
見所は戦車をワイヤー駆使した三次元的機動で圧倒する戦闘シーン。初視聴時、血が滾った記憶が。今見返しても色褪せていない。
他にも輸送機からぶら下りながら戦闘機撃墜など、燃えるシーン多々。
兵站や指揮通信などの後方支援まで含めたミリタリー描写が素晴らしい。その最中に二足歩行兵器が自然に組み込まれる渋い世界観。
終盤の戦闘が、日米の命運を決める決戦を二足歩行ロボに託す上での舞台設定も上手かった。
キャラデザも90年代としては洗練されている。
ストーリーは主人公のユウシロウとヒロインのミハルとの、時代を超えたボーイミーツガールが、
互いの存在に惹かれたり、それぞれのアイディンティティーを巡る旅路の果てに、歴史伝奇的な謎に迫っていく。
沙羅鬼(ガサラキ)、骨嵬(クガイ)、操縦者の嵬(カイ)に纏わる哀しき戦いの宿命が、
現代の主人公とヒロインのドラマと、ふたりが与り知らぬ政治劇へと繋がっていく…
歴史伝奇サスペンス、ボーイミーツガール、政治劇、どの軸も非常に面白い。各要素複雑に絡みながらスケールのでかい作劇だった。
政治劇に関しては思想の是非は置いといて、思考実験としては色々考えさせられる。
キャラクターはユウシロウもミハルも地味なんだけど、宿命に翻弄されつつも頑張った良い子で好感持てる。
ミハルちゃんはガンダムXのティファっぽいミステリアスガールで可愛かった。ついでに妹ちゃんも。
自衛隊の安宅大尉らお姉さんたちもステキ、ユウシロウが弟的に可愛がられてる感が萌え。
ザビ家っぽい豪和兄弟、苛烈なる憂国の士・西田さんなど政治劇やってる男たちが軒並み存在感あり。
後半も華僑のリーダーとか結構カッコよかったり。
【悪い点】
主人公ヒロインどちらも地味。
あまり感情出さず、折角のボーイミーツガールや伝奇絡みの宿命云々をドラマに活かし切れてなかった。
過去編までがボーイミーツガールと伝奇浪漫のピークだった感。
以降難解な政治思想劇に移行、それなりに面白くはあるんだけど、ユウシロウが蚊帳の外気味。ミハルのヒロイン度も地味。
ロボットアニメとしても地味さに拍車が掛り、終盤の日米決戦までは派手な盛り上がりどころが少ない。
各要素を混然一体で進行、集中して見ないとストーリーが分かりづらい構成。
好きで見ていると問題はないんだけど、とっつき難いのは否めない。
歴史伝奇サスペンス、ボーイミーツガール、政治劇、どの軸も中途半端。
政治劇というか日本人のあるべき姿云々な思想劇に傾き過ぎている。
西田さんの思想は美しくはあるんだろうけれど、共感は無理。
和の伝奇と日本人論も、あまり噛み合っていない。
一番の主役であるべきユウシロウが西田さんらの思想劇と殆ど無縁ぽいためか、別々のドラマが進行して交わらなかった印象。
日米の経済覇権?を賭けた?抗争も、1998年時点でさえ時代遅れ感。
ラストが唐突でイマイチ。
和の伝奇ファンタジーを強引に幕引きした感じだけど、さっぱり分からん。
コンセプトは素晴らしかったが、結局2クールでは各要素纏めきれなかったか。
【総合評価】8~7点
高橋良輔監督の意欲作。とっつき難く成功作とは言い難いものの、欠点を補って余りある魅力がある。
25話では尺不足だったのか、それとも元々纏めるのが難しい題材だったのかは、分からない。
評価は良い寄りの「とても良い」
【余談】
2016年のP.A.WORKS制作アニメ「クロムクロ」はガサラキからの影響感じる。
和風アーティファクトなロボット、主人公ヒロインが過去の歴史伝奇の因縁、中盤に過去編。