てとてと さんの感想・評価
3.4
物語 : 3.0
作画 : 4.0
声優 : 3.0
音楽 : 4.0
キャラ : 3.0
状態:観終わった
無人島で少年がバイクで影巨人から逃げる?ラトビアの若手監督が一人で制作した75分の無声CG映画
2019年のアヌシー国際アニメーション映画祭で新設された革新性のある長編アニメーション作品に贈られる「コントルシャン賞」受賞作品との事。
当時25歳のラトビア人監督が3年半かけて一人で制作。(ラトビアの新海誠と呼ばれているらしい)
無人島?に一人漂着した?男の子が、謎の影巨人(ゆーっくりと確実に追ってくる、怖い)からバイクで逃げつつ、美しく幻想的な島を冒険する。
【良い点】
良くも悪くも日米などの商業娯楽作品とは異質な作家性?哲学性?を感じさせる。
セリフが無く、主人公の心情や設定やストーリー解説など皆無、そこをセンスの良い映像美やBGM環境音で魅せていく。
理屈やキャラクター性を排し、純粋にアニメーションの力で表現する意欲作。
「ワンダと巨像」に影響受けているらしく、MAPを探索しながら冒険する系のゲームめいた趣がある。
自分はその手のゲームに疎くてよくわからないけれど、喋らず感情も見えない主人公も含めて、何となくゲーム的な感じはする。
良い意味でゲーム的。ゲーム的な雰囲気をアニメーションに落とし込めている。
影巨人はこの手のゲームで移動強要するギミックと取れる。(詳しく知らないが。古い例えだけどファミコンの「妖怪道中記」の地獄火みたいな。アニメだと「Angel Beats!」終盤にユリ達を襲う影に相当?ABもゲーム的だし)
ここに留まるんじゃねーぞ、さっさと移動せい!的な、神(製作者)の意思の具現化。
それはセカイの理であり、そこに理由なんぞ無い。そんな理不尽さを好意的に楽しませるのが本作の肝と見た。
他にも「ファンタジックチルドレン」の閻魔も連想した。捕まった際の描写とか、理不尽に追跡してくる影なところが似ている。
作画は「リアルタイムレンダリング」なる技法を活用したカメラワークが素晴らしく、無人島の幻想的な環境を美しくダイナミックに表現。
多彩な自然環境で飽きさせず、次はどこ行くんだろうとワクワクさせる。
BGMというか環境音のセンスも良く、無声アニメながら雄弁に作品世界の魅力を伝えていた。
バイクアニメな側面も。
主人公のバイクへの信頼感は「スーパーカブ」の小熊ちゃん並み。
バイクがあれば影巨人に追われたって、謎の状況で島彷徨ったって、雪崩に追われて海に飛び込んだってなんとかなる!
リアリティーはともかく、バイクに乗るって楽しそうだなと思わせる魅力はある。
リアリティーの無さ(簡単に起こせたり、雪原普通に走れたり、雪の急こう配を押して歩けたり)はアニメ的なファンタジーとして許容範囲。
(けみかけ氏と同意見)
【悪い点】
尺が長すぎる。
少年がバイクで影巨人から逃げる以上でも以下でも無い内容にしては長い。
多彩で神秘的な自然や動物との交流はあれど、ちゃんとストーリーになっていないので、飽きる。
主人公に感情を感じない。
意味不明かつ危機的状況でも喜怒哀楽動かず淡々としている、ゲーム主人公ならばよいが、これアニメ主人公なので。
他人が操作するゲームキャラを淡々と見せられている感じ。
キャラクター性排除して作家性や哲学性込めた?のは良い点と思われるが、自分のような浅薄なアニオタには難しかった。
哲学性?意匠に関しても、よくわからない。
ラストが後味悪くかつ意味不明なのも悪印象。
結局どういう事だよ…?
【総合評価】5点
一人制作アニメとしては相当なハイクオリティーなのは確か。
ただ正直なところ、視聴者側のセンスや許容度次第な力作だなぁと。
ぶっちゃけ周囲の評価次第で名作とも駄作とも評されるタイプ?
どちらにせよ、こういう主流から外れた力作は応援したいところ。
評価は普通寄りの「良い」