「この世界の片隅に(アニメ映画)」

総合得点
82.9
感想・評価
699
棚に入れた
3101
ランキング
347
★★★★★ 4.2 (699)
物語
4.3
作画
4.2
声優
4.2
音楽
4.0
キャラ
4.2

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お茶 さんの感想・評価

★★★★★ 5.0
物語 : 5.0 作画 : 5.0 声優 : 5.0 音楽 : 5.0 キャラ : 5.0 状態:観終わった

「この世界の片隅に」に垣間見る日本人の美しさ<更新>

2022/07/03 初投稿

どんな世界の片隅にも自分の居場所はあるんだよ、というテーマをもとに戦時中の日常を描いた作品。

戦時中というテーマをできるだけ重く堅苦しくないように演出している印象を受けた。
丸い輪郭で描かれたキャラクターと、淡い色彩で描かれた作画、登場人物の苦しい中での健気に明るく振る舞う姿。

間の抜けた純粋な女性を主軸に据えた物語は朝ドラのような雰囲気をもたらしていました。
そのような印象を持たせながら、苦しい戦時中を描く。

縁談がもちこまれたり、義姉との関係や夫との生活を、ある時は明るく、ある時はリアルに描かれていました。
どうしようもない現実に打ちのめされながらも生きる軌跡。
まるでドキュメンタリーのような、本当にあったノンフィクションな映像を魅せられている感覚でした。

以下 更新

改めて本作を考えてみると、世界唯一の被爆国である日本ができるだけ戦争を勧善懲悪のような視線で描かずに、戦争の悲惨さを表現することは作者の心理としても、フィクションのスペクタクルを期待する物語としても容易いことではないと鑑みます。どのような意図で作られたのか…

調べてみると「原爆作家」と見られることに抵抗を感じた作者は、「原爆以外の死、戦争全体にもう1回向き合わなければバランスが取れない」との思いにより、次作として激しい空襲を受けた広島県の軍都・呉を舞台に戦争の全体像を描いた本作品に着手する[2]。単行本下巻のあとがきでは、作者自身が「『誰もかれも』の『死』の数で悲劇の重さを量らねばならぬ『戦災もの』を、どうもうまく理解出来ていない」ことを背景として、作品を描く中で、「そこ(戦時中)にだって幾つも転がっていた筈の『誰か』の『生』の悲しみやきらめきを知ろうとしました」と記している[3]。」とwikipedia引用。

戦時下の日本の文化や行動様式について書かれた書籍「菊と刀」がある。

「文化の伝統があるところには、戦時の慣習がある」
「精神が物質を制する戦いに勝利する」

これらは戦争に勝つための檄であり大義名分でもあるが、精神が物質を制するという言葉で奮起できるのも日本人の価値観であるとも思われる。
精神というのは何を指しているのか…本書では恥や恩や美という道徳観で形成されていると語られてた。
これらは日本人なら馴染み深いのでわざわざ自分が言わずとも感じている共通文化だと鑑みますが、そのような側面はあると考えさせられた。

本作にも共通点が垣間見られた。
戦争や震災時などの危機の中で日本人の道徳観からくる規律性や、心遣いは諸外国から観ても類を見ないと言う。
それが本作全てに通じるとは言えないが、戦争時における慎ましくも懸命に生きる姿は、ある種の美しさも覚えた作品でした。

投稿 : 2023/10/09
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