てとてと さんの感想・評価
3.8
物語 : 3.0
作画 : 4.5
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 3.5
状態:観終わった
曖昧さを許容する成長劇。沖縄の海のような大らかな視点で楽しみたい
※作品データベース様で投稿したレビューを転載、若干加筆修正
P.A.WORKS制作の、沖縄の水族館を舞台にしたお仕事アニメ&青春と交流劇。全24話。
沖縄の水族館で働く夢を持つ少女と、東京(出身は岩手の盛岡)で挫折したアイドルが交流するガールミーツガールもあり。
【良い点】
沖縄という土地柄と水族館ならではの海の生き物、美しい風景を、綺麗に表現した良作画と良楽曲。キャラデザの可愛さも申し分ない。
声優陣はなにゃこもとい伊藤美来氏が主演な時点で自分的に贔屓目に見てしまう。(ろこどるファン)
女の子の可愛さと、水族館で働く女の子の日常系寄りお仕事アニメとして、良作画も含めて2クール安定している。
うどんちゃん他のサブキャラ含めた曖昧で良好な人間関係もあってか、肩肘張らずに心地良く視聴できた。
がまがま組を中心にしたキャラクターの良さ。
全員丁寧に掘り下げていたとは言い難いが、くくるの成長の舞台としての良き雰囲気は彼ら彼女らのお陰。
水族館をテーマにしたお仕事アニメとして興味深かった。
作風としては一本の明快な成長目標を示さない(示せなかった?)、曖昧(ステレオタイプで申し訳ないけれど)、沖縄的?な感じ。
夢を持つ少女と夢を失った少女が出逢い、交流し、互いに影響しあって成長する…
という基本線が、明快に機能したとは言い難い曖昧な物語。
けれど、迷走する彼女たちを、沖縄と水族館に関わる人々(お客たちも)そしてこのアニメの雰囲気全体で、温かく許容していた。
曖昧さが許容される緩い(意地悪く見ると雑)な脚本から、視野が狭かったり、自分に合っていなかった夢との折り合いを、いつの間にか
付けて、一歩ずつ歩んでいく。その歩みに成長という明快な正解は求めなくてもいい?
海咲野くくるちゃんの視野の狭さという欠点は結局最後まで成長しなかったかも?
前半にティンガーラから来て意識の高さ故にくくると対立する南風原(はるばえ)さんとも、結局ちゃんと向き合えたとは言い難い。
南風原がシングルマザー云々な事情を知り互いに歩み寄る展開は、あくまでも個々人の感情と共感に過ぎない。
でも別にそれは悪いことではあるまい。
後半のブラック上司な副館長との確執も含めて、くくるに色んな視点を提供、成長の糧にしつつ、糧に出来ていない部分も多い。
全部を糧に出来ていないのは脚本が雑だからかも知れないが、あえて好意的に見ると、別に全部を糧にしなくてもいいと思う。
くくるちゃんはキャラクターとしては優等生ではないけれど、むしろそこが良い。
迷走するくくるちゃんは間違いなく可愛かったし、応援したくなった。
前半の潰れかけの水族館を守ろうとしたひたむきな情熱と、後半の部署違いで燻った末に得た経験も、決して無駄ではなかった。
2クールの前後編の構成に関しても、巧い脚本ではないけれど、これはこれで人生ドラマ?
2クールの曖昧なドラマで、少女たちはちゃんと大切な何かを得た…はず。
ふたりとも頑張ってたし。
【悪い点】
良い点と裏腹というか、良い点も強いて贔屓目に見たこじつけの可能性大なのは承知。
作品全般の確固としたテーマというか、信念が見えづらい。
2クール安定していたが低空と言わぬまでも中空飛行のまま終了。
くくるの成長劇としては自分は好意的に見るけれど、終始迷走した感はやはり拭えない。
後半の「よみがえる空」的なやりたい仕事じゃない展開を、曖昧に話数重ねていくのは、最終的に得るものがあった(と好意的に見る)
とは思うけれど、分かりづらいというか、2クール使っての効率が悪い。
フウカに関しては、元からアイドルに向いてなかったんだろうけれど、ちょっと分かりづらい。
後半ふたりの交流が乏しくなっていくのも惜しい。
南風原との和解がシングルマザーだった事情で曖昧に共感させる脚本も、(他論客の方の仰る通り)イマイチ。
総じて2クールを大らかな視点で寛容に見ないと、持ち味が分かりづらい作品だったと思う。
分かりづらいのはマイナス点。脚本に工夫の余地はあったはず。
その他主要キャラの掘り下げも浅い。何人か良い線行っていたが、24話もあるならばもう少し配慮してほしかった。
特に副館長はイジワルなブラック上司な悪印象を挽回出来たとは言い難い。彼に関しても配慮が欲しかった。
(キャラ評価減点)
おじいの全容とか、キジムナーの正体とか、がまがまのフシギ体験とか、意味深な設定を全然生かせていないのも難。
【総合評価】6~7点
真面目に脚本を採点すると低評価やむなしだけど、2クール確かに楽しめたアニメであった。
本作に限らずP.A.WORKS作品はテーマや目標が曖昧で大らか(雑脚本)なのを、アニメーションの総合力で
見せてくれる、ある意味贅沢で無駄な佳作が多い気がする。(色づく世界の明日から、グラスリップなどなど)
無駄で曖昧な佳作を贅沢に作るアニメは捨て難い。
評価は普通以下が妥当であろう事は承知で「良い」
【余談】
くくると副館長、中の人ネタで同時期放送の「takt op.Destiny」ではベストパートナーであった。
副館長ももっとなんとかならんかったのか…