薄雪草 さんの感想・評価
4.1
物語 : 4.0
作画 : 4.5
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
風は何処へと立つだろう。
堀辰雄×堀越二郎×宮崎駿のミキシングムービー。
リスペクトであり、モンタージュであり、オマージュでもあります。
誰への視点に寄せて視聴するかでレヴューが定まるでしょう。
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通底するのは、美しさへのアタッチメント。
ロジックの検証であり、デザインへの探究であり、レコードの達成であるのでしょう。
一方で、両の肩に圧し当てられるのは時代の要請。
でも、二郎の心が開襟できるのはカプローニへの羨望なのです。
飛行機が叶える美しい世界への兆しを、手放すことはできないのです。
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1920年の様相は、どこか現代に通じています。
病気が蔓延し、(核)戦争さえ想起されます。
経済は行き詰まりを見せているし、社会不穏はニュースに事欠きません。
これで大震災が起きようものなら・・・。
菜穂子の息苦しさは、いつか私の胸のつかえとオーバーラップするのです。
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生きねば。
先人は、平和主義を掲げ、戦争を放棄すると憲法に誓ったのです。
敗戦は、戦力は持たない。交戦権は認めないと9条に宣ったのです。
過ちは繰り返しませぬと、広島、長崎、沖縄の礎に刻み付けたのです。
美しくありたいとふるさとを愛するプライド。
自由と平和を求めたいと、世を謳うフィロソフィー。
朝な夕なに技能を磨き、日夜に勤しんでいるバイタリティー。
私たちは、そうして、どうしても生きねばなりません。
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すばらしい技術は戦争に供与され、平和に活用され、人の暮らしに還元されます。
世相には停滞もあれば、風が立つときもあります。
ひとり一人の意思の力が、今もこれからも、未来の子どもたちから望まれるでしょう。
{netabare} 「政治家たちは子供たちのことにはまったく無関心です。でもいずれの日にか人道支援の政治問題化ではなく、政治が人道化する日がやってくるでしょう」
『オードリー・ヘップバーン物語』集英社、1998年5月4日。{/netabare}
私も、そう受け止めたいと思っています。