てとてと さんの感想・評価
4.1
物語 : 4.0
作画 : 4.0
声優 : 4.5
音楽 : 3.5
キャラ : 4.5
状態:観終わった
異世界国家運営でライトノベルの痛快さが際立つ快作
怠惰な小国の王子が戦争や外交で無双しまくる戦記系。
先行する「現実主義者の王国再建記」が真面目・内政寄りに対し、こちらは痛快娯楽・外政寄り。
【良い点】
全面的に良い意味でライトノベル、分かり易さと楽しい娯楽小説に徹している。
チート級の有能主人公が難題難敵を不敵な態度で切り抜ける、匙加減間違えば悪い意味のなろう主人公だが、嫌味を感じさせない。
敵を無能にする作劇もコメディー調に処理したり、虎口をハッタリで綱渡りしたり、コミカルとシリアスの配分が絶妙。
娯楽作品として適度な政略要素で先を読ませず、軽妙に切り抜けていく痛快感。
主人公無双も実際有能なので説得力がある。
御都合無双する安直さも、主人公も計算違いで内心焦る展開多用する事で面白さに転嫁が上手い。
深読みし過ぎて望まぬ方向に向かいあたふたしたり、そこから痛快な切り口で解決したり。
テンポ抜群でライブ感のある展開、大局的にはトントン拍子だが個々の場面では苦慮も多い、そこから毎話ドンデン返しを見せ飽きさせない。
終盤は主人公より格上の強敵たちが立ち塞がるため、相応の緊迫感もある。
1話はスロースターターだが2話以降は回を重ねる程に面白味が右肩上がりだった。
国家関係や情勢が非常に分かり易い。
主人公の思惑を頻繁に心の声でコミカルかつ分かり易く伝えたり、お留守番してる妹ちゃんへの授業形式など配慮が丁寧。
主人公の脳内算段はコメディー寄りで楽しいし、
頻繁な授業シーンは視聴者への解説と、フラーニャ王女の可愛さや聡明さを印象付ける一石二鳥。
これが終盤の妹姫の大活躍の布石にもなっている。
主人公ウェイン王子の魅力が高い。
一歩間違えればいけ好かない天才野郎だが、実力と人柄が伴っていて間違いなく英傑だった。
国を売ろうとしているとんでもない奴と思いきや、家臣や民草そしてニニム初め大切な者達は決して裏切らず、不本意ながら奮闘する。
信念や行動原理が首尾一貫、愛するニニムの為だと伝わる、ニニムの為なら蛮勇も辞さないところもカッコいい。
ヒロインが被差別人種である設定を、主人公の行動原理と英雄的行動の原動力にしている点も痛快。
敵地でスタンドプレイも多く、痛快な娯楽戦記と時折ギャグめいた展開も。
そこが展開の意外性に繋がり終始面白い主人公だった。
補佐官のニニムも非常に可愛く魅力的。高木さんとエミリアたんを足して割らないくらい可愛い。
互いに分かり合っている、良妻ヒロイン。
他にも元学友の皇女、妹姫、亡国の王女などヒロインが軒並み魅力的。
聡明さも各々背負った野心や信念もあり、単純に可愛いだけではない。
女の子のキャラデザも非常に可愛い。2022冬上位だった。
絵的に可愛いのもキャラの魅力の上で重要。ニニムちゃんは特に横乳が絶品。
味方も敵も有能も無能も、各々の立場から魅力的に描けている。
有能なキャラよりも、無能を印象的に描く方が難しい。
本作は無能なカマセでも主人公の計算狂わせる存在感見せたり、各々の意地があるなど、決して捨てキャラではなかった。
【悪い点】
タイトルと本編内容に齟齬がある。
赤字国家再生術だと内政系を想起するが、本作は外交や外征なので。
1話は陳腐な御都合無双に見えて微妙。1話切りされる恐れあり。
好意的に見れば1話時点で娯楽性重視というメッセージを出していると取れるが。
厳しく見ると御都合主義や底の浅さはある。
とはいえ本作は娯楽作品であって、あまり欠点とは言えない。
やや気になるのは、主人公のハッタリに無理を感じる場面がある。
謎の奇病云々は流石にちょっと苦しいと思った。
【総合評価】8~7点
娯楽性の高い戦略戦術英雄戦記。
プロのライトノベル作家の確かな力量を感じる良作。
無双や御都合主義自体が悪いのではなく、要は作者の匙加減だと分かる。この作品は非常に巧い。
是非続編が見たい。
評価は「とても良い」