キャポックちゃん さんの感想・評価
2.6
物語 : 2.0
作画 : 2.5
声優 : 3.0
音楽 : 3.0
キャラ : 2.5
状態:観終わった
それなりに良くできてはいるが…
【総合評価☆☆☆】
現代日本に転生した諸葛孔明が、売れないクラブ歌手だった英子に策を授けて人気者に育てる物語。突っ込みどころ満載だが、うるさいことを言わなければ、それなりに良くできた娯楽作だろう。ただし、2つの点がどうしても気になって、私はあまり楽しめなかった。
第一に、孔明の授けるのが、現実にはうまくいきそうもない愚策であること。三国志の故事にこじつけて話を作っているが、客の方向感覚を狂わせてフロアから逃がさないようにしたり(第2話)、ラップ勝負でKABE太人を立ち直らせたり(第5話)するエピソードは、どう考えても無理がある。第7話で登場する3つのアイテムが後に役に立つことを、孔明はなぜあらかじめ知っていたのだろう? もっとも、三国時代の孔明が現代日本の風俗慣習を熟知していたくらいだから、時空を超えて転生した際に予知能力も身につけたと考えればつじつまは合うが…。
より重大なのが、第二の問題である。ミュージシャンの成功を描くアニメや映画では、音楽パフォーマンスを直接表現しなければならず、小説やマンガのように言葉でごまかすことができない。ところが、本作の場合、他の歌手と比較されるシーンで、英子の歌は(悪くはないものの)歌唱力も楽曲も特に傑出しているとは言えず、聴衆が英子になびく過程に説得力がない。
この点は、過去の優れたアニメと比較するとはっきりする。『NANA』の初ライブシーンでは、歌唱・演奏・楽曲の質がいずれも高く、初めてライブを聴いた客が熱狂するのも納得できる。『覆面系ノイズ』のヒロイン・ニノが、思い人に届けとばかり苦しそうに声を張り上げる姿は、粗削りながら共感を呼ぶ。『涼宮ハルヒの憂鬱』の学園祭ライブで、ハルヒが文字通り熱唱し、長門が余裕綽々でギターの超絶テクを披露する好対照ぶりが楽しい。『ゾンビランドサガ』のライブは、自分が存在する意味を問いかける重みがある。『Wake Up, Girls! 七人のアイドル(劇場版)』ラストの雪降る舞台、金も展望もないまま制服姿で7人が懸命に歌い踊る光景は、感動的だ。
パフォーマンスの裏付けが感じられない以上、現代の音楽業界に古代の軍事的な戦略が応用できるというアニメ『パリピ孔明』の基本プロットは、かなり無謀である。私の個人的な好みを言えば、第7話で七海が木箱を叩きながら歌うシーンだけは素晴らしいのだが。