てとてと さんの感想・評価
3.6
物語 : 3.0
作画 : 4.5
声優 : 3.5
音楽 : 4.0
キャラ : 3.0
状態:観終わった
超豪華な佳作。作画は美麗だけど、ボーイミーツガールで肝要な交流掘り下げが弱い
100分ほどの劇場アニメ。廃墟と化し謎の泡に包まれ重力異常起きている東京を舞台に、少年とヒロインが障害物競争みたいな競技する。
【良い点】
世界観が凄い。水没、謎の泡や異空間の渦?ビルや電波塔の鉄骨や建材が重力異常で宙に浮いている…
ファンタステックな舞台設定だけで引き込まれる。
作画が素晴らしく、奇妙奇天烈な廃墟や、廃墟を縦横無尽に駆けるアクションは外連味抜群。
ヒロインのキャラデザも可愛い。
ストーリーは分かり易く、主軸の人魚姫モチーフのボーイミーツガールもまずまず。
ウタちゃんは泡から生まれたばかりで無垢で無知、野生児みたいな可愛さ。
主人公ヒビキと互いに仄かに惹かれ合っていくラブコメが微笑ましい。
グループの姉ポジなマコトに少し嫉妬してたり、分かり易く可愛かった。
ヒビキに触られると泡になってしまう体質?と、競技の過程で手を繋がざるを得ないシチュエーションを効果的に活かした見せ場も良い。
泡は何なのか?ウタは何故生まれたのか?敵の企業は一体?
云々の細かい外部設定には踏み込まない適当さはむしろ悪くない。
気にはなるが、物語的にどうでもいいので。
本作の分類はセカイ系ではないが、物語の見せ方としてはセカイ系寄り。
少年少女の関係性を重視して、世界観は舞台装置と割り切る、自分好み。
敵チームが心持たぬAIなので、この手のスポーツ物にありがちなライバルの嫌味が皆無なのも良い。
また、ウタが無から感情や愛を学んでいくのと、心持たぬ敵AIを対比させている。
作劇を単純化してボーイミーツガールに集中させつつ、人魚姫の無償の愛をより分かり易く描いた。
主演のふたりは本職ではないが問題なし。
楽曲面は主題歌がテーマに沿っており、音楽を作劇に活かすなど手堅い。
【悪い点】
手堅く纏まってはいるが、淡泊。あまり盛り上がらず。
主要キャラクターも悪くないキャラ付けではあるが、仲間との交流掘り下げが薄く良きチーム感が乏しい。
リーダーがヒビキのジャンプ台になった以外はメンバー活躍してない。
敵勢力がAIなのは不快さが無い反面、盛り上がらない要因。
またラストレースがマコト姐さん攫われてというのもマコトには悪いが微妙。
「トライブナイン」とかで定番の展開だが、淡泊。
空中廃墟の障害物競走に関しても、映像は素晴らしいが、競技としての工夫やハラハラ感はそこそこ。
「プリンス・オブ・ストライド オルタナティブ」みたいな架空障害物競技系だけど、面白く魅せるには映像以外の要素、チームワークや戦術などが必要。
主人公もヒロインもコミュ力低いのと、あまり内面の掘り下げが無いので、感情移入しづらい。
ウタがゼロから色々学び恋をするのは良いが、最初と最後以外の途中経過が不十分。
少しずつ感情が芽生え、好きな男の子と触れたら消えてしまう、おいしいヒロインだったのに、殆ど活かせていない勿体無い。
ヒビキの境遇やウタとの出会いも弱い。
音楽を軸にした関係も、印象に残るには弱かった。
総じて主軸のボーイミーツガールが弱い。主人公ヒロインのキャラが弱い。
何となく影響を感じる新海作品「君の名は」「天気の子」のヒロインの魅力と比べると差が歴然。
ボーイミーツガールは両方大人しいと地味になりがち。
(この話題でガサラキを引き合いに出すロボットアニメ好き)
人魚姫の寓話を前面に出し過ぎて、些か説明気味になってしまっているのも惜しい。
人魚姫モチーフなのは初期の描写で十分分かるので、以降は映像や情緒的な悲恋で見せてほしかった。
本作に込められたテーマや意匠に関して、他論客の方々が素晴らしい考察や分析をされていて、そういう部分を汲み取れるか否かで評価が変わってくると思われ。
自分は専ら重力異常廃墟レースとボーイミーツガールの二本軸しか見ておらず、それ以外のテーマは重視出来ず。
現代社会に対するメッセージ云々は正直興味が無い。
自分のようなタイプの視聴者にも否応なく伝わる程のパワーは無かった気がする。
【総合評価】5~6点
世界観とアニメーションのパワーで水準以上には楽しめたものの、内容は平凡寄り。
駄作ではないけれど、超豪華な割には佳作止まり。
評価は「良い」