nyaro さんの感想・評価
3.4
物語 : 3.5
作画 : 3.0
声優 : 3.5
音楽 : 3.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
人間と機械…グリフォン戦がテーマからぶれて台無しでした。
さて、本作原作は1988年で、言うまでもなくガンダムを祖とするリアルロボット系の作品です。戦争用だけではなく産業用の機械からの発展として位置づけられていました。また、OS…コンピュータ制御も大きなテーマでした。OSって、一時みんな言っていましたが、スマホ世代になってまた聞かなくなりましたね。
パトレイバーは土木機器としての面とコンピュータの発展としての面の両方を設定に取り込んで、ヒト型ロボットがなぜ必要か、機械を操縦するとは?整備、OSなどに焦点をあてて、かなり真面目にSFとして取り込んでいます。SF魂が感じられる作品だと思います。
で、もう一つ警察組織としての落ちこぼれ部隊で、パトレイバーの活動により街が破壊されてしまうという問題を抱えていました。
アニメ、本作の最大の不満です。原作の見事なカタルシス。{netabare} それは冒頭からずーっとレイバーフェチの野明が、最後に圧倒的性能を誇る、レイバー規格を無視して強さを追求した黒いレイバー「グリフォン」に操縦技術で勝つことです。新型レイバーで歯が立たなかった野明がレイバーを乗り換えて、生身を晒しながらグリフォンを投げ飛ばすところです。
さらに、レイバーの専門家が「性能が劣るイングラムでグリフォンに勝つためにはこの戦い方しかない」と言うところです。この瞬間ヘラヘラしていた内海が呆然とします。この感動はすごかったですね。
なんか結構面白いけどあまりパッとしない話だなあ、と思っていていましたが、野明のイングラム愛がすべて報われた瞬間でした。それを爆弾という別の理由を作ってしまった
{/netabare}
これが道具…従来の機械を操る技術とは?整備とは?道具に対する愛とは?コンピュータ時代の道具との付き合い方は?などのテーマになっていました。銃を嫌うのも野明の機械に対する信頼でした。このテーマこそ野明というキャラ造形の根幹だったと思います。これを変えてしまった。いや、変えたとまではいいませんが、それがすべて報われるグリフォン戦を大きく変更した。
そもそもグリフォンサイドがずーっと作品の伏線としてありました。熊耳の過去の件もありました。が、そこも消えていました。ここをなぜ変えたのか?40話以上あるので十分再現できたと思うのですが。
全体としてバビロンプロジェクトの怪獣も省いたこともあって、敵の強さが不十分で全体としてぬるーい、ほんわかした雰囲気が漂うアニメになってしまいました。
野明の操縦技術と機械との関係みたいなテーマは、最後のほうで解消されますし、街を壊す、ということについては原作よりも丁寧に描いていました。
ですが、肝心のグリフォン対イングラム。この満足が原作に比較するとほぼゼロです。テーマも台無しです。本当に残念でした。
面白くないとはいいませんが、パトレイバーが映像作品としてあまり評価されていないのは、このTV版のせいだと思っています。映画のパト2は映画作品としては良かったですが、すくなくとも野明とイングラムという機械との関係についてはカタルシスが不十分でした。
1989年ですから、アニメは子供向けの時代からまだ脱していなかったのかもしれません。分かりやすく企業の陰謀と伏線を省いて、かなり迫力があるバビロンプロジェクトの怪獣はカットして、テーマとしてのイングラムと野明の部分を爆弾に置き換えたのかもしれません…が、残念です。