カリウム さんの感想・評価
4.1
物語 : 4.0
作画 : 3.5
声優 : 4.5
音楽 : 4.5
キャラ : 4.0
状態:観終わった
トラウマアニメ(ではない)
はじめに、結論から言いますと、この作品は粗削りであるが良くも悪くも忘れられない作品であると言えるのではないでしょうか。
世界を守るロボットの操縦者に選ばれた15人の子ども達が、文字通り命懸けで戦う。そして、それらを通じて今まで目を反らしてきた問題にそれぞれが向き合う。このように、この作品は人間ドラマ的要素が強いです。さらに、言ってしまうならこの作品の人間ドラマ的要素は、不条理で胸糞の悪い展開が多いです。それ故に、この作品は多くの人に認知されています(あとOPの影響も強いですね)。その不条理や胸糞の悪さを越えた先に、パイロット達は自分たちが戦う意味を見つける(それぞれの理由が本当に真っ当なものなのか考えさせられる所もあります)。それが、戦闘シーンで表現されており非常にカタルシスを感じる構造になっています。
また、重要なのは、生きる意味ではなく戦う意味であるという点です。そこから感じとることができるモノは、人それぞれだと思います。それは、かつての戦争で命を失っていった人達に重ねる方もいれば、大人になる通過儀礼としての子供たちが考える理想の大人像の実現と考える方など、様々あると思います。
しかし、だからこそこの作品においての「大人」の必要以上の介入には少し疑問のあるところもあります。政治的な内容や技術に対する大人の存在は必要であることは分かりますが、後半に登場する反社の榊原は明らかにノイズです。彼の行動や話はよく分からない点が特に多く彼周辺の話は無くても良かったのではないかと感じました。その他にも、政治的描写や家族の描写など、小さい点での大人の描写に関する疑問が多々ありました。
さらに、これは仕方のないことなのかもしれませんが特に中盤は作画崩壊が目立ちます。シリアスな場面なのにクスッときてしまうところが少しありました。また、これは作画崩壊なのかどうか分かりませんが、所々登場する車のデザインがシンプルにダサいです。特に、こだか君のお父さんのスポーツカーはヤバすぎです(これはある意味見どころ)。
ここからは最終回のネタバレが含まれます。最後になぜ最終回の話をしたいのかというと、残された者の話を描いているからです。基本的には死に直面した子ども達が何の為に戦い、死んでゆくのかを個人の問題を見つめながら模索してゆく構造でしたが、最終回は残された者が死んでいった者達(パイロット達のこと)をどのように考えてゆくのかが描かれていました。その、結論の賛否は置いておいて非常に良い締め方をしているのではないでしょうか。
このように、所々の作画崩壊や特に大人達の不可解な行動や言動、そもそもの特定の人物の存在意義の不明などがありますが、作品の大きな設定や問題提議は他の作品にはできないほど掘り下げられており、だからこそあの程よい(人間ドラマというこの作品の本質を霞ませない程度に最大限に表現された)戦闘シーンは私達にカタルシスを感じさせ、良くも悪くも忘れられない作品であることは疑いようがありません。
・追記
ここまで書いておいてなんですが原作を読んでおらず原作はもっと良いという意見もあるので、また読み終わり(アニメを見終わった後すぐにAmazonで全巻買いました)次第、そこから新たに感じたことがあれば追加で書きたいと思います。