ぺー さんの感想・評価
3.5
物語 : 3.5
作画 : 3.5
声優 : 3.5
音楽 : 3.5
キャラ : 3.5
状態:観終わった
やりたい仕事と向いてる仕事
※ショートものは配点一律3.5点にしてます
1話9分で全36話。
中学卒業後。舞妓さん志望で上京(京都)した二人の娘さん、野月キヨ(CV:花澤香菜)と戸来すみれ(CV:M・A・O)を軸に、屋形(置屋)でのお食事を巡るあれやこれやを描写したショートアニメ。タイトルそのまんまです。
お食事風景と合わせて花街のお作法なんかも織り込まれていて一粒で二度美味しい感じもあります。なお『三丁目の夕日』の堀北真希ちゃんしかり二人は青森出身。地方から出てきて奮闘するヒロインで理想の出身県アンケート取ったら確実に上位に食い込むだろう鉄板の自治体です。
中身も良いんですけど印象に残ったのは一話毎視聴後感の良さ。短いわりに過不足なく感じました。
【構成】
1.つじあやのさんのオープニング
2.本編
3.不定期挿入のコーナー『本日のまかない』
4.30秒弱の歌無しエンディング
あくまで奮闘記じゃないのでシャウト系としないチョイスが1。本編2は割愛。京都-青森間に偏らないよう別枠で全国各地ネタも散りばめたりの配慮が光る3。30秒弱&歌無しで情報量抑えてと下手に引っ張らない4。バランスが良い。
物足りなさもなければ過剰でもないのでスイスイいけちゃうのがおすすめポイントです。一話の尺といい話数といいやってることや放送局といい“朝ドラ”といって差し支えない風情かと思います。
なお、その日の気分に合わせるなど何かしらのテーマと提供されるまかないがリンクするのは本作に限らずのお約束。エッセンスとなる花街のお作法もプロに聞いたらそれほど乖離もありません。ぐらつかないほど土台がしっかりしてるためそれだけで無駄な装飾がいらず9分で話として成り立ってました。
中身にも触れときます。
余所行きでも豪勢でもない普段使いのまかないが主題のため、関わる人らもどこかしら素に戻ったやりとりが繰り広げられる食べ物アニメです。
とある理由で舞妓志望から屋形の食事担当となった主人公キヨが提供する食事には至る所に相手への思いやりがこもっており嫌味や外連味とは無縁でもあります。トーンが終始一貫してるため2~3話試して駄目ならスルーでよろしいかとも思います。
そもそもお名前がキヨってのが一周して斬新ですね。カタカナ二文字名前の女性って大正ないし昭和初期以前の佇まいです。高度経済成長期の金の卵だと良い意味での野心の塊でしたでしょうし、現在だと“自分らしく”“自己実現”がキーワードになる頃合い。それよりはるか以前だと
置かれた場所で咲きなさい
舞妓になってどうこうとか舞妓諦めてなんやかんやに一切触れてはいないのです。本人もそのことで気持ちの浮き沈みがありません。幼少期からの祖母の手伝いって日常をこなしながらの延長で周囲から請われて“まかないさん”の立ち位置にいるキヨさん。彼女だけでなくすーちゃんはじめ周囲の人たちも余計なことは言わない。野暮というもんです。
本作から受ける心地よさの正体はそんなところにあるのかもしれません。本家の朝ドラですら時折意識高かったりしますので失われた朝ドラの神髄がこのアニメにあるのかもと勝手に思い込んでます。
※ネタバレ所感
■郷土食
全国津々浦々から集った舞妓さんという特質上、故郷の味の話に発展しやすいのはあったと思います。
京都と青森の範囲に留まらない仕掛けがあったのは前述の通り。それ以外の地域の方でもどこかしら故郷を想起させる仕掛けが施されておりました。
{netabare}とりわけ地域差が出るなぁと実生活でも感じていたのが“お雑煮”ですね。彼女彼氏だったり結婚されてる方だと思い当たるフシありませんか?
普通ならお正月回なんて一話くらいなのに三話くらい使っていたのはこの作品がどこに力点置いてたのかが透けて見えます。
個人的には味噌の焼きおにぎりがおふくろの味ですね。一時期それっぽいのコンビニで売ってましたけど焦げがないんですよ焦げが。あれはいかん。それに“ひっつみ”ははうちの地方では“すいとん”でした。岩手と青森なんて隣同士と思いきや、南部藩(北上以北)と伊達藩(北上以南)は微妙に違うのです。他にもお汁の作り方は出汁をしっかりとってからが基本の京都と醤油酒みりんのみであとは具材から味が沁み出るだろうの違いなんかもありましたね。塩分取り過ぎの我ら北東北民からしたら味しないだろ?ってのはありました。そういえばこっち(首都圏)では“くるみだれ”見かけませんね。全国区となって久しい“ずんだ”と同等の市民権を地元では得てたりします。
全国津々浦々。旅先のスーパーで食材の違い見るの楽しかったりするので皆さんにもおススメです。{/netabare}
{netabare}そんな郷土食で郷土色に焦点当ててやいやい盛り上がってるのを横目にさらっと「そういえば地元(青森)帰っても京ことば抜けんかった」と一人呟くすーちゃん。
単なる地元万歳や懐古趣味に留まらずに、今と未来の居場所を大事にするとなれば徐々に故郷が薄まっていくほろ苦さなんかも平気でぶち込んできてました。{/netabare}
■ピックアップキャラ三名
CASE1:キヨのおばあちゃん
{netabare}うちの妻を大正生まれの祖母に合わせた時に通訳が必要だったことを思い出した。いやー懐かしいイントネーション。 CV高谷智子さんは青森県青森市出身とのことで納得。{/netabare}
CSSE2:幼馴染の少年
{netabare}二世代くらい前の少年役といえば田中真弓さんと双璧をなした高山みなみさんご登場。おおかたコナン君のイメージでしょうが、世代的には『ミスター味っ子』です。食アニメに登場されるのが滋味深い。{/netabare}
CASE3:つる駒ねえさん
{netabare}ねえさんあっての本作でした。力のある脇役との評に異論はないでしょう。{/netabare}
番外:ざーさん
{netabare}主に青森方面の方言がちょっと…{/netabare}