かがみ さんの感想・評価
4.1
物語 : 4.0
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.5
キャラ : 4.0
状態:観終わった
「つながり」よりもさらに深いところで手をつなぐということ
大きく言えば、ゼロ年代日常系が「終わりなき日常」の再肯定としての異なる物語を生きる他者同士の「つながり」を称揚する傾向にあったとすれば、本作を含めた2010年代日常系は「つながり」によって抹消された「他者性」を際立たせる傾向にあったといえるのではないか。この点、本作においてシャミ子(まぞく)と桃(魔法少女)の間には「闇の勢力」と「光の勢力」という決定的な「他者性」が走っている。それゆえにシャミ子は「宿敵」である桃に対して結局のところは「これで勝ったと思うなよ」と言うしかないのである。ここには決して「つながり」という一義性へと回収されることのない、その都度その場限りのアドホックな切断と再接続を繰り返す「他者性」の危うさを見出すことができるのではないか。だがこうした危うさこそが、お互いの「他者性」をより丁寧に理解するためのコミュニケーションの動因ともなるのである。「つながり」よりもさらに深いところで手をつなぐということ。しばし我々のコミュニケーションの現実においても安易な「つながり」が個々の「他者性」という「分かり合えなさ」を強力に抹消してしまうことがあるだろう。こうした意味で、本作はまさにその「分かり合えなさ」を分かり合うためのコミュニケーションのあり方を描き出そうとしているように思えるのである。