てとてと さんの感想・評価
3.9
物語 : 4.0
作画 : 3.5
声優 : 4.0
音楽 : 3.5
キャラ : 4.5
状態:観終わった
悲しみを背負わぬ覇王と彼を愛した女たちの物語。格闘物ではなく三国志的戦記の拳法版な感じ
北斗の拳の主人公ケンシロウの兄、ラオウを主人公にした外伝。全13話。
乱世の群雄戦記寄り、呂布みたいな武力型英傑に覇道の信念加えた感じの乱世軍記物。
各地の群雄を打倒していく、三国志の武将を拳法に置き換えた感じ。
【良い点】
北斗の拳の正史の大きな流れに忠実に、ラオウを中心にした舞台裏を補完するストーリー。
黒王号との出会いや、配下のリュウガ、ライバルの聖帝サウザー、ウイグル獄長などサブキャラの掘り下げも。
北斗の拳の基本世界観や設定(世紀末乱世で拳法家が力を握る)、それによる北斗伝承者が救世主として求められる説得力を元に、覇道の英傑を描いていく。
北斗の拳のメインテーマである「愛」と「悲しみ」を知る者こそが救世主なのだ、を丁寧に描いた。
直接登場せず舞台裏で進行していくケンシロウの存在感、対するラオウたちの胸中。
獄中のトキがサクヤからの報告を受けての独白もいい味出している。
その上で決して立ち止まらず覇道を往く拳王ラオウの魅力が高い。
本家が拳法家個人の武闘伝なのに対し、本作は群雄たちの戦記系として結構熱い。
悲しみを背負わぬ拳王ラオウが、乱世を恐怖で支配せんと確固たる信念で覇道に邁進していく。
合戦、攻城や籠城戦、外交、情報収集、調略などの描写が本格的、戦記としてちゃんと見応えがある。
恐怖支配の内政したり、合戦もラオウ一人だけで無双はできずちゃんと戦略戦術を練るなど。
その上で圧倒的に強いラオウが北斗神拳で暴れる無双要素もあり。
お膳立ての上で武将の一騎打ち(拳法勝負)で決める、三国志とかキングダムみたいな熱さ。
更にレイナとサクヤという美女も活躍するので華もある。
古参のソウガとレイナが新参のサクヤやリュウガとソリが合わなかったりも、三国志ぽい。
「真救世主伝説 北斗の拳」のオリキャラ、ソウガとレイナ兄妹、本作のオリキャラヒロインのサクヤの愛など、キャラドラマが良い。
寡黙なラオウよりも、ラオウの覇道と共に歩む彼らの想いや生き様が丁寧だった。
中盤登場のリュウガが心を鬼にして覇道の決意、ソウガもまた決意を固める…
彼らはただ非情ではない、揺れ動く心情が伝わってくる。
特にラオウを愛するレイナとサクヤ、女たちのドラマが切なくも美しい。
中々本心を見せず怪しい動きをするサクヤ、その真意が明かされる終盤、愛に散る結末は印象的。
最期まで愛する男に想いを伝えず逝った女。
その在り方にラオウだけでなくサウザーも心動く片鱗を見せている。
(サウザーに対し)「あなたは…愛を知らなければ覇王になれません」
(ラオウに対し)「あなたは…悲しみを知らなければ覇王になれません」
彼女の想いは決して並び立たぬ覇王たちに届かず、それでも一時であれ戦いを止めさせた…
サクヤというオリジナルヒロインの存在で、本家の流れを変えずに、両雄の魅力をより深く掘り下げて見せた。
本編にて彼らは愛を捨てた故に、悲しみを捨てた故に、愛と悲しみを背負う救世主ケンシロウに敗れる事となる…
【悪い点】
本家を知っている前提の外伝なので、初見だと説明不足も多い。
サウザーに関しては掘り下げ不足。
本家の流れを変えるわけにはいかないため、対決が消化不良ばかり。
妖星ユダを見逃したり、引かぬ媚びぬサウザーがあっさり引いたり。
ユダはいい感じの悪役だけど、サウザーが若干姑息な印象なのは残念。
【総合評価】7~8点
本家ファンからは酷評多いけれど、作品としてのタイプ、見所が全然違う。
本家とは違った角度からキャラの魅力とテーマを掘り下げた戦記としてかなり良かった。
ユダとサウザーに関してやや惜しいけれど、許容範囲。
評価はやや迷うが良い寄りの「とても良い」