にと さんの感想・評価
4.8
物語 : 4.5
作画 : 5.0
声優 : 5.0
音楽 : 5.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
ミステリーは日常にある。
米澤穂信先生による原作、氷菓からいまさら翼といわれてもまでを読了した上での評価であることに留意されたし。
アニメ版では、タスクオーナ先生による漫画版氷菓のキャラクターデザインや作風に大きく比重しており、原作の描写以上にラブコメディの要素が入っている他、若干のギャグ要素もある為、少し手が出にくいと思った方は、これを機会にぜひアニメから鑑賞していただき、アニメではまだ描かれていない『二人の距離の概算』、『いまさら翼といわれても』を、小説か漫画にて読了していただければ、作品の魅力がより伝わるのではないかと思う。
と、ここまで視聴のハードルを上げてきたのだが、なぜここまで読了して欲しいかと言うと、それはキャラクターの深掘りが大きく行われるのが最新刊『いまさら翼といわれても』だからであり、主人公として描かれる折木奉太郎が省エネ気質で、朴念仁のような人間になった理由や、ヒロインである令嬢千反田えるの抱えることになる苦悩、福部里志のモットーや人間としてのあり方について、伊原摩耶花の確執のある先輩とどうして筆をとることになるのか、それぞれのキャラクターの掘り下げが行われるため、ぜひ読了して頂きたいのである。
さて、ここまで時間を無駄にするような拙文を読んで頂いた皆様からは「おい、アニメ氷菓のレビューじゃなくて最新刊のステマじゃねーか」と言われかねないので、きっちりとアニメについて触れていこう。
まず作品についてはタイトルのままなのだが、日常に起こるミステリーを、主人公折木奉太郎(たまに別の誰か)が、解決していくというものである。その中で、まだ高校生という限られた世界の中を生きている少年少女たちの、問題の解決による葛藤なども描かれ、青春群像劇とも違うなかなか一筋縄ではいかない難儀な作品になっている、勿論褒め言葉である。
そして京都アニメーション渾身の映像美、これに触れず何を語るのか。岐阜県高山市をモデルにした(作中では神山市)本作は、その全てが筆舌に尽くし難いほど美麗に描かれ、また、キャラクターの描写も(特に心理描写については)、アニメーションという作品を一段階上の領域へ昇華させていると言える完成度であり、また、作中のミステリーとしての完成度も高く、きちんと視聴者にも解決のための糸口が提示される(とは言えど、視聴者がホームズやポアロでもない限り解決できないものはあるが)。
さて、これ以上話を続けると、一話一話ネタバレをしそうな程であるので、ここらで締めくくりとしたい。
好きな作品を語るオタクが早口になるように、もっと語りたいことが沢山あるのだが、今ならフェルマーの余白に書いた気持ちがよくわかる。まあ余白とか関係ないので、どちらかと言えば時間が足りないとでも言っておこう。
最後に、米澤穂信先生は所謂イヤミス、俗っぽい言い方をすれば胸糞悪いミステリーも得意とする作家なのだが、小市民シリーズという氷菓シリーズとは別の、学生がメインになる作品も存在するので「この場でまたステマかよ!」と思われるかもしれないが、ぜひ書店で見かけたら手に取っていただきたい。