メタルジャスティス さんの感想・評価
3.7
物語 : 4.0
作画 : 3.5
声優 : 4.0
音楽 : 3.5
キャラ : 3.5
状態:観終わった
ククルスドアンの島、という話にとっては幸福な出来事。
まさかのリメイク、しかも劇場版ということでちょっと話題になった本作。
大作、名作が目白押しの中でひょいっと公開されました。
作品全体として、つまらないわけでもないし、破綻もしていない。
いやさ、作画、設定が崩壊していたテレビ版が、普通の作品として成立に至ったのは、この物語にとっては暁光と言えよう。
では、視聴者にとってはどうだったか。
ヤフコメやらフィルマークスではちょっと異様に感じるレベルで好評なようです。
・・・・・。
本気か?
確かに前述したとおり、とりあえず破綻なく物語として成立し、絵面的にはまさにマスターグレード化はしている。
面白いと思う人もいるでしょう。
でも、私はそうは思えなかった。
序盤のワクワク感は違和感に変わり、後半は苛々が優っていたほど。
別に私は富野監督信者でもないし、熱狂的なファーストガンダムファンというほどでもない。
加えて、安彦版ガンダムであるオリジンも概ね楽しく視聴できている。
なのに、何故本作は手放しで誉められないのか。
理由は大きく3つ。
1つ、コメディ要素とシリアスのバランス。
2つ、cgの品質はともなく、腕を破壊されたザクが破壊部分を押さえるという頭の悪い描写。
3つ、つまるところ脚本(と絵コンテ)が残念。
1つ目、コメディとシリアスのバランス。
端的に言うと、しょっぱなに登場する小西さん演ずる参謀(キャラ名不明?)。ちょっとオーバーリアクションだなーぐらいに思ってましたが、終盤に至ってはギャグ漫画か?と言わんばかりに涙を流して狼狽してたりする。いやいや、そこ違うでしょう、と。
コメディはあっていいんです。例えば、ヤギの止め絵なんて昭和を彷彿とさせる演出で個人的には受けました。ですが、本来シリアスに描くところをコミカルに描くってどうかと。
カイやハヤトあたりもちょっと鼻につく感じ。いや、テレビでもそうだったろうと言えばそれはそうなんですが、ちょっと・・・。
2つ目、cgの品質はともかく。
何はともあれ新作でザクやガンダムが観れれば嬉しい!という人なら別に良いのでしょうし、なんだかんだで、私もちょっとは「おー」ぐらいには感じ入ります。
が、cg感丸出しはさておいたとしても、単にモビルスーツが動いているだけで、画面構成や演出に力が入っているわけでもない。
そればかりか、岩を投げる時は人間みたいに動くくせに歩行するときはリアルロボット、というかバリバリcgの動きで歩行する。極め付けは腕を破壊されたザクが破壊された箇所にマニピュレータを添える描写とか頭が悪すぎます。ザクには痛覚でもあるんですか?
cg部分、というか作品全体に言える話でしょうけど、つまるところお金がない、言ってしまえば日本のアニメ業界が抱える制作委員会方式の弊害なのでしょうが、本筋から逸れるのでそれはさておきます。
とはいえ、本作におけるモビルスーツのcgは別段悪くはないが、「とりあえず作りました」レベル。
3つ目、脚本。
最近こればかり言っている気がしますが、脚本がダメとは言いませんが、微妙、いやさ残念。
大きな流れでいうと折角劇場版ということで、尺があるのに、ドアンについての描写が無さすぎ。原作にあったカミングアウトもなし。
それでいて、正直キャッキャキャッキャうるさい子供パートが長い。私は別段子供嫌いではないし、満員電車であかちゃんがギャン泣きしてても笑顔でたいへんだなーと思える程度の人間ではあるが、本作は妙に子供達にカメラがフォーカスしていて、それでいて何かメッセージがあるでもなく、描いているだけのようなかんじ。
それぐらいならドアンの過去にもうちょっと触れてもいいと思います。
かつて所属していたサザンクロス隊の美女にしたって、明らかにドアンに対して悪からず思っている感じなのに、さっくり片付けるドアンさん(笑)不憫すぎます。かと思えば、新加入したと思われる、キレている兵士?はありがちなステレオタイプなキャラ設定だし、ドアンにコンプレックスを持っている後釜の隊長も設定からセリフまでありがち。で、くどい安彦オヤジ顔。
既存キャラ性格変更なんてものありますね。巷で言われているブライトについては私はそこまで意義は唱えませんが、1番問題に感じたのは、アムロがガンダムで敵の兵士を踏み潰すシーン。いや、アムロは踏まないでしょう。せめて、崩れた資材に巻き込まれるとか脚本で対応もできたでしょうに。
他にも細々ありますが、こんなところです。
いえ、そんなに悪いわけじゃないですよ?
ですが、世間の空気がちょっと理解出来ない。
これを名作だ!と持ち上げているようではますます日本の映像作品は劣化の一途を辿るのだろうなと危惧する次第。
星の評価上は3.7と妙に高くなってしまいますが、今後の業界を危惧する意味では総合で星2.5といったところでしょうか。
追記
昭和の思想を持ち込んだ令和のそこそこの予算でなんとかファンウケ狙いで作りました!なのが本作の実態かと。
細々追記
描くところはきっちりリアルに描かなければとたんに「子供向けアニメ」になる。
本作がそれでいいというなら構わないかもしれませんが、あの島の生活で物資はどう調達しているのか?やたらおいしそうな晩ごはんシーンがありましたが、野菜は兎も角、小麦は?パンはどう調達しているのか?ドアンが船で買い出し?脱走兵という立場では厳しくないか?等など・・・。