「ピンポン(TVアニメ動画)」

総合得点
83.7
感想・評価
1635
棚に入れた
6639
ランキング
315
★★★★★ 4.1 (1635)
物語
4.3
作画
4.0
声優
4.0
音楽
4.0
キャラ
4.2

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ネタバレ

蒼い✨️ さんの感想・評価

★★★★☆ 3.6
物語 : 3.0 作画 : 4.0 声優 : 4.0 音楽 : 4.0 キャラ : 3.0 状態:観終わった

実写版も見たほうが良いかな…。

【概要】

アニメーション制作:タツノコプロ
2014年4月11日 - 6月20日に放映された全11話のTVアニメ。
原作は、『ビッグコミックスピリッツ』に連載されていた漫画作品。
原作者は、松本大洋。
アニメ版の監督は、湯浅政明。

【あらすじ】

おかっぱ頭でチャラけた態度で誰にでもナメた口を利く星野裕(ペコ)と、
シチサンメガネで感情を表に出すことのない無愛想な月本誠(スマイル)
彼らは小学校時代からの幼なじみで、ともにタムラ卓球場に通っていて、
神奈川県藤沢市の片瀬高校でも卓球部に入っていた。

ペコは一年生時点で部で敵う先輩がいないエースで自惚れていて、
スマイルは、悪くはないがペコの相手にならないとの周りの評価。

全国屈指の激戦区である県内の高校卓球には、海王学園高校という絶対王者がいて、
年々、弱小の一途を辿る古豪の辻堂学園は対抗するために、
上海のジュニアチームで挫折したエリート中国人選手を留学生として雇った。

このことを卓球雑誌で知って興味を持ったペコは、
スマイルを連れて部活をサボって辻堂学園にスパイに。

その留学生の孔文革はペコとスマイルが球を打ち合う音だけで、
プレイしている姿を見ずに、スマイルが本当はペコより強いのだが、
才能がありながらも闘争心が全く無くてわざと負けていると評価。
二人の前に現れて、そのスマイルと打ち合いたい孔は上海語で彼を誘うのだが、
出てきたのはペコだった。
不本意ながらも応じた孔に歯が立たずに、ペコは完封負けで泣くのだった。

スマイルが本当は強いのに勝つことに興味がないのに気づいたのは、孔だけではなかった。
周りが放っておかないスマイルの才能。
高校生最強の風間竜一(海王学園)が気にかけてるのがペコではなくてスマイルであるし、
片瀬高校の卓球部の顧問の小泉丈もスマイルを見ていて、指導者魂に火がついていたのだった。

【感想】

原作漫画も併せて読破。キャラデザと作画で敬遠されそうな見た目ですが、
原作者の松本大洋氏の絵に極力似せて描いていますので、そのへんは間違ってはないと思います。

連載時の20世紀末からスマホが普及しているアニメ放送時の2010年代なかばに時代設定を変更して、
それに伴って卓球の公式ルールの改正をアニメでも適用。
間を取って一部のキャラの年齢を+10歳するなど、細かい部分ではところどころの差分はあります。
原作にある展開は概ね原作通りですが、セリフの変更が多かったり、
アニメ版のオリジナル要素で脇役たちのエピソードを増やしています。

エキセントリックな作風で知られている監督を務められた湯浅政明氏としては珍しく、
オリジナル作品とは違ってキャラに対して有情であり、脇役の私生活や日常にも触れられていて、
原作から更に人間同士のつながりが多めであったり、
ライバルの生い立ちや葛藤について描かれています。

これらは、原作者が構想をしたものの連載時に用いられなかった数々の設定がありまして、
このアニメには脚本が存在しなく、絵コンテがそのまま脚本代わりになっていることから、
原作で未使用のアイデアを元に、シリーズ構成・脚本でクレジットされている湯浅監督自ら、
アニメで新たに取り入れて絵コンテで再構成したらしいですね。

ので、アニメとしても極度なエキセントリックさに走ること無く、
比較的に落ち着いている手堅い内容になっているかと思います。

とはいえ、すべてを捨てて卓球一筋に打ち込んでいるはずのドラゴン(風間竜一)
の、原作には存在しない親戚でもある彼女との関係のくだりに尺を割いていたり、
その彼女も大して可愛くなかったことから、これ必要だったか?との声もありますね。
のちに卓球にかまけていた影響での彼女との関係の顛末で悔やんでいるあたり、
そこは自らを縛っていたものから解放されて人間らしく丸くなったドラゴンということですが、
それは女と卓球を天秤にかけて、
修行僧のように卓球にすべてを捧げてきたこれまでのストイックさの自己否定であり、
もっと良い言い回しがなかったのか?
と原作にないアニメでのセリフに否定的な意見もあります。

個人的にはそこには同意しつつも別に、
中国人留学生の孔文革が、最初は見下していた日本人に心を許して、
仲間として仲良くなっていく様子が原作以上に描かれていたことには良かったとも思いますが。

ストーリーは大筋では、
主人公のペコの挫折と堕落の末に努力と成長に目覚めることがどうこういうより、
様々な選手が長い時間かけて築き上げた努力が、
いざ試合では才能の前に踏み潰されて置き去りにされてしまうという、
高校生レベルの個人競技スポーツではありがちなことを、
才能に選ばれなかった敗者目線での心理が描かれていて、そこが刺さる人には刺さる感じでしょうか。
繰り返しますが、アニオリ部分はそこが重視されています。
ちなみにペコは挫折から努力を始めてメキメキと実力をつけていくのですが、天才サイドの存在です。

絵がひどいと言われる特徴的なキャラデザ自体は自分としてはマイナスポイントではないのですが、
映像と演出面ではあまり褒める気がしないですね?

特に卓球の試合では、原作終盤では陰影のはっきりした作画で迫力があるのですが、
アニメでは色がのっぺりしていてスポーツの動きの作画に筋肉の躍動と重厚さがなく、
また、漫画のコマ割りみたいなカットを多用していて動かないシーンがちらほら。
セリフを多用しながらも口パクすらしないシーンすらあります。
そこのところは前期の『Wake Up, Girls!』の作業遅延の影響でヘルプせざるを得なく、
タツノコプロの作画リソースを奪われたせいという話と符号する部分もありますが。

その代わりしては、どことなくエヴァっぽい演出を使ったり、アイツはロボットみたいと言えば、
本当にロボットにしてみたり、キャラに翼を生やしてみたりでやたらそういうの目立ちますよね。

例え話になりますが、アニメで美味しい料理を食べたりするとそのリアクションで、

①美味しそうに食べる様子を丁寧な作画で描く。
②キャラがその料理の素晴らしさを長広舌で説明する。
③『ミスター味っ子』みたいに口からビーム吐いたり巨大化する。

湯浅演出って、シリアスでもギャグでもどのアニメでもほぼ③の派生なのですよね。
③ってほぼギャグじゃないですか?
確かに『ピンポン』でも作品に監督の爪痕を残すには成功はしているものの、
それが素晴らしい演出か?というと見る人の好みに左右される部分もありますが、
スポーツアニメとしては疑問がありますね。『スラムダンク』などではそんな事しませんですし。

クリエイターにはその人特有のやり方があり、それがファンの心を掴むところではあるのですが、
結局これも、「スポーツで」「キャラクターで」「芝居で」で心を掴むというよりは、
原作漫画では用いられてない漫画記号的な心理描写の演出が前に出過ぎてる気がするのですよね。
単純に自分に合わなかったと言えばそれまでなのですけどね。

アニメとしては動かしてる部分は決して出来は悪くはないものの、省エネ部分が多すぎたりで、
世にある数多のアニメ作品と比較しても特に傑出もしてない、普通かなって思いました。
スポーツアニメを見たいんじゃない!湯浅演出を楽しみたいんだ!という人には、
これで十分かもしれませんけどね!

Google統計でも満足度が71%(人気作品は90%以上が普通)と芳しく無く、
「良かった」「悪かった」は人それぞれですが、湯浅ファンからの評価は概ね高いものの、
それがもっと大きい分母での絶対評価につながっていない。
そんなものだなと数字を見て安心してしまいました。


これにて感想を終わります。
読んで下さいまして、ありがとうございました。

投稿 : 2022/06/12
閲覧 : 371
サンキュー:

31

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