ひろたん さんの感想・評価
4.1
物語 : 4.5
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
この作品は、まったくもって「能」そのもの
「能」と言うのは、結構面白いと思います。
以前、解説付きで「隅田川」と言う演目を観ました。
話が分かった後にもう一度その演目を見るとあることに驚きます。
「能」は、「能面」をつけて演じます。
「能面」と言えば、無表情の代表のようなものですが・・・、
実は、話がわかると、場面によって、笑っていたり、泣いていたり・・・。
ぜんぜん無表情なんかではなく、とても表情豊かなのです。これにはびっくり。
能面をつけるのは、基本的に「人ならざるもの」を演じる主役(シテ)です。
観客は、この人ならざるものを通じて世界を見るのが能です。
また、能の主題は、人ならざるものが主役であることから悲しみや恨み等で暗いです。
そのネガティブな感情をベースにクライマックスに向けて盛り上げていきます。
そこに「囃子方」が奏でる音楽と「地謡」の合唱が次々に重なりそれを引き立てます。
能とは、ある意味「高揚感」を楽しむものです。
そして、最後には、なんとも言えない切なさで終わります。
実は、この犬王は、まったくもって、「能」そのものでした。
主人公の犬王は、異形として生まれ、ひょうたんでできた「面」をつけています。
そして、序盤では、その「面」越しに見える世界を表現する演出がありました。
そうです、「能」と同様、観客を主役(シテ)が見ている世界へといざなったのです。
また、この物語では、途中からはひたすら舞と謡と音楽です。
「能」と同様、クライマックスにむけてひたすら「高揚感」を演出します。
若干、「謡(うたい)」が単調かなと思わなくもありません。
でも、これは、「能」。
そう思うとなぜか許せてしまいます。
むしろ、聴きやすい今風な「歌」ではだめなのです。
なぜなら、「能」へのリスペクトが無くなってしまうからです。
あくまもで「歌」ではなく、「せりふ」を兼ねた「謡(うたい)」なのです。
また、「能」で一番大切な考えがあります。
それは、「全ての舞台は一度きりの出会い」と言うことです。
つまり、観客もその舞台に出会えるのは、一度きりなのです。
これを、『一期一会』と言います。
それは、まるで本当の出来事がそこで起こっているように演出するためだそうです。
ですので、つける面もその日に決めますし、同じ演目も連日では行いません。
この物語でも犬王の各演目は、ある理由で一度きりしかできませんでした。
やはり、この作品は、「能」なのです。
■まとめ
「能面」とは、「人ならざるもの」の象徴です。
最後、「面」をつけた主人公の犬王は、どうなってしまうのでしょうか?
観てのお楽しみです。
この作品に興味がわいた方は、一度、「能」にも触れてみてください。
すると、この作品は、「能」の大切なものがすべて入っていることに気づくはずです。
そして、もっとこの作品を楽しめると思います。