てとてと さんの感想・評価
4.4
物語 : 4.0
作画 : 4.0
声優 : 5.0
音楽 : 4.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
戦後復興期の裏社会麻雀の怪物博徒の凄みを描く。全26話。
【良い点】
終戦直後~昭和中期の混沌とした裏社会の澱みや重厚な雰囲気が抜群。
昏い作画や楽曲、古谷徹氏のナレーションが合わさり雰囲気だけで圧倒される。
麻雀作品として超本格派、麻雀のルール知らない視聴者でも、麻雀が持つ本質的な部分(ゲームの構造や心理戦の意味など)に鋭く切り込んでおり、細かいルール分からずともグイグイ引き込まれる説得力がある。
神算鬼謀な駆け引き、冷静に考えると御都合主義だけど、アカギがそう言うならそうに違いない…と思わされる。
面白さの肝は技巧的な駆け引き以上に、アカギに翻弄されるキャラたちの心理劇にあり。
裏社会賭博の命を懸けた極限の一手一手で登場人物たちの人間性が丸裸にされていく様は圧巻。
主人公赤木しげるの常軌を逸したカリスマ。
単なる死を恐れない蛮勇ではない、底なしの虚無。
生に執着しないが死にたがりでは決して無い、運否天賦の博打の一瞬を愉しみ孤高に生きる。
麻雀は心理を読み牌を読み場を読めば有利だが人事を尽くしても天命が微笑むとは限らぬ、それは人生の縮図。
常人には狂気の沙汰だが、彼は理を突き詰めた上で最後は運否天賦に委ねる。
常人が生に執着し足掻くのを尻目に、アカギは不敵に微笑み平然と命を賭ける。
この生き様そのものがカッコイイ。
「死ねば助かるのに」
などの名セリフの数々もシビれる。
本作はアカギ以上に周囲の凡人たちが魅力的。
ヤクザとの賭博で追い詰められ窮鼠猫を噛む南郷、気弱ないじめられっ子だが不条理を恨まず自分の責任を通した治、プロだが結局アカギに飲まれていく代打ちたち…
安岡刑事などギャラリーも良キャラ揃い。
彼ら常人の迫真の心理描写があって、アカギの狂気が際立つ構図。
そしてラスボスの鷲巣の、昭和の妖怪めいた存在感も凄まじかった。
が、鷲巣でさえアカギの前では生にしがみつく凡人に過ぎない。
作画はクセの強い原作絵をブラッシュアップ、原作の良さそのままに丁寧に描写。
麻雀シーンにCG活用、2005年としては綺麗で現在見返しても違和感が殆ど無い。
そして声優陣も素晴らしい。
萩原聖人氏は本職ではないが、赤木しげるの声は萩原聖人氏しかあり得ないレベル。
他も渋いベテラン揃い、津嘉山正種氏の鷲巣も圧巻。
ストーリー面では、良し悪しではあるが、原作でグダグダ気味に続いていく前段階で潔く終了させた。
鷲巣麻雀の決着まで見たかったけれど、原作通りやると冗長すぎるので仕方あるまい。
【悪い点】
鷲巣編が冗長。(既に多数のレビューで書かれてますが)
採血で死に至るとか、鷲巣の強烈なキャラなど最初はインパクト強いが、延々続くと慣れてしまう。
鷲巣編は心理戦や駆け引きも前編までよりやや落ちる。面白さは浦部編がピークだった。
鷲巣様強いんだけど豪運頼み、雀士としては代打ちたちより弱い感じ。
良い点と裏腹、中途半端なラスト。
冗長な原作に対して英断だとは思うものの、やはり綺麗に決着が見たかった。
ここはアニメではなく原作が悪い。
【総合評価】9~8点
麻雀博打漫画の金字塔的名作を高水準でアニメ化、繰り返しの視聴に耐える傑作。
鷲巣編とて水準以上ではあるし、ラストも残念とはいえ失敗とは言えないし。
評価は最高か迷うが僅かに惜しい「とても良い」