九会 さんの感想・評価
4.4
物語 : 5.0
作画 : 4.5
声優 : 4.5
音楽 : 3.5
キャラ : 4.5
状態:観終わった
だんない!だんない?町おこし!
普通が嫌、地元が嫌い、都会に出れば何かになれる、そう思っていた主人公の木春由乃(こはるよしの)がひょんな事から東京から離れた富山のとある田舎で1年間王様(観光大使みたいなもの)として4人の仲間と共に町を盛り上げていくお話。序盤の由乃の設定はからっぽというかあまり共感が出来ない感じの子でしたが、町おこしをしている中で健気に頑張っている姿や物怖じせずグイグイ来るコミュ力の高さから夢見がちとはいえ就活30社落ちる子じゃないよ、この子と思いました。受けたとこが適正がなかったり、大企業とかばっかだったんじゃないかな?自分には無いものを持っているので羨ましいです。
また町おこしをする中で必ずしも主人公達が何かして成功!とならないのがこの作品の面白いところだと思います。多少は物語を進める上で都合の良い設定などはありますが、上手くいく事といかない事の配分が絶妙なんですよね。当たり前ですが、町おこしはそこに住む人との関係が重要なものです。これはあくまで例で本編内容ではありませんが、観光地であったりしてもそこを訪れる観光客のマナーが悪かったりすると地元の住人が自治体に苦情をいれてその事が大きな問題となってメディアで取り上げられる事が度々あると思います。そんな感じの町おこしと住民との価値観のすれ違いのようなものがしっかりと描写されているとても丁寧な作品です。この話は観光協会のお話ですが、市からの補助金として税金が使われる事もあり、失敗して地域発展に繋がらないと税金の無駄遣いと住人に揶揄される事もあるのです。
そんな難しい課題を扱う今作ですが、少しずつ住民達が心を開いていったり、主人公達が地域に馴染んでいく過程が秀逸だと思います。派手な作品ではないですが、5人が町おこしを通してちょっとずつ自分のやりたい事を掴んでいく感じがまさにタイトルにある「クエスト」にふさわしい作品だと思います。メイン5人のフレッシュな若手声優陣と地域住人を演じるベテラン声優陣のバランスが良く、音楽に関しても地域民謡をそれっぽい形に仕上げていたと思うので良かったと思います。作画もPAワークスなので四季折々の間野山の背景描写はしっかりされていましたね。就活生や転職を考えてる方、地元にコンプレックスないしは愛着がある方には刺さる作品だと思うのでそんな方達にはオススメしたい作品です。