てとてと さんの感想・評価
3.4
物語 : 2.5
作画 : 3.5
声優 : 4.0
音楽 : 3.5
キャラ : 3.5
状態:観終わった
古代ローマの奴隷拳闘士の格闘物。名作の良さを殆ど出せていないが、駄作と捨てるには惜しい
古代ローマ(悪名高いネロ皇帝がまだ少年な時代)を舞台に、死と隣り合わせの拳闘で自由を求める拳闘士の物語。
【良い点】
まず、アニメ化してくれた事に意義がある。
乏しい制作リソースで戦略方針を誤らず、娯楽作品として及第点の出来に仕上げた。
全11話条件で、セスタスがどんな感じの作品かを触り程度に見せてくれた。
不満は当然。自分も原作ファンなので歯痒い思いではある。
しかし圧倒的ボリュームとクオリティーで歴史背景や人物描写や成長を描いた原作漫画に対し、僅か11話で忠実にやっていたら序章すら終わるまい。
そこを大胆(というより苦渋の)取捨選択で古代ローマの拳闘士たちの格闘物に焦点を絞った。
古代ローマ拳闘アニメとしては相応の見応えがあったし、下手にオリジナルで原作破壊されるよりは遥かにマシ。
格闘物としては、古代ローマ拳闘という珍しい題材を分かり易くレクチャー。
現代格闘技とは異質の戦術や実戦的な機微が興味深い。
ザファル先生の格闘理論や解説が分かりやすい上に、セスタスがメキメキと強くなっていくのは良き王道。
作画クオリティーは高くはないが、令和の3DCG技術の洗練はちゃんと活かされている。
主人公の少年セスタスの境遇(奴隷拳闘士で負ければ死、勝ち続ければ自由)から成長、強敵エムデンの届かぬ高嶺の花に焦れる愚直なロマンス、の二本の柱はしっかり見せてくれた。
原作の行間ドラマやローマの描写は大半カットはされたが、大きな見せ場はちゃんと絞れている。
特にエムデンは(アニメの範囲内では)主人公よりも良かった。
ツンデレ暴君なサビーナお嬢様のエムデンに対する複雑な心情もちゃんと伝わった。
悪い面でもあるけれど、原作のドラマをすっぱり削ったためか、シリアスで重苦しい雰囲気が減少。
雇用主や拳闘仲間との関係が良好で、不快感が少ない。
【悪い点】
大方のレビューで書かれている通り、致命的尺不足で原作の魅力の大半を出せていない。
特にひ弱で精神的にも未熟な主人公が成長する過程での重要な交流ドラマが大幅に削られている。
原作で重要なネロやルスカが殆どモブだったり、ヴァレリア関連が全カット。
セスタスの成長に関わる重要エピソードがほぼ全カットは残念。
エムデン戦とか、彼との出会いと死闘を通して学んでいく過程が省かれていたり、拳闘ドラマも弱い。
死か自由か?な切実さが序盤だけで薄れていた。
主人公の掘り下げが不十分、むしろエムデンやフェリックスらの方が目立っていた。
3Dの拳闘シーンは申し分ないが、2Dのキャラデザや背景描写がイマイチ。
【総合評価】5~4点
原作と比較してしまうと酷評やむなしだけど、格闘アニメとしてそこまで悪くない。
原作ファンの酷評は至極当然だけど、単品の娯楽作品としてはそこそこ見られる(と思う)。
評価は難しいところ、良いは付けられないが悪いは付けたくない「普通」