「サマータイムレンダ(TVアニメ動画)」

総合得点
84.0
感想・評価
616
棚に入れた
2071
ランキング
304
★★★★☆ 3.9 (616)
物語
4.0
作画
4.0
声優
3.9
音楽
3.8
キャラ
3.9

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ネタバレ

ネムりん さんの感想・評価

★★★★★ 4.1
物語 : 4.0 作画 : 4.5 声優 : 4.0 音楽 : 3.5 キャラ : 4.5 状態:観終わった

絶望からの生還

▩作画  4.0点→4.5点
 キャラ 4.0点→4.5点(最終)
 
ジャンルは死とタイムリープが複雑に絡み合うSFサスペンス。

原作者がSF映画の影響を強く受けていることから、過去に戻る能力を持った主人公が自殺した初恋の人を救うため、何度も過去に戻ってやり直すが選択行動のジレンマを抱える、SF映画の『バタフライ・エフェクト』 が基本設定(こちらは5週目で目的を果たすが、サマータイムレンダは10週目。倍にしているのは対抗意識かもしれない...)だと推測ができ、自らの精神と過去の記憶を繋ぐところは『レミニセンス』 の影響も強く受けていると思われ、第19話のタイトルの「メイドインブラック」から人間に成り済まして日常生活を送る宇宙人設定は『メン・イン・ブラック』、オリジナルをコピーするシーンや影を物質変換して銃や剣にしているところは、やはり『ターミネーター2』のT-1000の影響を受けているということが分かり、 『シックスセンス』のようなミステリーものというよりはサスペンス寄りの作品と言え、このことを考慮した上で科学的根拠に基づくSFと非科学的なミステリー、相反するものに整合性が図られていました。
過去に列挙した作品に加え、影を銃で倒す設定は『Angel Beats!』、クローンを作って人格を移し不老の肉体を手に入れるのは『彼方のアストラ』など、有名作品からの引用が多かった印象で、類似しないようにオリジナル色は出せていたので、大幅な減点対象にはしませんでした。
もっと基礎的な部分から構想を練りあげていればもう一段上の評価ができた作品。

考察ポイントはたくさんある(あまりにも長くなってしまうので書ききれないし、読みづらくなるから書きません)のですが、ご都合展開はなくしっかりと設定がなさていて、物語はとてもよく出来ていました。
ポイントとなったのは、それぞれの登場人物の目的と利害関係の一致、不一致だと思います。
シデ・四手(死を悟ることで世界の終焉観測を諦めるのではなく、世界を終わらせようとする狂信型のサイコパス的人格の持ち主)の目的は観測者となって世界の終わりを見届けることで、ハイネの目的は家族(影)を連れて現実世界から隔離された「常夜」と呼ばれる場所に戻ること。
シデはハイネを復活させて利用し、世界を終わらせようとしていたことから、ハイネが人間を食べて復活するという思惑と一致する。しかし、ハイネはシデの真の目的を知り利害関係が崩れる。
そこでウシオが第23話の常夜の世界で自分の自我の中に存在する「波稲」をコピーし、波稲が慎平達の味方となる(シデとは同じ目的を持たないためシデを倒すための共闘関係を築く)。ハイネではなく幼い時の良心的な感情を持つ「波稲」。

一方で慎平達の目的は、災厄の元となったヒルコを消し去り影の存在を無くすことなので、ヒルコ(ハイネ)の全てを終わらせるという思惑の利害関係が一致し、第24話でヒルコが常夜の出口と300年前に流れ着いた浜をタイムリープ能力で繋ぎ、ヒルコの意志を汲み取ったウシオが"消去"の能力で元凶である鯨を消し去る。そしてウシオを含む影が消えることになる。

ウシオの目的は影のいない元の世界に戻す(上記によりヒルコが消去され目的を果たす)ためにハイネの右目を慎平に渡すことで、ウシオが覚醒したことにより慎平の右目が同様に赤くなったことから、同じハイネの右目だということが分かり、第1話冒頭と3週目のループでの右目の異変に気付いたシーンで、慎平がタイムリープしてきたウシオからハイネの"観測者"としての右目を受け取っていることが判断できる。
その後10週目のループでシデを倒しヒルコの存在が消え、ウシオが消える前に時を戻す能力(南方ひづるが言っていたタイムトラベラーの能力)で、慎平を2018年に戻すため、第24話のエンディングで「託されたこの力で、ループを飛び越えてあの夏を描きなおす! 」のウシオのセリフに繋がる。
そして1話冒頭の夢の中の話が出てきて、南方ひづるとの船内での会話シーンに繋がることになる。
元に戻った現世では影が存在しなかった世界なので、殺された登場人物は全員生存していることになり、第25話のエピローグで島民の平穏無事の様子が描かれていて、夏祭りで島民達が侵食された7月24日を無事に乗り切り、7月25日の潮の誕生日の話に繋がり全てが解決する。
ヒルコが消えたことにより1週目から10週目までの記憶は無かったことになるが、タイムリープにより元の世界線に戻っている事実は変わらないので、4週目の旧病棟の会話がきっかけで慎平と潮が記憶を取り戻したことにより、第25話のタイトルの「ただいま」につながるという一連の流れ。
よって全ての話が体系的に繋がっていることになる。

所々伏線を張って後の話に繋げるところもしっかりと描かれていて、ヒルコ像の先が常夜を模したヒルコ洞に繋がるところはヒルコを切り裂いた先の常夜に繋がる伏線で、通常の人間では生存できない、つまり最重要部分とも言えるハイネの能力を持った人物のみが戦うことができる、ラストステージに繋ぐための舞台装置として機能していました。
また、ウシオはハイネの右目が飛び散ってできたもので、ハイネの能力を使いハイネとのリンクを断ち切り、影のミオを味方にした時のいわゆる侵食(ハッキング)と呼ばれる能力を使ってシデの絶対的防御を誇っていた骸の鎧を銃弾で打ち破りシデを倒し、コピーの能力に加えて終盤辺りから出てくるこの能力が伏線となっていて、常夜での爆撃機はヒルコの記憶からシデがスキャンしプリントしたもので、これもハッキング能力で消している。
そして第1話目の冒頭でウシオが慎平にハイネの右目を渡しているシーン(10週目にループした時はこのシーンが無くなっている。つまりヒルコが居なくなり影の存在が消えているということ)が10週目の第24話でウシオの「ほなな。もう行くわ。辿りついてね。この結末に!最後の最後に、みんなが待ってるよ。私が、待ってるから!」のセリフに繋がり、伏線回収もよく出来ていました。
従って、結論を言えば綿密に練られた設定を理解できたかがこの作品の評価が分かれるところで、よく観ていないと理解することが困難ではあるが、パーツを複雑に組み合わせた原作者の二次創作意欲が伺えた作品内容と言える。

この作品の内容や類似作品から「選択、絶望そして希望」 といったものがテーマだと思われ、その部分が描かれているかを注意深く観ていましたが、イベントホライズンを設けることで、絶望感や異例の10回ループした後の達成感といったものが表現技術の高い作画で見事に演出されていて、物語の構成も前述した通り一貫性があり、全てにおいて表現力が高く優れていると言える作品でした。

因みに登場キャラクターはナディア(ふしぎの海の)がモデルの澪、プリキュアやったウシオ(潮)ちゃん、テヘペロの元ネタ日笠陽子CV.の南方ひづる(どうせなら南方先生にテヘペロやってもらいたかった)、俯瞰野郎の網代慎平君とキャラクターも個性豊かで、物語の邪魔にならないような設定で配慮されており申し分なし。


□以下過去レビュー

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最新話の第16話まで観ましたが、ミステリー・ホラー要素にSF要素が同調して内容は面白いです。

今までの作品の傾向からすると科学的に証明できない怪奇現象で事件を片付けてしまうケースが多かったですが、古めかしい雰囲気漂う傾向のジャンルにSFの近代的構成要素を取り入れ、より先進的で前例のない作りに仕上がっていて、作品としては斬新さがあってとてもいいと思います。
原作者がSF映画の影響を強く受けているということもあり、温故知新を体現する形でジャンルの枠に囚われない挑戦的な試みは高い評価ができます。
ハイネの正体や目的が明らかになり、シデの中身の存在が明らかになるところで、原作勢の方は正体を知っていると思いますが、『BLOOD-C』で言うところの"あの人"に類似し、過去に登場した人物ということで作品の作りが興味を引かれるものとなっており今後の展開も楽しみです。

シデのモデルとなったのは複眼や四本腕、それから原作の方で槍を持っているので、おそらくロンギヌスの槍とカシウスの槍を持つ「エヴァ13号機」。
そう考えるともっとグロ要素は出てくる作品なのかなと思いますが、作画面では緊迫した表情やバトルシーンなど迫力がありますし、CGもハイネ、シデとの戦闘シーンでの燃え盛る炎や空気が急激に流れ込んでガラスが飛び散るシーンなどは非常にレベルの高い作画に仕上がっていて、グロ系の作画も期待ができそうです。

シデが4本腕を使って普通に食卓を囲んでご飯を食べていたり、登場人物が顔芸かましたりと遊び心のあるところも私は結構好きです。
登場キャラクターはハイネの能力が身体に流れ込んだ南方ひづるの超人的な強さや最近のウシオちゃんが可愛くていいですね。

現状での評価は結末に向けて期待が持てる作品。

{netabare}因みにアンチが湧いてきた時の対処方法は下手に刺激せずに、肯定的なレビューで埋めてやるのが一番いいんだそうです。参考までに。{/netabare}

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▩修正→あまりレビュー更新しないので少し加点しておきます。
・物語 3.5点→4.0点
第8話、原作の大幅カットがあったそうで、それを感じさせない内容と影を倒すまでの脚本の流れが良かったので、今後の期待の意味を込めて+0.5点
・キャラクター 3.5点→4.0点
主人公が顔芸かましてたけど、作風に全く合っていないがこういうノリは嫌いじゃないぞ。
あと影ウシオのテヘペロが可愛かったのでウシオちゃんポイント+0.5点(右テヘペロアピールが良かった)


レビューするつもり全くなかったけど、えらい言われようなので評価している人もいることだし色々と補足しておきます。

先ず作者の田中靖規先生ですが、ジョジョシリーズの荒木飛呂彦先生のアシスタントをやってた方で、第7部の『スティール・ボール・ラン』(後半失速していつのまにか掲載終了してたやつ)で技術を磨いたという経歴を持っています。作品はアシスタントを付けず全て一人で作業しているそうで、『レベルE』の作者の冨樫義博先生なんか思い出しますね。
創作意欲や技術力の高さが伺えます。

タイトルのサマータイムレンダはゲーム用語の「リアルタイムレンダリング」からきていて、オッドアイに隠された秘密、{netabare}「時を見る能力」{/netabare}で夏の時間を慎平が見ているという設定で名付けられたそうです。
元となる情報をコンピューターのプログラムを用いて可視化するコンピューター用語の「レンダリング」が情報ソース。

□以下は疑問点と個人的考察
・第6話、7話で南方ひづるのもう一人の人格が超人的能力を有していたことから、過去に何らかの形で影と接触していたことが判断できました。よって南方ひづるが影の弱点を知っていたことにも合点がいく。
また影の動きを止める方法が平面の3箇所を押さえるというのは、幅、奥行、高さの立体上の空間領域を指すものだと思われる。

・第5話で物語の進展があり冒頭見てもらえば分かる通り影の弱点が判明し、影を倒すにはハンマーなど殺傷能力があれば可能であることが第6話で証明されました。
つまり立体上の影を叩いても直ぐに回復してしまうが、影にダメージを与えることができれば銃以外の別の方法でも倒す手段があるということ。
それからオリジナルとコピーである影の身体的能力の差は、影の正体が人ならざる神のような存在 {netabare} 「蛭子命 :ヒルコノミコト」{オカアサンであるハイネ(第5話で宙に浮かんでテヘペロしてたやつ)はひぐらしで言うところの羽入みたいなもんでしょうか}{/netabare}であることからあって当然だということが言え、パワーバランスは影が抱えているリスクや弱点で取っているので、超人的能力がないと物語に緊迫感が出てこないし信憑性もない。外観はコピーできるけど内側の身体的能力は変わらないので、本編でも何度か出てきている"プリント"という能力を使うからと解釈すれば違和感はなし。
{netabare}更に慎平の能力は影のオカアサンであるハイネの能力なので、「神の力」と呼ばれる能力まではコピーできないということが推測できる 。
ハイネと慎平の右目、慎平の時を戻す能力と南方ひづる(南雲竜之介)の銃弾を避けた時の先を読む能力、ここら辺が繋がってくるというのは大体予想が付く。{/netabare}

・影のミオが力尽くで小舟澪を殺さなかったのは殺す必要はあったけど直ぐに殺す必要がなかったから。
7月24日に何をさせていたのか第5話まで観ればその理由が分かります。
キーワードは{netabare}「捕食 」{/netabare}。
陰自身オリジナルに逃げられた時のリスクを抱えているのも理由の一つだと思われる。
それと影は複製する能力に制限があるというのはよく見ていれば判断ができるので、オリジナルに逃げられる可能性はゼロではない。

・セーブポイントの位置が変わるのに気付くのが3週目ではなく4週目なのは、主人公の視点から客観的に自分を見ることができない心理状況を表現したかったものだと思われ、濡れている服を見てハッと我に返り気が付いたという設定の方が違和感がない。
セーブポイントの位置が変わるのはある意味この作品のセールスポイントと言えるところで、他作品とは違い時間軸が前にずれることでタイムリミットが発生し、より緊迫した状況を作り出したいというのが考えられる。

・影のウシオは映像シーンから慎平の時を戻す能力についてきているので、同じ能力を持っているということが考えられ、6話の最後で南方ひづるが言っていた{netabare}タイムトラベラー{/netabare}の可能性が高いと思われる。{netabare}ハイネと慎平の右目の繋がりからウシオもハイネと何らかの関係があることが推測できる。{/netabare}

・俯瞰俯瞰しつけーのは、作者が主人公を俯瞰野郎設定にしたかったそうで、 ジョジョで言うところの広瀬康一みたいな立ち位置のキャラクターを作りたかったとのこと。
この部分が主人公の目の能力に大きく関わっているので強調したいという考えが分かります。

このような感じで疑問点は徐々に解消されていくのだ。

じゃあこれ面白いのっていう疑問が出てくるけど正直設定が微妙かなと個人的には思っていたけど、それを感じさせない内容の面白さは持っていると思います。
世間では他作品に似ていると言われてるが、確かにそれは自分も思っていて例を挙げると、
初回メインヒロインらしきものが流血して死亡するシーン、タイムリープ要素、ドッペルゲンガー(同じ時間軸に同一人物が存在)、2クール長編作品→『シュタインズゲート』
死に戻り→『Re:ゼロ』又はやり直しの再上映(リバイバル)→『僕街』
舞台の背景や包丁のメッタ刺し、影の正体が{netabare}祟り神である蛭子命{/netabare}→『ひぐらし』
ここまでが世間で言われている内容でしょう。

以下は自分が観て付け加えて似ていると思った点。
ミステリーにホラー要素、頸動脈に包丁を突き刺し大量出血、オッドアイ→『Another』
ジャンルが同じで傷跡の類似性、似て非なるものが人を襲う設定→『屍鬼』
『寄生獣セイの格率』はあくまでも寄生だからちょっと違うかな...。

アニメに限らないノンジャンルだとトム・クルーズが主演するロボットスーツを装着して戦場で何度も死んでやり直す『オール・ユー・ニード・イズ・キル』
それからSFジャンルの『ターミネーター2』。
影が地面から起き上がってオリジナルに変わるシーンはT-1000が床から起き上がって警備員を殺して入れ替わるシーンそのまんまですね。実際に作者はターミネーター2に影響を受けているそうです。

こんな感じでデジャブ感じるからつまらないという意見も分からなくはないけど、評価するのはそこだけではないだろうし設定が似過ぎているのは減点要素にはなるが、タイムリープ能力を絡めた伏線の張り方や主人公と影の設定上の繋がり、徐々に伏線回収していく惹きの強い脚本の流れなど良くできている作品だと思うので、直ちに1点、2点付けるようなものではないという判断で物語の点数は平均の3.5点(→4.0点)。もっと先の回を観て判断したい。
よって設定が駄目だと感じるならば早目に視聴断念した方がいいだろうし、割りきって気にせず観れる人は楽しめるだろうから内容重視の場合は視聴継続かな。

投稿 : 2022/10/04
閲覧 : 672
サンキュー:

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