てとてと さんの感想・評価
4.0
物語 : 3.5
作画 : 4.0
声優 : 4.5
音楽 : 4.5
キャラ : 3.5
状態:観終わった
砂漠の廃墟、死者の都。地味だが情緒溢れる硬派ファンタジー映画
54分。砂漠をさすらう三人の旅人が、死者の都で盗賊から逃げたり、亡霊と対峙する。
【良い点】
ロードス島戦記などの、古き良き硬派ファンタジーライトノベルの系譜。
派手な魔法や超人的剣技は無い地味なアドベンチャーだけど、重厚な雰囲気が素晴らしい。
ハイクオリティーな作画やBGMで、古代の廃墟を冒険している臨場感。
滅びた砂漠の死者の都など、幻想的な雰囲気良し。
BGMは素朴だが古き良き硬派ファンタジー感が心地良い。
主人公ら三人の旅人が砂漠で水を求めて廃墟に入り、墓荒らし盗賊と鉢合わせして逃げる→死者を冒涜しちゃった盗賊のせいで亡霊にも狙われ→亡霊鎮めて脱出、というだけの地味なストーリーではあるが、重厚で見入ってしまう。
死後の永遠の繁栄を願った、砂に埋もれた廃墟を舞台に、生と死の死生観を静かに語り掛けてくる。
主人公は序盤、生きるために旅をした少女の最期に貴重な水を与え、中盤亡霊の永遠の誘いを断わり、後半水を与えた少女の霊から恩を返される。
ラストはかつて繁栄を極めた死者の都が砂に埋もれ、主人公たちは僅かな水を得て旅を続ける…
諸行無常。死者の永遠より、一杯の水の方を喜ぶ。それが生きるという事。
「男であれ女であれ、死者は皆土に還るもんだ」
明快な物語ではないが、言外に生きていく事の決意を感じさせる作品だった。
原作の途上を描いたストーリーで全然完結はしていないが、不思議と充足感がある。
男装の美少女、精悍な傭兵、浮世離れした美貌の賢者などキャラクターも魅力的。
ラクシ可愛い。
あまり深くは掘り下げられないが、彼らの関係性や過去は断片的ながら描かれている。
盗賊のボスも暴君だが言い回しが知的で教養感じさせたり、独特な宗教観見せたり、単なる粗暴な悪党ではない。
豪華声優陣。
高山みなみ氏の男の子っぽい美少女は絶品。
【悪い点】
旅人が廃墟で盗賊や亡霊に追われて立ち去るだけの話なので地味。
これといってドラマやカタルシスが無く、バトルの見せ場も無いので盛り上がりに欠ける。
そこが渋いのだけど、エンタメ的には地味。
原作からすると起承転結の承で始まり承で終わるので、単品作品としても地味。
主要キャラに魅力は感じるが、深い交流掘り下げがあるわけでもない。
【総合評価】7~8点
90年代の硬派ファンタジーの魅力を堪能できる良作。
エンタメ作品として減点法だと物足りない点が目立つ(物語キャラ4未満)が、捨て難い魅力あり。
古き良き90年代、こういった作品はもう作られまい。
評価は良い寄りの「とても良い」