nyaro さんの感想・評価
3.9
物語 : 3.5
作画 : 4.5
声優 : 3.5
音楽 : 3.5
キャラ : 4.5
状態:観終わった
ロードムービーの皮をかぶったSFでした。12話は短すぎ。原作ファン向けでしょう。
「魔女の旅々」のレビューや評価で本作の模倣というコメントがかなりあったので視聴していみました。なるほど、否定できませんね。
都市国家を旅する、そして、師匠的な存在、1話1エピソードの構成。現地の人間たちの善悪正義を超越したような内容。恋人同士の物悲しい物語。確かにそっくりでした。
2003年度版を見ていないので設定の知識はあいまいですが、まあ、だいたいのところは見てとれます。あのしゃべるバイクは師匠から引き継いだ、キノという名前は何かの称号?という感じでしょう。代々銃の名手?
本作を見て「魔女の旅々」では気が付きませんでしたが、ロードムービーの皮をかぶったSF…それも60年代くらいのスペースオペラである、ということですね。なぜ、都市国家なのだろう、とおもったらあれはSFでいうところの「惑星国家」です。だから法律も科学技術水準も思想も文化もマチマチです。
そもそも生産や国家間取引があまり活発そうに見えない状況など、本来地球上なら成り立たないような設定です。これを宇宙にもっていけば スッキリします。
移動国家やレーザーサイト、AI的な設定などほぼスペースオペラに置き換えれば説明が付きます。そもそもバイクがAI搭載の宇宙船です。そういえば3日という期限は銀河鉄道999のその惑星の1日停車するという感じを思い出します。銃もコスモドラグーンみたいですし。なにより生活感がないのが非常にSF的です。
どうなんでしょう。本作だけ見ても主人公の奥行が分からないので、のめり込めない部分はあります。「魔女」の方が旅のきっかけも因縁も説明があるので感情移入はしやすいです。まあ、どちらの作品もヒューマニズムがあるのかないのかがわかりづらいのは一緒ですね。加えて本作は俺TUEEEすぎますので、危機感はないですね。お金の問題や目的も「魔女」の方が後発な分説明は丁寧です。なんといってもイレイナ可愛いです。
ただ、ラノベで読んだ場合、この1話完結1エピソードを楽しみながら、過去の因縁や人間関係のつながりなんかを楽しむのでしょう。その点では小説を読んだ場合の印象が違うだろうな、という想像はつきます。未読なのではっきりは言えませんが、そうなると12話だと短すぎですね。2クールは過去の解きほぐしも含め欲しいです。これは「魔女の旅々」と同様の不満です。
さて、ストーリーで殺人とか移動の国とか博物館のバイクとか大人とか、比較的悲惨な話が多いですね。そこに寓話性を見出すこともできますが、どうでしょう。
例えば移動する迷惑な国はどう考えればいいでしょうか。非の比率が高いのは移動する国側だと思いますが、キノの行動はどう考えればいいでしょうか。一方で殺人の国は多分に寓話的ですよね。治安というものをどう考えるか。自由をどう考えるか。という要素は読み取れます。昔の西部劇に出てくる開拓村の論理にみえます。
既視感はあるようなないようなという感じで、オリジナルがあるにせよ良く練られていると思います。
話全体は面白いですけど、多分にラノベで楽しむスタイルの物語ですので、おそらく一気見は向かないでしょう。ポツポツと1話2話ずつ楽しむのがいいのではないでしょうか。
ただ、私の印象では原作ファンの映像化のニーズに応えたような作品だなあ、とは思いました。
機会があれば2003年度版も見ます。その上で評価、特にストーリーとキャラは再考するかもしれません。