ようす さんの感想・評価
4.1
物語 : 4.0
作画 : 4.0
声優 : 4.5
音楽 : 4.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
「そして生まれたこの世界は、思ったより綺麗なんだ。」
2015年に公開されたアニメ。
「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」のメインスタッフが再集結して製作され、
「空の青さを知る人よ」と合わせて、
今は“秩父三部作”と呼ばれる作品の1つです。
120分ほどの作品です。
● ストーリー
小学生の成瀬順(なるせ じゅん)は、
山の上のお城に憧れているおしゃべりな女の子。
お城(ラブホテル)から知らない女の人と一緒に出てきた父親を見て、
お父さんは王子様だと嬉しくなり、母親にそのことを話す。
結果、両親は離婚してしまう。
おしゃべりがこれからも苦難を持ってくるのだと、目の前にいきなり現れた“玉子”に言われ、順は自分の“おしゃべり”を封印してしまう。
高校2年生になった順。
喋ると腹痛が起こるため、クラスで一言も発さない。
ある日、担任によって坂上拓実(さかがみ たくみ)、仁藤菜月(にとう なつき)、田崎大樹(たさき だいき)と共に「地域ふれあい交流会」の実行委員に任命される。
順も抱えているものがありますが、
他の3人も抱えているものがあって。
心のどこかにこのままでいいのかと悩みながらも変わろうとしなかった若者たちが、外部から与えられたきっかけで変わっていくストーリーです。
クラスの誰もやる気のなかった地域ふれあい交流会(ふれ交)。
それを引っ張る実行委員は、
立候補がないからという理由で担任の独断指名でしたが、
これがちぐはぐなようで、クラス全体をイベントに積極的に参加させるためには完璧な人選なんだよなあ。
男子全体を引っ張れるのは田崎だし、
逆に田崎がリーダーじゃないと彼をクラスイベントに引き込めないだろうし、
女子からの信頼が厚く、
優等生な仁藤がいれば全体の進行は安心。
そしてクラスイベントに仲間入りしにくそうなオタク男子チームからは、一見やる気がなさそうだけどちゃんとできる坂上が適任、
(音楽のことも担任は知っていたかもだしね)
あとはクラスで一人浮いてる成瀬。
彼女をクラスイベントに参加させるには彼女自身が実行委員になればいいという大胆な判断。
結果、この人選がクラスを変えていくわけで、
大成功です。
最初はみんな面倒に思っていたけど、
本気で何かをするって気持ちがいいものだからなあ。
一度腰を上げてしまえば、
案外楽しいものなのよね^^
坂上との出会いで変わっていく順。
しゃべることはできないけど一生懸命な順に周りも影響されていく。
そしてクラス一体となって作り上げるミュージカル。
ストーリーはきれいにまとまっていました。
恋も絡んできます。
恋の結末は残念に思うところもあったけれど、
今はこれでよかったんじゃないかなと思っています。
{netabare} 心を閉ざしている自分に優しく声をかけてくれる異性がいたとしても、それが恋としてうまくいくかは別問題だからその気になったらいかんぞという忠告にも受け取れましたw {/netabare}
《 言葉 》
この作品のテーマである“言葉”については、
いろいろな角度からのメッセージがあったように思います。
【①自分の気持ちを伝えること】
私もこれがものすごく苦手で。
文章とか、時間をかけて何を話そうかなと考えた時には、
あれこれと伝えたい言葉が浮かんでくるんだけれど、
その場で考えて話そうとすると、
頭の中が真っ白になって何も思いつかない。
一生懸命話しても、
「違う、自分が伝えたいのはこういうことじゃない」と、
うまく言えなくてもどかしくなったり。
家族とか、親しい間柄でケンカになったときには、
面倒になって自分の気持ちを伝えることをあきらめてしまったり。
相手ともめた時の一番楽な解決策は、
相手の言い分をすべて受け止めて自分の言い分は押し殺すことだったり。
(受け入れはしない。状況によって必要なことは伝える。でも押し通すことはしない。)
そんな自分だから、
順にも拓実にも、共感できるところがありました。
ただ順と私が違うのは、
順は根本的にはおしゃべりな性格であるところかな。
ほんとはおしゃべりな子だから、
私のような口下手な人間とはまた違うんだよね。
だから話すことが苦手な子が彼女のように変われるかと言われると、
彼女とあなたは違うよと理解しなければなりません。
順は、ただ声が出ないだけの人だからなあ。
【②ポロリとこぼれる本音】
ふれ交の話し合いの時とか、
本番直前の順の行動に対してとか、
クラスのモブからポロリと聞こえる言葉は、
決して心地よいものではない。
だけど、誰の心にもありうるネガティブで、
そして、聞く人が傷つく言葉です。
温かくて優しい人を描きたいのならば、
つぶやかれることのない言葉。
実際に見ていてこれらの言葉を聞くと、
心がちくちくしましたし。
だけど、そんな言葉を隠さないのは、
この作品の良さでもあると思いました。
言葉は人を傷付ける。
それはつまり、世界は優しい言葉だけじゃできていないってこと。
誰もが持ってる本音は、
気持ちのいいものばかりじゃない。
それでも、そういう言葉も含めて、
私たちは伝え合うことで関係を築く。
ネガティブなものも、
相手の気持ちを理解するためには必要な言葉である。
いいものも悪いものも、
自分たちの世界を豊かにするんだと信じて。
…でも嫌な言葉って傷つくから嫌だけどね。難しい。笑
● キャラクター
坂上がイケメンだった。
初めて話すクラスメイトの言いたいことを
最後までしっかり聞いてくれて、
やりたいことを応援してくれて、
どんだけ性格イケメンなんだ…。
これは惚れないほうがおかしい。
声が内山昂輝さんなのがまた、
イケメン度をぐいっと上昇させますよね。笑
仁藤さんはいい子だった。
頭が良くてよく気が付く子だから、
全部わかっちゃう。
それでも八つ当たりをしないのは、いい子です。
{netabare} いきなりの代役主人公を最初から最後までやり切るなんて… {/netabare}ポテンシャル最強すぎません?笑
田崎は最初はもちろん嫌いでしたけど、
野球部らしい礼儀正しさは好きでしたw
メインキャラ4人を中心に、
声優さんはとてもよかったです。
水瀬いのりさん演じる順の声が、可愛かった(*´ω`*)
● 音楽
【 主題歌「今、話したい誰かがいる」/ 乃木坂46 】
この曲が微妙でした。
良くもなく悪くもなく、とにかく普通。
感動的なラストでこの曲かあ…
ありきたりすぎて、微妙な曲調でした。
ちなみに作中ではミュージカルをするということで、
有名既存曲にオリジナルの歌詞をつけて歌っています。
これがいい感じなのよね…!
それぞれのエピソードを把握したうえで、
ミュージカル曲聞くと、ちゃんとしてて、すげーってなります。
中でも「心が叫びだす」「あなたの名前を呼ぶよ」は、ベートーヴェン「ピアノソナタ第8番 悲愴」とハロルド・アーレン「Over the Rainbow」の2曲を同時に歌うというもの。
これは私の中では新しかった!
そしてものすごくよかった!
主題歌が好きになれなくて音楽の☆は4止まりなのが、
非常にもったいないところです。
● まとめ
まとまりがよく、
安心して楽しめる作品でした^^
これにて私の「秩父三部作」視聴完了です。
(順番は違ったけれど。笑)
私はこの「ここさけ」が一番好みだったかも。
彼女たちのその後を考えると、
また一波乱ありそうで、それはそれで気になるところ…。
(特に恋関係)
精一杯の気持ちを言葉に乗せることは勇気もいるし気力もいるけれど、
その先に待っているのは案外綺麗な世界なのかもですね。
そうだといいなという希望も込めて。