てとてと さんの感想・評価
3.9
物語 : 4.0
作画 : 3.5
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
突然戦う宿命背負わされた少年たちのバトルアクション。重厚な力作だが打ち切りの不遇作。
異世界からの侵略者と戦うべく、同じ異世界から来た桃太郎モチーフの獣人戦士たちと共に、主人公らが戦士として立ち向かう。
【良い点】
ファンタジーバトル物ながら、シリアスで重厚なドラマ性。
主人公が異世界に呼ばれる系が多い中で、本作は地球が舞台で異世界からの侵略者に立ち向かう。
侵略で破壊されていく街や傷付く人々など、戦災の描写が重く、よくある痛快ヒーロー物と一線を画す。
人々の為に戦うのに疎まれる展開は無敵超人ザンボット3の路線継いでいる。
中盤以降は主人公らが廃墟と化した街を転々とするゲリラ戦続き、独特の雰囲気も魅力。
主人公は普通の高校生として生きてきて、突然実はお前は異世界の戦士だ、と戦いを強いられる。
サンライズ矢立肇作品だけあって、ザンボット3以来の子供が戦争強いられる系の重みあり。
ふたりの主人公が戦いの現実、敵含めた人々の死、自身の死の恐怖など、戦士としての葛藤を丁寧に描いている。
戦いに優しさは不要か?
優しさを勇気に変えられぬものは戦士になれぬ。
ただし葛藤はするがウジウジ引き摺らず、重厚なドラマの中でテンポ良く成長していくのと、個々のストーリーが良いためか、ストレスはあまり感じず。
個々のエピソードを通じて優しさや愛をテーマとしてしっかり描けていた。
それだけならば普通の良作だけど、本作の凄いところは戦争の中で無理矢理背伸びして成長した破綻まで描いている点。
終盤は桃矢の破綻が浮き彫りにドラマが重苦しくなり、逆に弱かったキラが大成すると思わせてのドンデン返しで揺さぶられる。
御都合主義ではない、重厚なドラマに挑戦した気概を感じる。
桃太郎モチーフの獣人戦士たちも魅力的に描かれている。
戦士の先達として未熟な桃矢(とうや)や煌(きら)を導いたり、個性的な地球人たちとの交流で彼らもまた学んだり。
理知的なグレイファスとビークウッド、若年で感情的なガリエルとテディアムそれぞれのドラマが良い。
彼らアニマノイド各々にスポット当たる個別回が軒並み良く、特に18話病弱少女と狼獣人のハートフルな交流と悲劇は印象的。
ゴリラ(猿)獣人ガリエルが一番人間臭く、地球人のバイタリティー溢れる女性と交流して成長する回が軒並み面白い。
戦いと無縁だった人間主人公組と、戦士たるアニマノイド組が、互いに学び合い成長していく。
前半は桃矢たちが戦士として成長というより割り切っていくが、後半は逆にアニマノイドたちが戦う以外の色々な価値を知っていく感じ。
敵側の思惑や内部抗争も、戦隊物の敵組織のお約束で中々面白かった。
敵幹部も武人肌や卑劣な傭兵や権勢欲に憑かれた小物などキャラが立っている。
最強ライバル格のダー・レムは同年の「ふしぎ遊戯」の心宿(なかご)ぽいカリスマあり、彼を慕う女戦士ダー・ユンの存在もふしぎ遊戯ぽい。
ユンに惚れていた敵戦士の散りざまなど、敵側のロマンスの方が良かった。
ドーラ・ギルは哀れな小物司令官だけど、終盤の執念と末路は印象的だった。
なんとなくダイ大のザボエラぽくて好き。
作画は粗さはあるものの演出が力強く、バトルアニメとしての迫力は申し分なし。
楽曲は主題歌がカッコイイ、テーマに沿っている。
【悪い点】
2クールで打ち切られ?中途半端に終了。
終盤が駆け足で盛り上がりはあるものの雑、最終話で唐突に新要素や新展開で戸惑う。
ダブル主人公どちらも居た堪れない。
桃矢は終盤いいところ無しのまま強引に主人公補正で勝たされ、キラは成長したのに唐突に退場させられた感。
2クール終盤で大きな転機を迎えた矢先の打ち切りの悲劇か。
yuugetu氏が仰る通り、時間が無かったに尽きる…
特にキラは好きな女の子に命を懸けた勇気を拒絶される。
これもあり、ヒロインの印象が悪いのも難。健気な良い子なんだけど、戦場がリアル故に、戦場で足引っ張るヒロインの印象はどうしても悪くなる。
少年たちが戦いの中で短期間で成長を強いられ、背伸びをした挙句に犠牲になる物語。
そういう重厚さもまた魅力とも言えるけれど、楽しくはない。
個々のストーリーは良いが、縦軸ストーリーが単調なのが難。
敵側のドラマもレムにユンが捨てられるのが唐突だったり、その後のユンの見せ場が中途半端だったり。
終盤の内ゲバは面白くはあるが、本筋の盛り上がりには枝葉でしかない。
戦闘シーンは気合入ってはいるが、やや単調。
必殺技とか特に無いためか、外連味に欠けてやや地味。
【総合評価】7~8点
平成初期の隠れた名作、になりきれなかった不遇作。
捨て難い魅力に溢れているが、粗も多い。
評価はとても良い付けたいところだけど惜しい「良い」