剣道部 さんの感想・評価
4.0
物語 : 4.0
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
出会いは人を豊かにし、別れは人を強くする
[文量→中盛り・内容→雑談系]
【総括】
人が生き、死ぬこと。
ものすごく深い重いテーマに、真正面から取り組んだ、高クオリティな作品。
「めっちゃNHK」ってアニメです(笑)
重い話がいくつかありますが、ちゃんと引き込まれるから大丈夫です。1話目を観て、合うか合わないかが判断できるアニメだと思います。難しいアニメが嫌いじゃなければ、オススメです。
《以下ネタバレ》
【視聴終了(レビュー)】
{netabare}
以前、新聞を読んでいたら、素晴らしい短歌に出会った。
[生き方を 教えてくれた おじいちゃん
最後の教え 人は死ぬこと]
高校生が詠んだ歌で、何かの全国コンクールに入賞したという記事。
「生きる」と「死ぬ」の対比が良いとか、それが、「初句から結句にかけて、まるで人生のような構成になっている」とか、そういう技巧的な話はさておき。
まずは、この高校生とお祖父様の関係が、とても豊かなものだったのだろうということ。そして、「人は死ぬこと」という端的で静謐な言葉が、動かせざる事実としてそこにあるような語感の鋭さ。祖父の教えを胸に生きていくという決意、強さ。
これこそが、「詩」である。華美な言葉で飾らずとも、生きてきた時間と実感が、言葉の中には宿る。
人は、人と出会い、共に過ごす中で多かれ少なかれ影響を受ける。自分にはない何かを取り入れていく。
それが、「出会いは人を豊かにする」ということ。
しかし、1人の人間から学べることには限りがあり、いつまでもその相手だけに依存していると、成長は止まる。
学生時代を思い出しても良い。小・中と幼馴染みで過ごしてきて、高校も同じ仲間で過ごした。もっと言えば、1度も地元から離れず、気の置けない仲間達とだけ生涯を歩む。そこには、確かな温かみと、安心感・安定感がある。
それを別に、否定はしない。良いことだとも思うし、1つの人生の在り方として尊い。
ただ、もし高校で1人地元を離れ、新たな環境に飛び込んだ時。広い世界を知った時。
大きな恐怖心とリスクはあるかもしれないが、これまでとは異なる環境の中で、新たな学びがあるかもしれない。何より、その新たな環境を戦う力(この場合の友達作り)は、過去の経験から培われたものであり、それを自分が消化し、自分の力として発揮していかなければならない。
そこで初めて、過去は自分の力になっていく。いつまでも他者に甘えてはいられないのだ。
それが、「別れは人を強くする」ということ。
正に、冒頭に紹介した高校生の短歌であり、このアニメだ。
「フシ」は、白色だ。彼の全ては、出会った人や物、事で染められていく。つまり、正義と出会えば正義に、悪と出会えば悪に。性善説でもなければ性悪説でもない、もっと純粋な人間の在り方を、比喩的かつ大袈裟ながら、正確に表していると思う。
この作品、私はとても好みだった。やっぱり、魅力的なジジイとババアがいるアニメは名作率が高いな(笑)
余談だが、このアニメが好きな人はぜひ、有川浩さんの「阪急電車」という小説を読んでほしい。短編連作形式の恋愛小説だが、人が、人との小さな関わり合いや、ちょっとしたきっかけを中心に、豊かに、強くなっていくことが分かる、名作小説だ。心がじんわりと温かくなること、間違いなしである。
{/netabare}