STONE さんの感想・評価
3.8
物語 : 3.5
作画 : 4.0
声優 : 4.5
音楽 : 3.5
キャラ : 3.5
状態:観終わった
畳みきれなかったかな
原作は未読。
複数の神候補の中から次の神を選ぶが、その過程においては必須条件ではないとはいえ、
神候補の殺害もありということでデスゲーム要素もある内容。
デスゲームものにおける主人公のスタンスの描き方というのはなかなか難しいもので、
積極的に殺人に興じるのは受け手(読者、視聴者など)の共感を得られにくいし、逆にいつまでも
ゲームに対して後ろ向きなのは、例えば「否応なしに参加させられる」などの作品内設定は
ともかく、メタ的観点では「プレイヤーとしてどうよ?」みたいにこれはこれで受け手を
イライラさせる存在になってしまう。
で、本作の主人公である架橋 明日は徹底して不殺を貫く。
デスゲームものに限らず、主人公が殺人を否定するような場合、作り手の考えがそこに
投影されているように思えたりするんだけど、本作の架橋に関しては一種の異常者として
描いているように思えてしまう。
まあメタ的には架橋に憑いているナッセが特級天使のため、ハンディキャップ的な設定の
意味合いもあるように思える。
おそらく原作の大場 つぐみ氏はプロット優先で、「受け手に愛される主人公を作ろう」
みたいな考えはないんじゃないかと。
原作者を同じくする「DEATH NOTE」の夜神 月もそんな印象だったし。
もっとも夜神の場合、目的のためには殺人も厭わないと正反対な性格で、本作においては
架橋の敵であり、ライバルである生流 奏の方が性格は近そう。
この架橋の考え方は、通常なら幼い頃の親から受けた教えが成長過程において変化していく
ところを、親が殺されてしまったためにそのまま持ち続けてしまったという一種の歪みのように
思えるが、この辺は幼い頃に志した「正義の味方」に憑りつかれた感のある
「Fate/stay night」の衛宮 士郎に通じるものを感じてしまう。
親の方は教育のため極端な言い方をしたようだが、母の方は極端な主義思想を持っている
ようにも思える。
この歪んでいるという点は他のプレイヤーも大なり小なり同様だが、天使もそんな感じで、
中でもナッセは可愛い表現で恐ろしいことを平気でのたまったりするのが面白い。
まあ、これに関しては歪んでいると言うより、人間と異なる常識、感性、道徳感に起因
しているのだろうけど。
複数のプレイヤーの中から最終勝者一人を選ぶようなデスゲームものの場合、
ゲームプレイヤー全員が同時期に描かれることはあまりなく、局面ごとに主人公に関連深い
キャラのみが入れ替わり立ち替わり描かれることが多い。
まあ、プレイヤー全員が少数ならともかく、全員を同時期に面白く描くというのは至難の技
だろうし、受け手としても多数のキャラが同時に動いているのはストーリーを追うのが大変
だろうしで、絞り込んだキャラ中心になるのは妥当かなと思う。
本作もそういった傾向にあるんだけど、特徴的なのは生流というキャラが主人公以上に
ストーリーを動かしており、そのために生流がいる時と退場後では違った作品になったぐらいに
様変わりしてしまう。
生流に関しては架橋とは正反対の考え方で、個性は強いし、キャラの掘り下げも深く、架橋の
ライバル的存在。
そのために最後の方まで架橋と対峙し続けるのかと思っていたら、中盤でそれも割と呆気ない
感じで退場したのはちょっと驚いた。
後半はちょっとした陰謀めいた計画はあるものの、いわゆる悪役的存在はおらずに
米田 我工を中心とした神や幸福などをテーマにした問答中心。
個人的には宗教観や哲学などは嫌いではないのだが、架空の人物のご高説を長々と
聞かされるのは「エンタメ作品としてはどうかな?」という感じで、冗長な感じは否めなかった。
それでも最後に神を決定して、めでたしめでたしかと思いきや、最後にどんでん返しが。
こういう終わり方そのものは嫌いではないけど、それまでに伏線めいたものがあったわけでも
なく、インパクト重視のための取って付けたような終わり方という感が拭えない。
13人の神候補だが、モブと変わらないようなキャラもいたりして、うまく扱いきれなかった
印象。
他にもナッセが他の天使とは違うといった描写や、意味ありげだった星 雅矢と弓木 愛美の
警察カップルなども中途半端な感じで終わってしまったような。
2022/05/08
2024/06/15 加筆・修正