101匹足利尊氏 さんの感想・評価
4.2
物語 : 4.5
作画 : 3.5
声優 : 4.5
音楽 : 4.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
此処はイカれた北の開拓地(フロンティア)♪
明治末、北海道。アイヌにまつわる金塊。隠し場所を入れ墨として人皮に刻まれた網走監獄の脱獄囚。埋蔵金を巡る諸勢力の暗闘が続く中、日露戦争帰還兵の男と鍵を握るアイヌの少女らのサバイバルを描いた同名コミック(未読)のアニメ化作品の1クール目。
【物語 4.5点】
エンタメ性抜群♪面白い!
設定の骨格は往年のアメリカ西部劇とも類似。
(フロンティア≒北海道開拓地の無法ぶり。ゴールドラッシュ≒金塊伝説。
アメリカ先住民≒アイヌ、南北戦争≒日露戦争、幕末の戦いの爪痕etc……)
生きていた土方歳三など、方々に大ほらを吹いているわけですが、
取材とそれに基づくプロット構築は緻密であり、
広大な北の大地に大風呂敷を広げてもシナリオは破綻せず。
原作者が取材の際「かわいそうなアイヌを描くのはもういい」と言われたというエピソードが印象的です。
獲物は神から人間に授けられた物。殺めて霊(カムイ)を神に返す。
といったアイヌ独特の思想も開陳されますが、
人も獣も死ねば肉塊に成り果てる大雪原においては、
アイヌ思想も絶対視されず相対化される。
アイヌを上から見下さず、現代人が卑下して有難がたがったりもせず、正面から向き合う。
アイヌもマタギも、第七師団も新選組も、その矜持もろとも呑み込む懐の深さが物語の大きさに繋がっています。
3期まで観ると日本に留まらないスケールの伏線が張り巡らされていたことに驚かされます。
北海道でアイヌ?ま~た日本人が贖罪させられるの?
と二の足を踏んでいる方がいるとしたら(←私のことですがw)
勿体ないので今秋4期放送が予定されている今からでも飛び込みましょう。
部位欠損だの、{netabare}勃起{/netabare}だのw下品な要素が気持ち良くギャグに昇華する。
本作はむしろポリコレとは真逆の無礼講。
フリーダムな人間讃歌(狂宴)に酔い痴れましょう♪
【作画 3.5点】
アニメーション制作・ジェノスタジオ
背景で目を引くのが紫色の主線。
寒色で縁取られた小樽の街並みや雪林が、
時に木々を裂き、人命を脅かす寒波に説得力を持たせる。
“飯テロ”も仕掛けてくる本シリーズ。
本作の飯テロは一枚絵の美麗さで垂涎させるのではなく、
仕留めた獲物の皮と肉を剥ぎ、チタタプ言いながら素材を細断し、調理する。
一連の過程をグロに臆せず再現することで舌鼓を打たせる用意周到な飯テロ。
ヒンナ♪ヒンナ♪
獣の皮を剥ぐなら、人の皮も剥ぐのがフェアと言わんばかりに
戦闘シーンでも相応の血飛沫が舞う。
容赦なく演出されたバトルの緊張感により、ここ北海道が戦場回想描写などから連なる、
男たちの地獄の続きだと思い知らされます。
【キャラ 4.5点】
特濃w
“不死身の杉元”こと元陸軍・杉元 佐一。
主人公にありがちな無敵キャラ設定ですが、ここまで突き抜けるとインパクト大。
“第七師団”を率いて金塊で野望完遂を目論む鶴見少尉。
一部、脳が欠けておりアブナイですがw指揮力&カリスマ性は卓越。
元新選組副長・土方 歳三。齢70歳を越えても剣術も銃の腕も衰えず。
この死に損ない3人だけでも既に濃密ですが、
そこへ北の獣にまで概ね坊主頭を噛み付かれるほど皆に愛される軟体脱獄王・白石。
額にはんぺん貼り付けたようなコブで壁を強行突破する不敗の柔道王・牛山。
など曲者揃いの網走監獄囚人らが続々投入される極限状況w
それだけにアイヌ少女のアシㇼパさんが癒やし。
凛とした狩人としての生き様だけでなく、
和人の味噌やカレーをオソマ(≒ウ○コ)と酷評する変顔まで可愛く思えてくる不思議w
て言うか女の子に{netabare}チ○ポ先生!{/netabare}とか連呼させるんじゃありませんw
【声優 4.5点】
各登場人物に深いエピソード、アブナイ性癖が埋蔵されている本シリーズ。
キャストにも人生語り等に迫真が求められますが、
杉元役の小林 親弘さんの回想、
アイヌ語にも対応したアシㇼパ役の白石 晴香さんの逸話の語りには
広がりを感じ惹きつけられます。
2期以降になると引力のあるキャストの語り口によるブラフの飛ばし合いも本格化するので、
1期の内に彼らの口車に乗り慣れておきましょう。
ただ私も{netabare}インカㇻマッ役・能登 麻美子さんの脳トロボイスで占われたら全財産溶かすと思いますw{/netabare}
鶴見少尉役の大塚 芳忠さん。土方歳三役の中田 譲治さん。
両ボスキャラボイスも貫禄十分。
加えて格闘技イベントでも対決を煽った実績がある
ナレーション・立木 文彦さんが次回予告でタイトルコールし、
北の大地に金塊争奪戦のゴングが鳴る。
【音楽 4.0点】
劇伴担当は末廣 健一郎氏。
アイヌ民族楽器・ムックリがびよ~ん♪とアレンジされたりもするがスパイス程度。
基本は管弦楽、ロックなどの定番構成で、普遍的なエンタメ性を追求。
この傾向は良作男性バンド音楽であるMAN WITH A MISSIONによるOP主題歌「Winding Road」、THE SIXTH LIEによるED主題歌「Hibana」でも同様で、
音楽でも親しみやすさが重視される。