dryeyeつっちー さんの感想・評価
4.8
物語 : 4.5
作画 : 5.0
声優 : 4.5
音楽 : 5.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
おもしろい!
通称「ゆゆゆ」ですね。とても面白いアニメでした。
こう乙女が不思議な力で戦うアニメをジャンルではなんていうんですかね?バトルヒロイン?魔法少女?とにかく「勇者」と名乗ってもそれ系統ではあるのですが、この作品は今までの作品とは違ってかなり日常系の描写にも振っているのが特徴です。
某有名魔法少女作品は件の3話からずっとシリアス・鬱展開という感じですが、一方この作品の3話は新入部員を歓迎したりしているわけで、まあちょっと10年代のアニメにしてはエンジンかかるのが遅いかも知れません。
だけど後半すごいですよ。敵と戦ってゲージを溜め、それがMAXになると「満開」という強化変身が行えるのですが、それを使うと身体の機能が一つ、失われてしまうんですよねー。ひゃーエグい!
最初はみんな一時的な症状だと思うんですよね。「身体が疲れてそういった異常が出てるんだー」って。でも普通にそう思いますよね。今までの作品が強化変身のリスクとして体力の消耗とか、反動で身体を傷つけて血しぶきプシャーって感じだったじゃないですか。それを目が見えなくなるとか耳が聞こえなくなるとか、そういった感覚の消去にしてしまっているのは後にも先にもこの作品だけでしょうね。下手に真似したら“パクリ”の烙印を押されかねません。
この感覚の消失を劇中では「散華」と呼んでいるのですが、その行き着く先が包帯グルグル巻きのベッド生活なわけでして……そんな先代勇者の乃木園子の暴露によって「勇者は国を守る戦士であり生贄でもあること」「散華は身体を神様の供物に捧げることなので戻ってこない」ことがわかります。ここから物語が一気に動き出し、以前の名作たちに負けず劣らず重くなります。死ねるだけまどマギとかシンフォギアの方がマシなんじゃないですかね?こっちは勇者が嫌になっても自殺も出来ませんし……
勇者というお役目の真の役割、満開の真の代償を知った後の主人公たちの気持ちや戦いへの葛藤というのがとてもよく表れていたと思います。
とくに主人公、結城友奈の優しさが半端ないですね。敵と戦ってしまうとゲージは嫌が応にも溜まってしまうため、極力自分が全てを引き受けようとしてしまうんですよね。「技を試したかった」と嘘を言って一番溜まってしまう敵へのトドメを刺してしまったりとか……ほんと、涙ぐんでしまうくらい優しい行動やセリフを口にするんですよ。そしてそんな優しさがあるからこそ最後の戦いがまた心苦しんですよね。
そういった登場人物の葛藤や悲痛な思いを、割とアッサリと救ってしまった展開がどうやら批判として結構上がってしまっているようですね。個人的には「じゃあみんなベッド生活を送るエンド観たかった?それが観たかった人ほんとはこの作品嫌いなんじゃないの?」って思ってしまうんですけどね(笑) 個人的には、人間の好きな神様のいる世界だし、こんな“優しさ”もアリかなーと思います。もう少し説明があればもっと良かったかも知れませんね。
アニメーションを担当したのはStudio五組。登場人物の日常シーンやバトルシーンをとても可憐に描写してくれました。
驚いたのはモブキャラたちもメインキャラと遜色なく動かしていたんですよね。学校やうどん屋のシーンで見られます。動かす必要は本来ないんでしょうけど、やはり動くのが自然なんですよね。面倒な労力だろうに良くやりました、花丸(←何様だよこれ笑)
そして音楽、これが素晴らしい!
担当は岡部啓一さんと、彼が所有する会社「MONAKA」です。楽曲面でとても評価を受けてるゲーム「ニーア オートマタ」シリーズの音楽を手掛けてるタッグでその片鱗をこのアニメでも感じ取ることができます。全体的に神秘的で和風テイストなBGMを耳に入れることができますよ。
終わりが急な印象も受けましたが続編もありますし、この作品単体で完成というよりは続く勇者の章、そして大満開の章で初めて完成する作品だと思います。そしてバトルヒロインの中では一番、観るのが恥ずかしくなく感情移入の捗った作品になりました。
素晴らしい日常を皆が送っている。だからこそ勇者がどんなにひどいものでも戦うんだと、そんな主人公たちの気持ちはどの作品の模倣でもないと思います。