esm24722 さんの感想・評価
3.8
物語 : 4.0
作画 : 5.0
声優 : 3.0
音楽 : 4.0
キャラ : 3.0
状態:観終わった
美しさで最後まで引っ張る
ネタバレ有で簡単にこの物語を説明すると、、地球外生命体の到来&ファーストコンタクトに上手くいかなかった人類は、その代償として東京だけに問題を抱えてしまうことになる。水没し、泡だらけになる東京。その内日本の中でさえも置き去りにされてしまう。世界的な都市としての面影も今は昔、災害孤児たちの遊び場となってしまう。パルクールのバトル、バトルクールで物資を取り合うゲームに興じる子供たち。研究の名目で子供たちを監視し、一応の義務を果たす大人達。水没してしまった東京には一部重力異常が発生し、ブラックホールさえ出現していた。これが設定ですが、要するに災害によって無法地帯と化した東京の話で、一応の政府の監視によって秩序は保たれていますが、アスレチックと化した瓦礫の山の中で限られた物資を景品として子供たちがゲームをしながら競い合い生活しているという話です。
ここにプロットポイントとして登場するのがウタで、ウタが主人公の生命の危機に現れ人魚姫的に助け、仲間になるというところから物語が駆動します。実は泡は地球外生命体でその一部が人類に興味を持ち、再度接触を図る展開です。人類としては赤ん坊のようなウタが人類から聞かされる人魚姫の話や数多の文献から得られる人類の知識に触れ、成長し、彼らを理解していくことになります。泡の中にも「一」と「全体」という構図が存在し、急に人類に近づいていくウタの存在を許せない全体としての泡がファーストコンタクトの時同様人類に牙をむきます。主人公を含むグループは泡や重力異常の真実に近づきたいわけですが、全体としての泡は強く拒絶し、ウタと主人公の初恋を引き裂く構図ですね。主人公には泡に干渉する特殊能力があるわけですが、黄金比に基づく音階を発する泡とそれを聞き取る主人公というのも面白いモチーフでした。
結局ウタが主人公と初恋に落ち、破局し(消滅)その中で人類の感情や知識を得て全体に還元することで泡と人類の共生は果たされることになります。つまりお互いの成長を持って物語が大団円を迎え次のフェーズへ突入できるのです。
展開が急なのが引っ掛かるでしょうが、物語の構造としては非常に手堅くキチンと考えられているのが分かります。超作画と音楽で100分一気に纏めた手腕も流石でしょう。SFらしく最低限の台詞と表現豊かな映像で表現したことも評価されるべきです。
しかし物語の軟着陸という意味では少し親切さや馴染み易さに欠けると言えるかもしれません。パルクール自体や超絶作画によるウタ(非人類)の初心な可愛さ、一緒に運動し成長する様などエヴァンゲリオン的なシンクロニシティを使って視聴者に感情移入を誘っているのですが、どうやらこの展開にあまり乗れないひともいるようです。理屈や台詞を導入に物語に入っていくタイプは取り残されてしまうかもしれません。そういう人たちには楽しむためのハードルがやや高いと言わざる負えません。