てとてと さんの感想・評価
3.1
物語 : 3.5
作画 : 2.5
声優 : 3.5
音楽 : 3.0
キャラ : 3.0
状態:観終わった
ゲーム内転移クエストで厨二病から成長するか否か?良作とは言い難いが捨て難い魅力あり
別冊少年マガジンの漫画原作で2期24話。
人間嫌いの厨二病拗らせた主人公が、GANTZのゲーム世界転移版めいたクエストを強いられていく。
【良い点】
一見テンプレに見えるがかなり捻っていてユニーク。
異世界勇者だけど弱い、すぐ死亡するが数十秒で生き返れる。
死亡中は幽霊状態?パーティー全滅で現実世界でも死亡。
という設定を主人公がフルに活用したクレバーな立ち回りが面白い。
「亜人」や古くは「サザンアイズ」の初期めいた、弱いけど不死身活かした立ち回り、奇しくも講談社作品なので、それらの系譜でもあり?
理不尽でふざけたゲームマスターによる理不尽クエストは(他レビュアーの方々もご指摘の通り)「GANTZ」の後追い作品と思われるけれど、GANTZとは異なる視点やテーマ、持ち味を出している。
GANTZが極限の生死の危機で社会的規範や道徳観を揺さぶるのに対し、本作はもっと緩いゲーム的環境下で、厨二病と人との関わり方を描いている。
主人公の在り方は厨二病的だけど、多くの人が本音で抱えていたかもしれない冷たい価値観の一端であり、同意はできないが、それに向き合い、葛藤し、どう変わっていくのかを描いた作品。
主人公は合理的と銘打って自分含めた人間の優先順位を第一に考える、極度に醒めている中学生。
その合理性は血が通わず歪だが、異世界の理不尽なクエストに於いては最善手を打つ有能な主人公なのか?
と思いきや、異世界で出会う人々や体験を通じて揺さぶられていく。
騎士カハベルさんとの仄かなラブコメと、時間の流れによる別れは印象的だった。
生きている、命が繋がれる実感を知った主人公の心境はあまり掘り下げられないが、考えるきっかけとして無駄ではない。
現実と非現実の境界が曖昧なシチュエーションから、徐々に嫌なリアリティーを主人公が知っていく流れが上手かった。
一見チープなゲーム的作風が、現実の価値観を問題提起していく、面白い。
またレベルアップ時の転職がランダムなのも、昨今の親ガチャ○○ガチャ的な、自分がコントロールできない運で優劣が決まる的な、現代っ子の諦念を感じる。
ただこの点は、主人公が前向きに活かしていくので、合理主義とは真逆で良い在り方ではある。
クエスト毎にストーリー設定されていて、ステップを踏んでキャラの成長やテーマを描いているのも見やすい。
カハベルさんをはじめゲストキャラが短い出番で見せ場を残した。
【悪い点】
作品コンセプト上想定内ではあるが、登場人物の精神性が歪で好感持てない。
主人公はもちろん、眼鏡っ娘とか、見事なまでに可愛くない。
パーティー間の交流ドラマが薄い。
主人公は合理主義に確固たる信念があるわけではなく、簡単に揺らぐため、キャラとしては未熟でカッコ悪い。
とはいえそういうコンセプトの作品だから仕方が無い。
低調な作画も含めてアニメ作品としてのクオリティーの低さ。
チープなB級アニメ感ハンパ無い。
弱いのに工夫するのは良いんだけど、痛快さは全く無い。
良い点と裏腹、クエスト制の進行方式もあってか、各エピソードのストーリーの掘り下げが浅い。
カハベルさんや溶岩に沈む島編など一部良エピソードもあるが、イマイチなエピソードの方が多い。
盛り上がるシーンが少なく地味。
【総合評価】4~5点
少しでも厨二病またはかつて厨二病要素があった者向けの問題提起作品。
作品としては粗だらけだけど、捨て難い持ち味あり嫌いになれない。
一見作風が異なるが「究極進化したフルダイブRPGが現実よりもクソゲーだったら」も似たタイプと見る。
ゲーム的疑似人生からの、捻くれ主人公がどう成長するか?
エンタメ作品として面白くはないが、刺さりうる鋭さを持っていた。
評価は良い付けづらいが決して悪くはない「普通」