たわし(爆豪) さんの感想・評価
3.9
物語 : 4.0
作画 : 4.5
声優 : 3.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
心地よい「破滅」
「進撃の巨人」や「王様ランキング」、そして「スパイファミリー」と話題の漫画のアニメ化を多く手がけてるWITSTADIO制作の初オリジナルアニメ映画作品です。
世界観は東京の中央に謎のバブル(泡)状の物体が突如現れたことにより、都市部の機能が低下し無人状態になった世界が舞台の「ハードSF」です。似たような作品にSF小説でJ・G・バラードの「沈んだ世界」「燃える世界」そして本作が一番元ネタにしているだろう「結晶世界(The Crystal World)」があります。これらのJ・G・バラードのSF作品に共通して言えることは、人間社会が突如の「相転移」をすることによって緩やかに文明が「破滅」していくというデストピア小説の先駆け的な作品であり、映画でも旧ソ連の映画監督アンドレイ・タルコフスキーの「ストーカー」(1979年)や、近年だとハリウッド映画監督のアレックス・ガーランドの「アナイアレイション -全滅領域-」があります。
実はJ・G・バラード(ジェームズ・グレアム・バラード)以降こういう題材の小説や映画はよく作られており、あのポストモダンホラー小説家であるスティーブンキングも「Under the Domeアンダーザドーム(2009年)」という小説で書いているくらいメジャーな内容ですが、今回のこの「バブル」では主人公とヒロインとのボーイミーツガールが主軸で動いているので、そこまでディストピアな感覚はありません。
個人的に多くのSF作品を観てきた中ではそこそこ出来がいいので、SFアニメが少ない日本の状況から考えると、非常に良く出来たSF入門的な作品だと思いました。作画もなかなか綺麗でした。
しかし、今敏の「パプリカ」や押井守の「攻殻機動隊」、その他巨匠のアニメ作品に比べると脚本や演出においてもやや見劣りしてしまう気がします。
追記:脚本に虚淵玄って書いてありました。wどうりで往年のSFっぽいわけですね。