エイ8 さんの感想・評価
3.6
物語 : 3.5
作画 : 3.5
声優 : 3.5
音楽 : 3.5
キャラ : 4.0
状態:観終わった
かべのぼる!
『いわかける! - Sport Climbing Girls -』(いわかける スポーツ クライミング ガールズ)のタイトルで、2020年10月4日から12月20日まで朝日放送テレビ(ABCテレビ)・テレビ朝日系列が新設する深夜アニメ枠『ANiMAZiNG!!!』の第1弾作品として放送された(wikipedia)
タイトルからは何となく岩に足をかけていく話のように見えるし実際岩にも登ったりするんですが実質は副題にもあるようにスポーツクライミングのお話。
主人公である笠原好(かさはら このみ)の通う花宮女子高校には彼女が入学するまで部員が二人しかいなかったにもかかわらずたいへん立派なクライミング設備がある……んですが、正直最初は「そんな学校あらへんやろ」って思ってました。部員二人なのに充実した設備がある、という事に対してではなくスポーツクライミング「部」があるということそのものに対してです。
アニメでは現実じゃありえない部活も普通にあったりするのでこの作品においても本来大人たちがやるスポーツの宣伝広告という意味でJK達にやらせてんだろーなーと思いつつも一応調べてみたら……あるんですねえ実際!結構ビックリしました。こんなの初期投資もさることながら極めて繊細なメンテと維持費がかかりそうなものだから学校としても難色を示すものとばかり。落ちたら直接命にかかわるわけですし他の部活みたいに「おい一年!ちゃんとチェックしとけよ!」って感じで丸投げするわけにもいかんでしょうに。それにこんな魅力的な「遊び場」があればちょろちょろと部外者も近寄ってきそうですが(実際本作でも好がちょろちょろ近寄ってきたのがファーストコンタクト)案外ちゃんと成立するもんなんですね。
一応本作視聴後にちょろっと確認してはみたんですが、ハッキリ言ってまだクライミングとボルダリングの違いとかもよくわかってません。wikipediaで軽く調べてみてもアルパイン・クライミング、ロッククライミング、フリークライミング、ボルダリング……等々、それらも独立した概念であるというよりは結構複合的みたいで、例えばアルパイン・クライミングの中にロッククライミングが内包されているかと思えばそのロッククライミングの中にアルパイン・クライミングやエイドクライミング(人工登攀)が含まれていたりと素人には荷が重い分類です。尚そのエイドクライミングの中にフリークライミングが含まれており、そのフリークライミングとは何かと言えば「元来そこにある自然の造形(岩の出っ張りやポケット)などだけを利用して登る」らしく、その中に最低限の道具(シューズとチョーク)で岩や人工の壁面などを登るスポーツがボルダリングらしいです笑……おっと、こいつは失敬。ついうっかりわろてまいましたが実際本音のところ部外者には難解で「わけわからんw」というのが正直なところです。ここまで読んで下さった皆さんも途中斜め読みになってたものと推測します。わかりますわかります、かくいう書いてる私自身気を抜くと飛ばし読みしてしまいなかなか思うように添削できませんし。
ちなみにボルダリング (bouldering)とは「岩の塊」「大きい岩」を意味する英語が語源とのことですので、タイトルの「いわかける!」自体はここから来てるのかもしれません。原作では副題も一章が「 -Climbing Girls-」二章が 「-Try a new climbing-」とのことで本来必ずしも「Sport Climbing」に限った構想をしていたわけではないことが窺い知れます。
原作自体は未読なので何とも言えないのですが、アニメ自体は先述した通り岩も一応登ったりするものの原則スポーツクライミングのお話みたいです。じゃあそのスポーツクライミングとは何かと言えば「基本的に、人工壁を使い、かっちりとしたルールのもとで参加者同士が技の優劣やタイムを競いあう競技」とのことだそう。一応、たまに見かける壁に突起がついたのを登る設備で一人練習するのもスポーツクライミングと言うそうです。(まあそりゃそうか)
で、話は戻ってこの主人公の好ちゃん。中学時代はゲーマーで運動一つやってこなかったにもかかわらず学校に設置されたクソ高い壁をいきなり登り切って翌日大会にまで出場、決勝進出は逃すものの大健闘を果たします。なんと彼女、中学時代にパズルゲームで全国1位を果たしており、それに応じるかのようにオブザベーションと呼ばれる登頂への最適解を模索する能力が初めからカンストレベルというチート所持者だったのです。彼女はクライミングをパズルを解くかのようにして登っていくわけなのですが、いやいやいくら頭で出来ても身体はついてこないだろと思ったそこのあなた、ご心配には及びません。確かに序盤は体力不足等でそのことが顕著に足を引っ張りますが、3歳の頃から習っていたバレエでは全国有数のバレエスクール「Zバレエ大石校」所属にしてプリマドンナだったという実績がうなりをあげるかのようにほんのわずかな短期間でトップクラス顔負けのフィジカルエリートっぷりを発揮することになります。
むしろそんな彼女が何故ゲーマーになったのかという事の方が気になる気もしますが、そんなこんなで圧倒的なまでの天賦の才を見せつけまくった結果、幼少の頃から全てを犠牲にしながらクライミング一本に打ち込んできた同級生で同じ部員仲間の上原隼(うえはら じゅん)のプライドをコテンパンに打ち砕いてしまいます。そのせいもあり隼は自らのクライミングを見つめなおすという名目でその後約半年もの長きの間休部すると共に友人の好をシカトし続けることになるのですが……言うまでもなくやり過ぎですよね。好たちが度を越したお人よし集団のため問題にはなりませんでしたが、普通はそんな身勝手なことして復縁しようなどと虫が良すぎる話だと思います。部も普通は退部でしょう。彼女はもともとストイックをこじらせすぎてそれまで友人が一人もいなかったわけですが、さもありなんです。
もっともこの辺は単純に作者が「部活」というものをただの属性としてでしか使ってないことからきた流れだとは思います。漫画アニメ等には「部活」や「学園生活」と銘打ってるだけで実情は大人の世界ということはよくありますが、この作品も完全にその範疇にあります。部活であるというならば特に「顧問」がいないという状況は見過ごせません。こんな危ない練習をしていながら責任者がいないなんて普通では考えられないんじゃないでしょうか。これは好たちのいる花宮女子高校だけでなく出場する全学校でそのようなのです。しかも大会ではDJが音楽を流している始末wいや、実情を知らないから本当に流している可能性もゼロではないですが……多分無いですよね?ようするに作者は大人のクライミング大会の中に部活っぽい文脈を落とし込んでるだけなんだと思います。百歩譲って解説者の存在は読者/視聴者にクライミングのことを説明するために必要という理屈はわからなくないですが、まあほとんど部活の大会という感じはしなかったです。でも実際のところどうなんでしょうかねえ?
ただ間違いなく「しゅるしゅる」言う蜘蛛女が白いウサ耳のようなものを付けて出場することは認められないと思います。これほどキャラが渋滞しているのは彼女、岩峰一愛(いわみね ちなり)ぐらいなものですが、本作では他にもやたらと誇張された属性を持つキャラが多数登場します。
いい歳こいて「にゃーにゃー」言う内村茜(うちむら あかね)、むしろいい歳になってきたせいで若手からの突き上げに恐れをなしたか「くるくるすー」とキャラ付けに必死な〝the 腹黒〟来栖アンネ(くるす アンネ)、そして極めつけは歳以前の話で女だてらに語尾が「やんす」の佐藤丸乃(さとう まるの)……いやあまさかこんなところでやんすっ娘に出会えるとは思ってもいませんでやんした。他の作品にこんなキャラいたでやんすかね?ちょっと思い出せないでやんす。
他にもそれなりに魅力的なキャラは登場するのですが、お世辞にも作品の構成が上手く行ってるとは思えませんでした。というのも序盤では先述した岩峰一愛がボスキャラのような立ち位置で現れるのですが、これといったイベントも消化することなく後半はその座を来栖アンネに奪われてしまいます。本作における高校女子界においては岩峰を含め『クライミング三姫』と呼ばれる三人がトップクラスの実力を持っているのですが、その中でも特別焦点を当ててもらえたのは藤田真澄(ふじた ますみ)くらいなものであり、同じ三姫であり花宮女子高校の先輩でもある四葉幸与(よつば さよ)に至っては最後の大会に出場すらさせてもらえないという有様。彼女に関してはそれに関する伏線自体はあったのですが、そもそも何でそんなことしようと思ったのか理解に苦しみます。最初はもっと長い連載を見据えた構想をしていたからだとも思ったのですが、クライミング部って二年で引退なんですか?だとすると初めから最後の大会は出場させないつもりということになりそうです。ひょっとしたら三人の合計得点を競い合う形を取りたかったからかもしれませんが、元々ぐちゃぐちゃな内容でやってるんだからそんな細かいとこ気にせず四人にしても良かったと思うんですがねえ。
自分が知らないだけだからかもしれませんが、何となくクライミング自体の知識はそれなりに入ってくる作品である気はします。もっとも経験者からすれば鵜呑みにしちゃ駄目だと言いたくなるところは多々あるでしょうが、少なくとも用語解説自体はそれなりに信頼して良いんじゃないでしょうか。ただそれはあくまで用語のことだけであって、スポーツクライミングそのものの取材はあんまりやってない感は伝わってきます。勿論これは漫画/アニメなのである程度見栄えを重視したということもあるでしょうが、それにしては色々お粗末な面も目につきました。
以降少々コアな筋トレ談義のため隠します。
{netabare}
花宮女子の先輩方は初心者の好に自重トレとしてはかなりハードな「片足スクワット」や「ハンギングレッグレイズ」をいきなり課したりするんですが、まあ普通はそんなことさせません。作中で出る片足スクワットは通称ピストルスクワットと呼ばれるものなのですが、基本的には段階を踏んでようやく取り組んでいくものであっていきなり挑戦させるものではないです。またあのようなスピードでこなすことは逆に反動を使うことにつながるため効率的ではない上に膝への負担がハンパなく故障に繋がりかねません、みなさんは真似しないように。
またクライミング業界の慣習ということもあるので何ともいえないところではあるのですが、通常はスクワット時に鍛える方とは逆の脚はあのようにぷらんとさせるのではなく可能な限りピンと真っすぐ伸ばすことが推奨されると思います。あのようにぷらんとさせた状態はピンと伸ばせないからそうしてるだけのことが多いので、おそらく練習風景の取材対象はそれほど上級者ではないのだろうな、という気はしてます。あれは筋力というより柔軟性の方がモノ言う筈ですし、少なくとも作中登場する彼女達の身体能力ならちゃんと伸ばせるんじゃないかな、と。ただ、特にロッククライミングなんかはある意味究極のキャリステニクス(古代ギリシャ語「美(kallos)」と「力(sthenos)」が語源の、ようするに自重で行うトレーニング、技術全般のこと)なわけですし、あのレベルのことをこなせるようになるにはこれぐらいの自重トレは楽勝でできるようにならなきゃ話にならんだろうなとも思います。
漫画としてはあのシーンは一コマか二コマぐらいで済ませてるだろうと思うのですが、アニメスタッフとしても大して調べもせず描いたんだろうなあと見てます。というのもあのスクワットはフルではなくハーフ(ウェイト業界ではあれをパラレルというそうですが……)なんですよね。ああいうのがないわけではないですが、通常やるなら完全にしゃがみ込みます。そこまで屈めない人がクオーター付近でぷるぷるすることはありますが、ハーフ(パラレル)を目的にやるのは一昔前に日本でも知られることになったプリズナートレーニング(通称:監獄トレ、原題:Convict Conditioning)を真面目にやってる人ぐらいな気がします。
なので多分あれはアニメスタッフがライト層向けの筋トレ雑誌なり映像を見て描いたものと推測します。そういうのは大体両足ハーフ付近で終わらせますから、スクワットで降ろすのはそれぐらいと考え片足でもそうしたんじゃないかと。或いは前述したようにぷらんと垂らした側の脚をどう描写して良いかわからなかったために床に接さないところまでしか腰を落とせなかった、かのどちらかだと思います。(場合によってはアニメスタッフの近くにウェイト畑の人がいて「スクワットはパラレルまで!それ以上は膝痛める!」とか主張した可能性も。ウェイトは原則両足でやるので片足のことなど想定自体してないでしょうし。そもそもウェイト派はピストル自体を膝壊すと言って敬遠する人もいるみたいですから。)
{/netabare}
ぶっちゃけガチのピストルスクワットを継続してやったら結構尻と脚がでかくなります。彼女たちが余裕ぶっこいてミニスカ履いてられるのも、実際のところちゃんと鍛えられてないから、という可能性もありますね。
とはいえハンギングレッグレイズの描写を見ている限り取材自体は多分何かしらの専門的な施設でしているだろうなとは感じました。あんなボールを挟んでツイストするなんて普通ないと思います。
余談ですが、あのように脇腹を鍛えたら痩せてスリムになると思ってる方、残念。あのように脇腹を鍛えると順当に胴が太くなります。何故なら筋肉がつくからです。脇腹を鍛えると脇腹の脂肪がいなくなってくれると思われるかもしれませんがそんなことないです。体質にもよるでしょうが、多くの脂肪は食事の切れ目が縁の切れ目と言わんばかりにカロリーを奪うと去っていきますが、あいつだけは最後の最後までズッ友でいてくれるんです。ありがたい話ですよね、ええ本当に。
そういえば杉浦野々華(すぎうら ののか)が好に向かって「ぽっちゃり」などとぬかしてけつかりましたが、「それでぽっちゃり?ハァッ!?」と憤った方も多かったのでは?彼女、どう見たって1000人に1人いるかいないかのウルトラプロポーションですよね。あんなのを掴まえて「ぽっちゃり」などと……ぽっちゃり派の方はもっと怒っていい案件だと思います!
「全然肉が足りとらん!出直してこい!」と声を大にして言ってやろうではありませんか!ヽ(`Д´)ノ